――撮影が再開し、放送日もついに迎えられましたが、今のお気持ちを教えてください。

綾野:世の中全体が大変な時期で今もまだ気を緩められないのですが、その中でも撮影の再開が出来たということ、そしてこれまで撮影してきたものを皆さまにきちんとお届けすることが出来るということにとても感謝しています。今までとは違う少人数体制ではありますが、みんな対策をしっかりとしながら最高のパフォーマンスができるようにと意識がすごく高まっていて現場の熱量もすごいので、それを皆さまにお届けしたいという思いでいっぱいです。

星野:放送前ながらすでに完成した1話2話を観ることができたのですが、落ち着いて客観的に観ることができていかにこの作品が今までにない刑事ドラマになっているのか、そしてすごく面白いのかというのを改めて感じることができました。話が進むにつれて、僕たちが過ごしている日常生活の中での問題や、「今この話をしなきゃいけないよね」という問題だったり、そういうものに切り込んでいくようなドラマでもあるので、楽しみながらも自分たちの生活や社会について考えるきっかけになればいいなと思います。
そして、とにかく皆さまに届けたいと思い続けた3か月だったので、こうやってまた集まれて距離を取りつつも撮影が再開できたこと、そして放送できることが本当にうれしいです。

――撮影が止まっている間は、共演者やスタッフの皆さまとは何か話をされたのでしょうか?

綾野:「必ず再開するんだ」という気持ちを1日たりとも忘れたことはなかったですし、源ちゃんとも連絡を取らせてもらっていて、お互い新しい台本をいただいてから「読んだ?」「すごいことになっているね」という話をしたりしてました。1話、2話の出来上がったものを観て、「これは自信を持って出していきたいね」というようなことも。俳優部だけでなく、制作の皆さんとも連絡を取り合いながら「こういうことを気を付けたほうがいい」というようなコロナに対する対策の情報管理というのもしてきました。間違った情報に惑わされないようにいろんなことを話し合いながらしっかりと自粛期間中にできることを話し合いました。

家にずっといて体力を消耗していく中で、それでもちゃんと体力を身につけていくには精神が大事だと思っていたのですが、そういう意味ではすごく源ちゃんにもスタッフのみんなにも助けてもらったので、より熱量が高いのかなと思います。

星野:今色々と動き出してそっちに集中しているところだと思うんですけど、やっぱり3月末と4月頭のあの空気は絶望的なものだったと思うんですよね。その頃僕たちが一番大事にしていたのは「命が一番大切でこれ以上コロナを広げないぞ」ということ。「頑張ってこの時期を乗り越えて、再開できるようになったら全力で頑張ろうね」という励まし合いをスタッフキャストのみんなでしていました。

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――綾野さん、星野さんは2年半ぶりの共演ですが、久々の共演の印象は?

綾野:2年半ももう経っているんだなぁ・・・ということに驚いてます。

星野:そうだよね、あまりそういう感じしないもんね。

綾野:全然しないですし、命を扱う『コウノドリ』という作品で共に戦ってきた戦友であるという感覚が強いんですよね。役者だけじゃなく音楽だったりいろんなエンターテインメントに関わってインプットしてきたものを、今回のように新しいドラマにアウトプットできるという能動的な臨機応変さだったり本当に学ぶことが沢山あります。常に一緒に現場にいるんですが、話を重ねる毎に撮影が別々になったりして一緒に居ない日も少しずつ増えてきたんですよね。そうすると「どんな表情してるのかな、今日の源ちゃんは」とか「どんな芝居をして、このシーンどんな顔でやってるのか」とか気になっちゃいます。

星野:(笑)。

綾野:源ちゃんとは真摯に向き合いながら、成熟している部分と未熟な部分をお互いでパテのように埋め合う時もあれば、あえて未熟なところを見せてそっと寄り添いあったりと、源ちゃんは僕にとってこのドラマでは本当に必要不可欠な人だし、改めて感謝しています。

星野:2年半前の『コウノドリ』の時は僕はほとんど話さない役でしたし、今回は全然違うタイプの役なので、単純にガンガン会話ができるというのはすごく楽しいです。そしてここまで違うキャラクターを2人で演じているというのは観てくださる方もきっと楽しんでくださるんじゃないかなという予感があります。あと4機捜の面々が本当に個性がバラバラでみんな各方面にいき切ってるような人が集まっているので、とても面白いと思います。

――ご自身が演じる役について教えてください。

綾野:僕が演じる伊吹は、とにかくいつも機嫌が良い人ですね(笑)。あと切り替えが早いです。僕の方が熱く見えるけど志摩の方が熱いんですよ。伊吹は全然何かを引きずらないし、ネチネチしていない、悩まない。起こってしまったことは仕方ない、次へ行こうっていうメリハリが効いてる人です。伊吹はとても魅力的だし、物語を引っ張る力を持っているキャラクターなのは間違いないです。そういった部分の期待に応えながら、プレッシャーを自分で与えていきながら、肩ひじ張らずに脚本に書かれていることを責任持ってやり切っていきたいと思います。

星野:志摩はものすごく推理力と思考力が高くて、周りからも刑事に向いていると評価されているすごく優秀な男です。元々は捜査一課に居たんですけど色々あって4機捜に来ることになるところから話が始まります。彼はぱっと見ダラッとしているし言葉遣いも荒かったり、熱血という感じもない・・・と見せかけておきながら、捜査になるとものすごく熱くなったり推理力を発揮したり、能力の高い役だなと演じていて思います。

その中で憂いを背負っているようなところがあって「なぜ彼はこんなに悲しそうな顔をするんだろうか」と最初の方は感じる方もいらっしゃるかと思うのですが、その理由も話が進んでいく中で明らかになっていきます。なぜそういう人間になったのかというのも含めて演じていてすごく楽しいです。話を重ねていく毎に志摩の中でもいろんなことが表に出ていくし、それを出していくのは伊吹だったりするのでそういう所を観ていただければと思います。

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――1話の予告にもあるカーアクションがすごく迫力あって見応えたっぷり。撮影してみていかがですか?

綾野:まず、撮影させていただいた街の方や自治体の方に感謝してます。正直、台本を読んでいてあそこまでのことになるとは源ちゃんも俺も思ってなくて、重力に立ち向かっている車の能力というか・・・CGじゃどうにも出ないあの感じを実物大に描いているのはすごいと思います。カーアクションの方々からご指導いただきながらやっているんですけど、しびれますね。 特にドリフトのシーンはテンションがすごく上がります。源ちゃんはどうですか?

星野:日本のテレビドラマではここまで激しいのは随分観てないな・・・・・・と思いました。台本を読んでどこまでやるんだと思っていたんですが、ここまでやるんだって本当に驚きました。安全なように工夫をしてやりながら、「今までにない、でもここでなら観られるぞ!」という情熱みたいなものを感じます。企業秘密レベルですごく面白い撮り方をしてるんです。

綾野:そうそうそう!

星野:撮影の仕方も多分今までに誰もやったことないやり方で撮っているので、今までにない映像になっていると思います。

――本作は1話完結ながら、もう一本繋がっているストーリーもありますよね。そちらはどのような話なんでしょうか?

綾野:まず1話完結の物語と、もう一つのストーリーが実は裏軸でずっと走ってるんです。1話完結のゲストさんと、もう一つのストーリーのレギュラーゲストのような方・・・相当驚く方々が出てきます。もしかしたら事前予告しない・・・。

星野:しない人もいるよね。多分一番驚く人はしないはず(笑)

綾野:相当びっくりすると思います。「え、マジで?この人出るの」って。僕たちからしてもすごく光栄なことです。塚原あゆ子監督がこれまでに残してきた功績や野木さんの脚本への信頼があって役者が集まっていると思うのですが、この作品を選んで入ってくださった事に感謝しています。役者に限らず役者じゃないタイプの人も出てきたり、相当驚くと思います。

星野: 4機捜のメンバーは元々別の場所にいてそれから4機捜に集結することになるんですけど、なぜそうなったのかというバックボーンがこのドラマの根底に流れるストーリーに繋がっています。犯罪が起こる前に抑えられるかもしれない唯一の存在が機捜で、それでも犯罪が起きてしまった時にその人をどう社会が迎えるのか、日本で生きていく上ですごく大事に真剣に考えなきゃいけない人権の話などが描かれています。今考えなきゃいけないことの問題提起もありますし、全話を通してそういうものが少しずつ視聴者の方の体に沁み込んでいくんじゃないでしょうか。もちろんただただ楽しんで観ることが出来るのですが、その楽しい中でふと我に返った時に「大事なことを言われた気がする・・・」と思えるような話になっています。続けて観ていただくと、より役の成長や過去や分かっていくのですごく深く楽しめると思います。

――1話、2話と完成したものを観られたとのことですが、改めて感じる野木さん脚本の魅力は何だと思いますか?

綾野:脚本が面白いのは当然なのですが、脚本より映像化した方が面白くなるように作られているのかなと感じます。映像化したことで完結する脚本だということが前提になっていると思うんですよね。それは野木さんの心理が働いているのか、ナチュラルにその状態でそうなっているのか・・・どちらもあると思うんですけど。「あとは現場に任せたよ」という感じで任せていただくのですが、現場的にも野木さんの面白い本を面白くできないなんて僕たちからすると本末転倒なので、この本をより良くするんだという質量、熱量が同居してるように感じます。

野木さんの脚本は「もうないでしょ、この後」と思ってからそのあとが3個も4個も出てくるので僕たち演者としても心が揺さぶられます。今回はカット割りが普通のドラマより倍くらい多かったり、ダブルトークでセリフが被っても話していたり、空間をどう"リアル"にしていくかを意識して作り上げられています。そのためにいろんなアイデアが反映されているのですが、現場にアイデアを生み出させる台本だと思います。

星野:僕は野木さんの作品3作目なんですけど、野木さんは脚本家として、物語を紡ぐ人としての姿勢みたいなものが素敵だと思います。僕は他にこんな風にちゃんといろんなことに対して責任を取って、そして伝えたいことがある・・・この業界で自分がその人の事を好きかどうか見る時のポイントが表現への姿勢というところなんですが、野木さんは根底に何か伝えたいことがあったりすごく深いメッセージがいつも込められている脚本を書かれていると思うんです。

特に『アンナチュラル』や『MIU404』はオリジナル作品ということもあって、その色が濃い。1話2話3話と進んでいくたびにどんどん深くなっていくんです。それを伊吹と志摩、2人の面白いやり取りや毎話起こる事件、"アンサンブル"の中で伝えていこうとしていて、そこにちゃんと責任を持たれているなと感じます。「あとはよろしく!」と仰ってくださっていますけど、野木さんがノッて書いているというのが脚本の中に刻み込まれていて読んでいるだけでワクワクドキドキします。

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――主題歌は米津玄師さんの「感電」。聴いてみていかがでしょうか?

綾野:伊吹と志摩が動いてることをここまで想像してくれる主題歌は他には存在しません。1話と2話の台本を読んだって連絡をくれたんですけど、「めちゃくちゃ面白かった!」「最高の曲を頑張って書くよ」と言ってくれたんですよね。伊吹と志摩が動いているようにしか感じられない。歌詞もそうだし、キャッチ―な部分と深刻な部分がアンサンブルされていて映像の中で流れて完成してる・・・しびれますよね。しょっちゅう聴いています。米津玄師という音楽家の傑作だと思っています。変な話、それだけを楽しみにして観てもらっても良いのかなと。この曲が流れる頃にはドラマの良さも伝わっていると思いますし。この曲をとても大事に自分たちの胸に秘めながら『MIU404』という世界を生きていこうという決意を持って撮影に臨んでいます。

星野:撮影中に仮ミックスの状態を聞かせてもらった時に、歌詞を含めて『MIU404』の世界観と言うものに触発されてドラマで掛かるようにというのをすごく意識して作られた曲だなと思いました。主演の2人、そして物語と言うものを含めた歌詞や音の世界観が描かれていました。僕はドラマの世界観で響いたときに物語が広がるようなものになるようにしたいなと思って主題歌などを作る時にはそれを意識して作っているのですが、米津君もそうだなと感じて、提供される側としてすごくうれしかったし、音楽家としてもうれしかったです。物語の中で掛かるタイミングなど塚原監督がすごく考えて入れているので、ぜひ体験していただきたいです。

――最後にメッセージをお願いします。

綾野:みんな待たせてごめんね、待っててくれてありがとう、愛ですね。

星野:本当に楽しんで僕らは作っていて、コメディのような要素もあるしものすごくシリアスな社会問題も含んでいるし、いろんな要素が混ざっていてこの二人のバディの面白さが出来上がっていると思います。「こんな物語の運び方があるのか」と驚くようなアイデアが毎回毎回詰め込まれているドラマだと思うので、第1話から最低でも3話まで・・・1話を観て面白いと思ってもらえる自信はもちろんありますが、3話まで観たらもっと深まると思うので、ぜひ観ていただきたいです。

◆番組情報
『MIU404』
2020年6月26日(金)スタート 毎週金曜22:00からTBS系で放送
(C)TBS