4人の男子高生による恋と友情の青春ムービー

本作の特徴は、男子目線による恋愛映画であること。2010年代以降、少女漫画を原作とした、いわゆる"キラキラ映画"が数多くつくられたが、その多くが女子目線。男子が主人公の恋愛映画は貴重だ。しかも、4人の男の子たちが主人公。ブルーハワイのような青空の下、バカやってはしゃいだり、時には喧嘩したりしながら、一生に一度の高校時代を駆け抜ける4人の男の子たちの眩しさが、本作に爽快な余韻をもたらしている。

本作最大の魅力は、そんな4人の男子高生たち。そこで、ここでは4人の男の子たちの魅力を軸に作品を紹介したい。

中川大志のチャラさと男らしさのギャップに胸キュン!

まず物語の牽引力となっているのが、まっつん役の中川大志だ。まっつんはスマホのアドレス帳に数え切れないほどの女子の連絡先が登録されている、いわゆるモテ男。本人も自分がモテることをよく自覚していて、何かと調子がいい。4人の中でも最もノリが良く、男子4人の息の合った掛け合いに、中川大志の演じるまっつんがドライブ感をくわえている。

つよぽん(高杉真宙)とゆきりん(堀田真由)に勉強を教えてもらおうと鼻の穴を膨らませるような顔で土下座をしたり、無事に補習をクリアして「田渕先生〜!」と感極まるように連呼したり。持ち前のコメディセンスを発揮。4人のメインキャストの中で最年少ながら、中川の表情豊かな演技が光っている。

それでいて、モテ男らしいカッコよさも存分に炸裂。制服のボタンをひとりだけ大きく外して胸元を覗かせているところなんて、「こんなセクシーな男子高生がいるなら今すぐもう1回高校に入り直すわ!」という色っぽさ。夏祭りであえて浴衣を着てこないあたりも、モテ男の余裕が感じられる。

そんなチャラいまっつんが、男嫌いの毒舌家・まり(恒松祐里)のことを本気で好きになっていくさまは、胸キュンラブストーリーの王道展開。クリスマスパーティーを飛び出したまりとの歩道橋のシーンは、中川大志の持つ"雄み"が全開。反対側の道路からまりに呼びかけるその荒々しい表情と声は、普段のチャラいまっつんとは別人。さらに、教室でクラスメイトに激突され気を失ったまりをお姫様抱っこで保健室まで運ぶシーンも、長身の中川大志だから映えるカッコよさ。いつも調子のいいことばかり言っているけど、好きな女の子のためなら男らしく真剣になるまっつんのギャップを、中川大志が熱くストレートに演じてみせた。

高杉真宙の抑揚を抑えた低い声と柔らかな眼差しに胸キュン!

次に、コスプレが趣味のオタク男子・つよぽんを演じたのが、高杉真宙だ。高杉真宙の端正の整った容姿からにじむちょっと浮世離れした空気が、このつよぽんのオタク感とちょうどいいバランスでミックス。残り3人がいわゆるおバカキャラであるのに対し、つよぽんは成績優秀で生活態度も真面目。ひとり彼女持ちであるところにも、精神的な成熟度の違いが出ている。そんなつよぽんの佇まいにリアリティを生んだのは、高杉真宙の抑揚を抑えた低い声と柔らかな眼差しがあってこそだろう。

本作でつよぽんが背負っている役割は、将来への葛藤だ。東京の大学へ進学したいと思いながらも、地元に残る恋人のゆきりんと離れ離れになってしまうことが辛くて、なかなか決断できないつよぽん。ふたりが進路について話し合う場面は、本作の中でも特に繊細な心の揺れ動きが味わえるワンシーン。本音を隠すようにコスプレの仮面をかぶって、つよぽんの夢を応援するゆきりんと、そんなゆきりんを背後から強く抱きしめるつよぽん。ふたりが言葉にしなかった気持ちが溢れ出ていて、かつて同じように進路に迷った10代の頃の胸のざわめきを自然と思い出した。

そして、そんな答えの出ない堂々巡りを突き破るようにプールに飛び込むシーンが、つよぽんのハイライト。普段から活発な3人は足から入水しているのに、こういうノリが不得手なつよぽんは背中とお尻を叩きつけられるようにダイブする。この不格好さがつよぽんのキャラクターをよく表していて、隠れた名演技のひとつ。「キャラ違いすぎだろ、つよぽん」とツッコまれ、「勝手にキャラ決めないでください」と不貞腐れたように返すつよぽんに、「めっちゃ可愛い...!」と悶えたくなる。

横浜流星の余白を膨らませた演技に胸キュン!

中川大志が動の演技で活気を与えているのに対し、静の演技で場を引き締めているのが、恵ちゃん役の横浜流星だ。この恵ちゃん、普段から相当モテるけど、まだ本当の恋を知らないという役どころ。まっつんと同じモテ男ではあるけれど、女子とゼロ距離のまっつんに対し、恵ちゃんはふわふわとした空気をまとっていて、淡白。でものその掴めなさが、余計に女子の心をくすぐっているように見える。

ただ、演技面で非常に難しいところが、他の3人に比べて恵ちゃんは役の背景描写がやや少ない。後半まで恋愛面に関わってくるところがなく、まっつんほど前に出る性格でもないので、ともすると地味な印象になりがちだ。けれど、その余白を逆手にとって、ある意味、かの有名な『花より男子』の花沢類的な、吸引力のあるキャラクターに膨らませているのが、横浜流星のうまいところ。

別れた恋人が結婚するなど、年上の女性との恋愛経験も豊富な恵ちゃん。でもその恋も自分を本気にはさせてくれなかった。自分がまだ何者であるかさえわからないのに、周りの女子たちは見た目だけでそんな自分にのぼせ上がっている。そんな見せかけだけの感情を恵ちゃんはバカらしく思っているし、イライラもしている。おバカキャラのひとりではあるけれど、一歩引いた立ち位置から周りを見る余裕のある恵ちゃんは何かと損することも多いようだ。これだけの情報量をしっかりと観る人に伝え、余白を自由に想像させる隙もうまくつくれているのは、横浜流星という俳優が的確に役を掴む力があるからだろう。

本作で恵ちゃんが背負っている役割は、友情だ。本当の恋を探している最中の恵ちゃんにとって、今のところいちばん大切なものは3人の仲間たち。あっさりしているように見えて、いちばん友達想いなのは、恵ちゃんなのかもしれない。また、モテ男ツートップであるまっつんとのコンビネーションも微笑ましく、机の横を通り過ぎるまっつんにちょっかいをかけたり、仲直りして抱き合ったり、ちょっとしたやりとりからふたりの仲の良さが窺えるのも、イケメン好きの女子たちにはテンションの上がるポイントだ。

佐野玲於の真っ赤に染まった耳たぶに胸キュン!

最後に、作品の大きな柱となっているのが、なっちゃん役の佐野玲於だ。なっちゃんが違うクラスの杏奈(吉川愛)に恋をしたところからこの物語は始まっていく。

本作における佐野玲於の良さは、普通っぽさだろう。なっちゃんは4人の中でもいちばんのヘタレ。彼女もいないし、女子から黄色い声をあげられるタイプでもない。好きな女の子に近づきたくて必死になって自転車を漕ぎ、だけどいざお近づきになったらなかなか次の一歩に踏み込めないところも、いかにも普通の男子高生。世の男子高生の最大公約数的なキャラクターであり、だからこそ観客にとってもいちばん共感がしやすい。そんななっちゃんを、日頃はGENERATIONS from EXILE TRIBEのメンバーとして数多の女性ファンを魅了している佐野が、そのスター性を完全に排除し、垢抜けない地方都市の男子高生として演じてくれたからこそ、より感情移入して観ることができた。

杏奈のLINEを手に入れたことを自慢するときのクルクル変わる変顔とリズミカルなマイムは、俳優としてのセンス十分。それでいて、杏奈が乗った電車を河原でひとり見つめる目にはやりきれない想いがにじんでいて、コメディだけでなくこういったナイーブな表現もできるポテンシャルを感じさせた。

さらに、クライマックスの杏奈とのシーンでは、細かい瞬きを何度も入れて、好きな女を目の前にしたときの男の子の動揺と興奮をコミカルかつリアルに再現した。真っ赤に染まった耳たぶが愛らしくて、ピュアななっちゃんに多くの人が自分の初恋を思い出したことだろう。

前髪をクリップでとめて補習に明け暮れたり、進路面談でカミナリを落とされて壁に向かって意気消沈したり、おバカ男子の可愛らしさを前面に押し出したコミカルな演出も満載。『虹色デイズ』というタイトル通り、色彩の濃い画づくりがポップさを引き立てていて、夏祭りやクリスマスのイルミネーション、そして文化祭などカラフルな場面の数々にドリーミングな気持ちが湧き上がってくる。魅力たっぷりの4人の男の子たちと一緒に、ぜひ虹色の日々へダイブしてほしい。

パラビでは"土曜日はキュン補給"と題し、虹色デイズをはじめとしたキュンキュン作品を特集中! ぜひご覧ください。

(文・横川良明)

(C)2018「虹色デイズ」製作委員会/(C)水野美波/集英社