――ドラマ化が決まった時のお気持ちを教えてください。

唐突に話が来たので「ほんまかいな!」と驚きました(笑)。
今まさに本を書いていてその課題に直面しているんですけど、『ネット興亡記』はさまざまな起業家の方に取材しているので物語を通しての主人公というものがいないんです。だからドラマ化といってもそこはどうするんだろうと思っていたんですが、「新聞記者を主人公にします」と言われて、その手があったか!と思いました。ドラマだとそういう軸の通し方があるのか、と新鮮な気持ちになりました。

――記者役を藤森慎吾さんが演じられていますがご印象は?

僕、家に帰ると寝る前に必ず動画を観るくらいお笑いが好きだったのもあり、お会いしてみたかったんです。あと、オリエンタルラジオさんは"武勇伝"で大ブレイクしてから全くスポットライトを当てられなくなった時もあって、"武勇伝"を捨てて自分たちの生き方を変えて新たな角度から挑戦してまたブレイクされたというのがすごく興味深くて。

「ネット興亡記」では他の人がやらない挑戦をどんどんやって、試練をどう乗り越えていくか、というところを伝えていきたいと思って書いてるんですが、藤森さんもきっとそういう経験をされているだろうなと思っていたので、主演を務めることになったのは願ったり叶ったりだなと思いました。

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(左・藤森慎吾/右・杉本貴司氏)

――藤森さんは「芸人と起業家は似ている」と仰っていたのですが、数々の起業家の方に取材してきた杉本さんから見ていかがでしょうか?

芸人の方が身近にいるわけではないので一概には言えないんですけど、多分似ている部分が多いのではないかなという印象です。でも起業家さんと違うなと思うのは、起業家さんはチームを作るじゃないですか、。いかにより優れたチームを作れるかが成功をするかどうかのポイントなんですけど、芸人さんはそれも全部セルフマネジメントしなきゃいけないんですよね。ネタ(=商品)も全部自分で作らないといけない。売れてきたら放送作家さんが付くのかもしれないですが、起業家よりもシビアな世界な一面もあるんじゃないかなと。ある意味ものすごい熾烈な競争の中にいらっしゃるし、起業家のようなマインドがないと生きていけないんだろうなと。

先日行われたトークセッションで藤森さんに「なんで"武勇伝"を封印したんですか?」とお伺いしたら「明石家さんまさんに『芸人は3か月に1回売れなあかんねん。オレはいつもそういう風に考えてる』って言われたことが胸に刺さってる」と仰っていて。3か月に1回、人の心を捕らえるような新しいものを出さなきゃいけない、というのはまさにスタートアップの考え方だなと思いました。常にアップデートしないと取り残される。さんまさんのような大御所の方がそう言うと説得力が増すというか、なるほどなと思います。

――これまでに連載で取材してきた中で印象に残っているエピソードは?

各回印象に残っているので数え上げればキリがないのですが・・・ドラマで反映されていないことで言うと、ライブドアで働いていた方々のその後の人生についてですね。殆どの方が"ライブドア事件"の不正会計には関係ないんですが、でもある日突然「お前たちがやっていることは虚構だ」と言われて・・・そこから奮起して立ち上がるお話はグッときました。その後、多くの方がLINEに関わって今のLINEを作ることになったんです。LINEはライブドアがなければできなかったと思うので全てが繋がってるんだなと。

あとやっぱりドラマの初回で取り上げた藤田晋さんの知られざる苦悩の時代も印象的ですね。当時は日立製作所やSONYのような大企業を取材したんですけど、インターネット産業が盛んになり始めている頃で、藤田さんや堀江貴文さんがメディアに"スター経営者"のように取り上げられていたんです。その裏には僕たちの知らない苦悩などがあると思い、それを自分で取材したいと思ったんです。本も書かれていたんですけど、絶対に本に書ききれなかったこともあったんだろうと思うので。

――ドラマ本編を観たご印象は?

インタビューカットは僕がインタビューしているので観ていてヒヤヒヤしますね(笑)。テレビの取材の仕方と僕がやってる取材って違うんです。テレビだと相槌を入れちゃいけないとか、相手が基本的に話し終わるまで問いかけられないとかあって・・・普段だと話してる途中に「その時どう思われましたか?」「その時どなたとお話したんですか?」とか細かいことを聞いていくんですけど、それが出来なかったのでもどかしさがありました。

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――新型コロナウイルスによって起業などにも影響が出ているかと思うのですが、今後どうなっていくと思われますか?

コロナによって伸びるサービス、厳しいサービスがあると思うんですけど、厳しいサービスの中ではよりシビアな選別が始まっているんじゃないかなと思います。背景は違いますが、2000年の時のインターネットバブルに近いと思うんです。先日ある起業家の方とお話して、今この時期にタイミングで「こういう会社を作りたい」「こういうサービスを作りたい」と思っている人がいたとしたら、今この時期に動けない奴→人はいつまでも動けない、どのタイミングでも成功しないという話題になったんです。先日のトークセッションで藤森さんも仰っていましたが、どの業界でも今は試される時期なのかなって。勝ち残っていく、評価される人はみんなが逆風吹いてると思っている時に何か動き出しているんですよね。
取材する立場としては、取材しがいのあるタイミングではあると思っています。

――ありがとうございます。最後に、視聴者の方へメッセージをお願いします。

シリーズ全編を通じて描きたかったことがいくつかあって、どんなに成功した人でも人に言えなかった葛藤や苦難があると思うんです。それを乗り越える際に、もしくは新しいことに挑戦するときに、完全に一人だけで考え抜いた方というのはあまりいなくて必ず誰かの影響を受けているんですよね。「ネット興亡記」で書いているのは、この人たちがこの時代に出会っていて、こういう交流があったということ。

例えば幕末の時代の歴史小説の読みどころのひとつとして、この志士とこの志士がこの時代に出会ってこんなことをしていたのか・・・ということがよくあると思うんですけど、でもそれは偶然じゃないんですよね。何か志を持って動き出した人だからこそ結びつくものがあって出会っている。それが現代でも起きているので、そういうところを逃さず書いていきたいと思って連載を続けてきました。ドラマを観て、共感するものを持っていただけたらうれしいです。

◆番組情報
『ネット興亡記』
動画配信サービス「Paravi(パラビ)」にて配信中。なお、毎週水曜夜0:58からテレビ東京でも放送中。
(C)Paravi