岡江さんは私にとって、常に暖かなお陽さまのような存在

――このドラマを企画したのは、どのような経緯ですか?

きっかけは、歌手の大橋純子さんです。大橋純子さんが「はなまるカフェ」に出演されたとき、2時間ドラマを見ることが大好きだというお話しをしてくださり、そのトークの流れで「『はなまるマーケット殺人事件』って2時間ドラマがあったら面白そう」と発言されたのが企画のきっかけになりました。

その場にいた私は、聞いた瞬間に「これだ!」と思いました。初めは、軽い冗談のような話でしたし、「無理じゃないか?」と危惧する声もありましたが、ドラマ化の熱意が通じて、関係者の理解と協力を得て実現に至った次第です。なかでも、『はなまるマーケット』の制作プロデューサーだった石川眞実さんのご理解が大きかったです。松本幸四郎さん(現・松本白鸚)に石川さん役をお願いしたのは、その感謝と敬意の念からでした。

――生活情報番組と正反対ともいえる殺人事件を扱おうと思ったのはどうしてですか?

2時間ドラマの「殺人事件」「温泉」「崖での告白」といった定番の要素を可能な限り取り入れたいと考えました。『はなまるマーケット』のテイストは、殺人事件の残忍なテイストとは真反対なので、どちらも両立するように殺人のシチュエーションには、頭を使いました。その時に薬丸さんから、「『名探偵コナン』を参考にしたら?」とアドバイスされたことを覚えています。

――この企画を岡江さんにお話した時の反応はどういったものでしたか?

面白がってくれました。そして、私がドラマ制作に愛着があることもご存じで「北川さんドラマやりたいんだよね」と言ってくださり、岡江さんの深い思いやりを感じました。
20年以上の公私に渡るお付き合いでしたが、岡江さんは私にとっていつも暖かなお陽さまのような存在でした。そう考えてみると、岡江さんが太陽で、薬丸さんが二酸化炭素、スタッフは葉緑素で、そしてその光合成で生まれたのが番組を見る方にとって必要不可欠な酸素である『はなまるマーケット』という番組だったのだと思えてきました。

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左が北川氏

――当時のはなまるマーケットの舞台裏とも思えるエピソードがいくつかありますが、キャスティングや取り上げた意図など教えて下さい。まずはキャスティングについてお願いします。

出演者に関しては、当時の『はなまるマーケット』のレギュラー皆さんに出ていただくことは、初めから予定していました。そして、松本幸四郎さん(現・松本白鸚)にプロデューサー役をお願いしたところ快く受けてくださいました。また、個人的にも親交のあった坂井真紀さん、深浦加奈子さんも快く引き受けてくださり、かなり豪華なキャスティングになったと思います。高橋克実さんも刑事役で出演されていますが、このドラマがきっかけで『はなまる』のキャスト、スタッフと仲良くなり、番組の芋煮会などのイベントにも参加、ついには薬丸さんが夏休みの時の代役を務めるなど『はなまるファミリー』の一員になりました。

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――『はなまる』ならではでいうと、斎藤哲也アナウンサーが"おめざ"をつまみ食いするシーンがありましたね。

斎藤アナウンサーにも、ドラマの中で重要な役を演じてもらっています。斎藤アナウンサーは、大学時代に東八郎劇団に参加していたことがあり、実はお芝居が上手なんです。斎藤アナがおめざをつまみ食いするエピソードは、当時、そのような噂がスタッフの間で囁かれていて、それをドラマに取り入れました。ただ、斎藤アナは当時から今に至るまで、その噂を否定しています・・・(笑)。

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――放送終了後によく銀行へ行っていたという薬丸さんのエピソードが劇中に反映されているとか。

斎藤アナと同じように、ドラマの冒頭で薬丸さんが銀行強盗の人質になるのは、薬丸さんの当時の趣味(?)、銀行に行くことが元になっています。(今も行かれているかは存じません)また、岡江さんが冷や汁のレシピを紹介しながら犯人を説得するのですが、これも放送後に、赤坂の宮崎料理のお店で冷や汁定食を岡江さん、薬丸さんたちと食べることが多かったからです。岡江さんを助けるために、薬丸さんが原付バイクで激走するシーン(ただし法定速度内)は、日頃のお二人の間にある信頼感や愛情を表現させていただきました。

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――エンディングでは、エキストラで実際のスタッフが参加されているんですね。

ドラマのエンディングは、松本幸四郎さん演じる石川プロデューサーが、キャストとスタッフみんなを労うシーンなので、実際のスタッフにも出演してもらいました。皆、記念になって喜んでくれたのではないでしょうか?

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――演出されて感じられた、女優 岡江久美子さんのエピソードはありますか?

『はなまるマーケット』での岡江さんは、主婦の代表というお立場で月〜金曜の生放送に出演されていました。その岡江さんが、岡江久美子本人を演じるというのは、難しかったと思います。そしてドラマの撮影は、生放送終了後から毎日夜まで、しかも冬だったのでロケは厳しい寒さの中で行われました。そんな状況でも岡江さんは常に明るく、前向きに現場に臨んでくださり、まさに女優魂を感じました。私の演出に対しても、その意図を汲んで常に想像を超える素晴らしい演技を見せてくださいました。

◆配信情報
『はなまるマーケット殺人事件』
動画配信サービス「Paravi(パラビ)」にて配信中
(C)TBS