今回のゲストは、北村匠海。しかし、これまでと趣向が異なり、北村匠海は本人役で、安達さんの私物じゃない。だから「捨ててよ」と言わないし、なんなら今回、最後までこの定番フレーズが出てこない。では、今回捨てるものは何なのか。

今回の安達さんは、冒頭からイライラしている。イライラの原因の一つは、「ストックの管理」を担当している夫が、キッチンペーパーが切れても補充していないことや、自分の髪型をどうしたら良いか相談してくること。失恋で金髪にしてきたマネージャーの「西村くん」もまた、無神経な質問で、安達さんをイラつかせる。

女優であり、妻であり、母である安達さんは、それらすべてでバランスがとれているようでいて、自分が常に不自由で、誰でも、誰のものでもないと感じている。その象徴が「髪」だ。
子どもの頃からずっと仕事をしてきた安達さんは、仕事に合わせて髪をミリ単位で切るよう求められることもあり、気分で変えることも、まして失恋でイメチェンすることもできないのだから。

そんな安達さんは、願望の表れなのか夢の中でおもいきり金髪になっていた。そしてそこにやってきたのは、娘・・・ではなく、10年前の自分だった。

安達祐実は子どもの頃から顔が変わっていないだけに、子どもにしか見えない娘役の子(新井美羽)が「10年前の安達祐実」と名乗るのはなかなかシュールだ。

娘の姿をしていることもあり当たり前のように意気投合した本人同士はキャピキャピ盛り上がった後、子どもにしか見えない安達祐実(新井)が10年後の自分に対して「今の私の仕事、何ですか?」「役名ありますか?」「ドラマの主演!? そっか~」と立て続けに質問し、安堵する。そして、「仕事がないんです・・・」とため息をつく。

「私、子役として大ブレイクしたじゃないですか。10代の頃はまだよかったんですよ。20代は本当に苦しくて」「年相応の役はなかなかもらえなくて、変にネームバリューばかりあるから、もしかしてオファーしづらい俳優なのかなって」

10年前の自分に聞かされる悩みは、初回の「"安達さんの代表作"と世間で言われている作品の完パケが焼かれたDVD」に匹敵するシビアさがある。しかし、そこで今の安達さんは、10年前の自分にこう言うのだ。

「私だって、いろいろ頑張って今の生活、手に入れたんだから」

ちなみに、安達さんはドラマ内で「思い出した! 髪、バッサリ切ったんだよね、30歳くらいのとき」と語っていたが、安達祐実の公式ブログを遡ると、実際、2012年8月に髪を唐突にショートにしていた。あの頃、も荒んでいたのかな、なんて憶測もしてしまう。

そして、冒頭だけだと思っていた北村匠海が、再登場。しかも、別人の10年前の役として、である。だが、この驚きはまだ序の口で、ラストにはさらに驚きの仕掛けがあった。「そう来たか!」と膝を打つ視聴者も多いだろう。悔しいくらいの壮大な伏線回収だった。

(文・田幸和歌子/イラスト・月野くみ)

【第10話あらすじ(6月19日[金])】

女性向けのライフスタイル雑誌の編集者から"毎号私物を一つ整理してほしい"という企画の依頼を受けた安達さん(安達祐実)。
バラエティ番組の出演のため、暴露する秘密を考える安達さん。すると夢の中で安達さんの秘密を知るという給与明細(じろう)が現れる。そしてその秘密が誰かに狙われているのだという。それは20代のころとあるアルバイトをしていた時のモノで、記憶の中「あんた、目が死んでんだよ」という言葉が頭をよぎり・・・。

◆番組情報
『捨ててよ、安達さん。』
毎週金曜深夜0時52分からテレビ東京で放送中。
動画配信サービス「Paravi(パラビ)」では、放送1週間前から先行配信中。