シーズンを進めるごとに人気が増し、シーズン4は放送局の最高視聴数を10年ぶりに塗り替え、昨年公開された最新のシーズン5も2019年英国内最高視聴数を獲得。動画配信サービス「Paravi(パラビ)」でシーズン1と2を配信中の今、「見ないともったいない!」その魅力をご紹介しよう。

若手刑事スティーブ・アーノットは誤射事件の隠蔽指示を拒否したため所属のテロ対策班を追われ、汚職特捜班に異動となる。通称AC―12と呼ばれるその班は、英国警察内部で不正に手を染める警察官を取り締まる部署。アーノットと同僚のケイト・フレミング、上司のテッド・ヘイスティングスの3人があらゆる手段を講じて汚職警官を追い詰めていくのだが、組織内部の不正の告発はすんなりとはいかない。協力が得にくいというだけでなく反感をかったり逆恨みもある。誰が敵で誰が味方なのかわからないという先の見えないスリリングな展開が続く――。

このドラマで注目すべきは、質の高いドラマ作りで知られる英BBCが製作しているということと、脚本を担うジェド・マーキュリオだ。マーキュリオは過去にもイギリスの国民健康保険制度のあり方に一石を投じる医療ドラマを製作。本作では警察の腐敗を鋭く糾弾、2018年の『ボディガードー守るべきものー』では政治家の陰謀を暴くなど、権力の腐敗に対する鋭い嗅覚を発揮する社会派プロデューサーなのだ。

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本作でメインキャストを務めるAC―12所属の3人、アーノット役マーティン・コムストン、フレミング役ヴィッキー・マクルア、ヘイスティングス警視役エイドリアン・ダンバーは、いわゆる花形と呼ばれるタイプの俳優たちではない。しかし、だからこそドラマにリアリティを生み出していると言える。主に映画界で活躍してきた英国俳優の迫真の演技がマーキュリオの綿密な脚本を支えている。

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そして調査対象者として出演する俳優陣の存在感には唸るものがあり、どんでん返しの嵐でシーズンを追うごとに面白さが加速していく。本作が「最上級の犯罪ドラマ」と言われる所以はここにあるのだろう。

シーズン1では『ウォーキング・デッド』のモーガン役でおなじみレニー・ジェームズが警部役で登場する。最優秀警察官として何度も表彰される、功績も人望もあるベテラン警部が思わぬ事から不正に手を染めてしまう。続くシーズン2は、何者かの待ち伏せにより証人誤送中の警察車両が銃撃されるという衝撃のシーンから幕を開ける。『ボディガードー守るべきものー』の内務大臣ジュリアを演じたキーリー・ホーズが今回の調査対象者リンジー・デントン警部に扮し、彼女はシーズン2だけでなくその後も事件の鍵を握る人物として出演する。こうしたベテラン勢の迫力ある演技は見ていてゾクゾクするほどだ。

本作にはハリウッドドラマによく見られる銃撃戦や派手なアクションなどの見せ場はあまりないが、地道な調査や駆け引き合戦が生み出す中毒性が魅力。そして重いテーマを扱うドラマだが、1シーズン5話から6話で完結するところも良い。ぎっちり内容の詰まった60分弱だが長丁場にならずに一旦事件を閉じてくれるのは緊張感が途切れずちょうど良い長さと言えるだろう。

ただ繰り返しになるが、シーズン1だけで終えずシーズン2も是非見て欲しい。シーズンが進むごとに、前のシーズンの伏線がどんどん回収されていく。それが、目が離せなくなるこのドラマの中毒性の秘密だから。

◆配信情報
『ライン・オブ・デューティ 汚職特捜班』
シーズン1、シーズン2の字幕版が動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で配信中

(C) Ed Miller World Productions