今、家で過ごす人が多くなり、インターネットでのさまざまな配信が増えた。いずれはネットが生活の主流になることが来るかもしれない、と思うことはあったが、その時代がこんなにもすぐにやってくると、誰が想像していただろうか。

インターネットが出てきたのは90年代。次々とあらわれたITの寵児らがいた。そのIT起業家達を追ったドラマ『ネット興亡記』の配信が、動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で4月29日より始まった。

いま求められているITは、いかにして私たちの生活になったのか

新聞記者・杉山(藤森慎吾)が高校生の時、数多くのIT企業がうまれていた。いったい、どんなふうにITはわたしたちの生活になくてはならないインフラとなったのか。経済記者の視点から取材し、IT企業の知られざる実話に迫っていく本作。

原作は、2018年から日経電子版で連載が始まった人気企画。日本経済新聞社の杉本貴司記者がIT起業家らを取材し、その興亡を記事にしていた。ドラマ版では、杉本をモデルとした杉山が語り部となり、放送ごとにある企業にスポットを当てていく。

見どころは、グラフや関係者インタビューによってわかりやすく伝えていくドキュメンタリー仕立てであることだ。あの時代の若きIT起業家達は、なにを考え、なにを感じ、なにを成し遂げようとしたのか・・・。彼らの歴史に経済面から焦点をあて、それを記者が追うという筋書きだ。

1話ごとに、ある企業が実際に直面した危機を数字やグラフで見せていく"リアル経済ドラマ"となっている。起業の知識がなくても理解でき、かつ、物語としても楽しめるのがうれしい。

ひとりの記者の視点で紐解かれる、リアル経済ドラマ

「Bit Valley(ビットバレー)──僕が高校生の時にそう呼ばれ、渋谷は熱狂と争乱のなかにあった」

第一話、その渋谷に降り立った杉山記者が追うのは、サイバーエージェントの藤田晋社長だ。藤田は2000年にサイバーエージェントを最年少上場させ、今もインターネットテレビ「ABEMA」などで世の中を席巻し続けている絵に描いたような成功者だ。しかし藤田にも、会社を手放さなければならないほど追いつめられた過去があった・・・。

視聴者は、杉山というひとりの記者になったつもりで歴史を紐解いていく。藤森はバラエティ番組などの明るい"チャラ男"イメージを抑え、相方の中田敦彦が絶賛する声と、俳優としても活躍する語りのうまさでドラマを引き立てる。

語られる藤田の過去は、お笑い芸人として若くして爆発的なヒットを経験し、その後鳴かず飛ばずの苦境の時代を経て、ふたたび人気と新しいポジションを築いてきた藤森の姿とも重なるようだ。

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サイバーエージェント最大の危機を、社長本人インタビューもまじえドラマ化

藤田になにがあったかは、さまざまなインタビューや著書で紹介され、すでに知っている人も多いだろう。そのなかでも今ドラマでは、最大の危機であった株価下落と村上ファンドとの闘いに焦点を当てている。

若くして大きな成功の頂点にいたはずの26歳の藤田を待っていたのは、ネットバブルの崩壊と買収の危機だった。藤田はそこからどのように回復し、這い上がってきたのか。そこには、USEN-NEXT HOLDINGSの宇野康秀社長、堀江貴文らの交流があった。

ドラマには藤田、宇野らも登場し、当時を振り返る。その語り口から、彼らの歴史の重みや、起業家としての熱量を感じられるのも本シリーズの魅力だ。また、原作とは違う視点から起業家達の興亡を見ているので、すでに連載記事を読んだ人でも楽しめる。

実際に起きたことについてインタビューをまじえ振り返る30分のドラマは、歴史の偉人を紹介する教育情報番組のようでもある。しかし違うのは、藤田の物語は現在もなお続いていることだ。第2話以降、メルカリの山田進太郎社長、LINEの出澤剛社長、ソフトバンクグループの孫正義氏らにスポットを当てる。いま、この時、同じ時代に生き、予測不能な未来に立ち向かっている人物を紐解いていく。だからこそ、今観たいリアルな経済ドラマとなっている。

(文・河野桃子)

◆番組情報
Paraviオリジナルドラマ『ネット興亡記』
毎週水曜0:00に「Paravi(パラビ)」で最新話を配信 全5話

Paraviオリジナルドラマ『ネット興亡記』視聴ページ
『ネット興亡記 インタビュー編』視聴ページ
日経電子版『ネット興亡記』公式サイト

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