第一話は、完全に「佐藤二朗劇場」だった『浦安鉄筋家族』(テレビ東京)。
正直、原作ファンとしては、「もっと引きの画で多数の激しく珍妙な動きを同時に見せてはくれないか」とか、「書き文字の独特の擬音をもっと実写ならではの解釈で見せてくれないか」とか、「主役・小鉄を父の大鉄に変更するのではなく、佐藤二朗に無理やりに小学生の小鉄を演じてもらったほうが面白かったんじゃないか」とか、愛ゆえにさまざまなリクエストや妄想をしたくなる。

しかし、ドラマは原作とは全くの別モノ。何より役者たちがそれぞれに役柄を、この世界観を楽しんでいることが伝わってくる。

なぜなら、佐藤二朗や水野美紀がアドリブの掛け合いをかなりしているらしく、素で噴き出しそうになり、懸命にこらえている表情が度々映し出されるからだ。

また、1~2話の段階で最も熱演しているのは、大沢木家の母を演じる水野美紀である。
髪を逆立て、青筋を立ててブチギレたり、飛び蹴りやバックドロップをしたり、娘役の岸井ゆきの相手に容赦なくキャメルクラッチをかけたり。華麗なアクションの数々には、思わず拍手したくなるほどである。

さらに、第二話の最大の見どころは、ヨーロッパ企画の本多力が演じる長男・晴郎に、「パロスペシャル」をかけていたことだ。

ご存知ない方のために少々解説すると、「パロスペシャル」とは、相手の背後から両足を内側にかけ、両手をチキンウイングでしぼりあげる関節技のこと。『キン肉マン』のウォーズマンの必殺技として知られ、後の設定では「ロビンマスクが開発し、ウォーズマンに伝授したもの」ということになっている。

かつて大流行しすぎて、禁止された学校もあったようだが、なぜ水野美紀がこの技をこんなにも華麗に決められるのか。気になって調べてみたところ、実は彼女は1974年生まれの45歳。若くて可愛いが、意外にもドンピシャの『キン肉マン』世代なのだった。もしかして自身の小学生時代に、教室で男子にパロスペシャルをかけていたこともあったかもしれない。

ちなみに、第2話には大仁田厚やアジャコングも出演。原作でのパロディキャラを本人が演じているというおかしな状態になっている。どういうわけか格闘系のこだわりが厚めの作品なのだ。

(文・田幸和歌子/イラスト・まつもとりえこ)

【第3話あらすじ(4月24日[金]放送)】
父・大鉄(佐藤二朗)から「花丸木(染谷将太)と別れろ」と言われる長女・桜(岸井ゆきの)。
なんたって桜の彼氏・花丸木は、肌の抵抗が少ないためにするすると服が脱げていってしまう裸ん坊。そんなデート現場を、大鉄は偶然見かけてしまったのだ。桜は大鉄に「お父さんなんて他人よ」と言い放つ。そんなある日、思いがけず花丸木と家で勉強デートをすることになった桜は、自分の家族の粗を知られたくない! とダメオタニートの長男・晴郎にドロップキックを見舞ったり、なぜかトイレに現れた巨大ウンコを処理することになったりとてんやわんや! ただの勉強デートがどうしてこんなことに!? 果たして、桜の純情は守られるのか!?

◆番組情報
『浦安鉄筋家族』
毎週金曜夜0:12からテレビ東京で放送中。
地上波放送後には動画配信サービス「Paravi(パラビ)」でも配信中。
※新型コロナウイルスの感染拡大で撮影スケジュールに影響が出ているため、7話以降の放送は延期となりました。