疲れた心を癒すのは、胸キュンの恋愛ドラマ。中でも、年下男子とのラブストーリーは、もう自分が童話のお姫様ではないことを知った私たちをシンデレラに変える最後の魔法。何かと気持ちが荒みやすい今こそ、年下男子との恋で甘い夢に浸りたい。

そこで、動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で観られる最強年下男子をピックアップ。第1弾は、日本中に"無敵ピンク"旋風を巻き起こした『初めて恋をした日に読む話』(2019年、TBS系)の由利匡平(横浜流星)。放送終了から1年が経過した今も冷めることのない"ゆりゆり"熱の秘密はどこにあるのだろうか。

横浜流星の儚さが"ゆりゆり"を無敵の年下男子にした

ひと口で年下男子といっても、そのタイプはさまざま。"ゆりゆり"はちょっと近寄りがたい雰囲気を醸しながら、なついた相手にはあどけない顔を見せる"トラネコ系"年下男子だ。

ビジュアル面の魅力は一目瞭然。説明は不要と言いたいところだけど、あえて言及するならその"儚さ"だ。空手仕込みの引き締まった肉体を誇りながら、横浜流星はどこか消え入りそうな"儚さ"を持っている。色素の薄い肌と、シャープな輪郭、長い睫毛が落とす影。これらが組み合わさり生まれる透明感が、横浜流星の"儚さ"の秘密。

人は永久ではないものに惹かれる。壊れやすいものほど大切にしたくなる。中学2年で母親を亡くし、愛情の欠けた家庭で育った"ゆりゆり"のバックボーンが自然と伝わってくるのは、横浜流星の持つ"儚さ"ゆえ。これまでいくつもの少女漫画で心掴まれてきた、見た目は怖いけど、自分がいないとどうにかなってしまいそうな、ほっておけない不良高校生を、横浜流星が佇まいだけで完璧に体現したことで、一気に視聴者は『はじこい』に夢中に。

当然、女子が大好きなギャップもバッチリ押さえている。トレードマークのピンク髪もさることながら、個人的なツボはあのフード。詰襟からはみ出した大きめのフードは、大人びたルックスの横浜流星にはちょっと子どもっぽくて、そのアンバランスさがたまらない。第4話の勉強合宿で披露した、紫のトレーナーに黒のオーバーオールは明らかに幼い印象。でもそれが不思議な愛らしさとなって、年上女子の庇護欲をかき立てるから、横浜流星は罪深すぎる。

そのくせタンクトップからむき出しとなった腕は引き締まっていて、男の色気たっぷり。この子どもっぽさと男らしさの振り幅の激しさこそが、年下男子の魅力なのだ。

そのピュアな"迷いのなさ"が年上女子の心を揺さぶる

もちろんキャラクター面の魅力も枚挙にいとまがない。第4話の「ご褒美ください」や、模擬試験会場で見せた振り向きざまの舌ペロなど、わかりやすいサービスカットもたくさんあるのだけど、"ゆりゆり"の魅力はそこだけはない気がする。

私たちが"ゆりゆり"にどうしようもなく心を奪われてしまうその理由。それは、彼の"迷いのなさ"だ。春見順子(深田恭子)と一緒に東大に行く。そう決めたその日から、"ゆりゆり"は他にどんな誘惑や選択を提示されても一切迷わない。

どんなに江藤美香(吉川愛)がアプローチしてきても、百田朋奈(高梨臨)が色目を使ってきても、まるで目もくれずそっけない態度。父親(鶴見辰吾)が順子のいる地元の三流塾ではなく東大受験専門塾を勧めてきたときも、"ゆりゆり"の心は順子一択。18歳になったら想いを告げようと、膨れ上がる恋心を一生懸命セーブして、受験勉強に打ち込む。その脇目も振らない"迷いのなさ"が、ピュアで、いじらしくて、私たちの胸に甘酸っぱい炭酸ソーダを飲んだときのような気持ちを呼び起こさせる。

大人になると、こんなに迷わないままではいられない。利害も考えるし、損得の計算ばかりが得意になる。しがらみが増えて、打算を覚えて、大切にしなきゃいけないものがあるのに、つい優先順位を間違えてしまう。でも、"ゆりゆり"は違う。いつだっていちばん大切なものが何かわかっているし、ちゃんといちばん大切なものをいちばん大切にできる。その姿が、大人になった私たちには眩しくて、だから"ゆりゆり"がいとしくてたまらないのだ。

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選ぶ人の数だけ答えがある。"ゆりゆり"名場面3選

そんな"ゆりゆり"の個人的な名場面を3つ挙げると、まず1つは第5話。八雲雅志(永山絢斗)のアドバイスを受け朝型生活に切り替えた"ゆりゆり"が、毎朝自転車で春見家の前に駆けつけ、順子の部屋を見上げるシーン。特に3度目の、学ぶ楽しさに目覚めた"ゆりゆり"の顔は、朝の陽射しに負けないくらい澄んでいて、人生の高揚感に満ちあふれている。横浜流星の俳優としての地力の高さは、こうした短いシーンでも表情だけで鮮やかに心模様を表現できるところ。このシークエンスだけで、恋の加速感が見る見る伝わってきて、恋する男の子はいいなと"ゆりゆり"を応援したくなってしまう。

2つめが第8話。高級官僚の父親に汚職疑惑が浮上。自宅をマスコミに取り囲まれた"ゆりゆり"が、順子の前で「俺、受験やめるわ」と告げるシーンだ。

迷わない"ゆりゆり"が初めて自分の気持ちに背を向けたこの場面。あれだけ澄んだ眼差しをしていた"ゆりゆり"が一転して暗く澱んだ目に。父親のことはもちろん、山下一真(中村倫也)に対する嫉妬で、自分の気持ちをコントロールできない"ゆりゆり"の苛立ちと無力感が気配からにじみ出ている。

中でも「もううちにも来ないでください」と右目からこぼれた涙は、やるせなさに胸が締めつけられると同時に、はっと息を飲む美しさ。繊細な感情表現を得意とする俳優・横浜流星の持ち味が十二分に発揮された、痺れるような名演技だ。

そして3つめが第9話の誕生日パーティー。鬼のお面をかぶったまま順子が"ゆりゆり"を抱きしめ返すシーンは、ときめきが高まりすぎて涙が出る本作きってのラブシーンだ。だけど、ここで推したいのは、あえてその少し前。みんなにお祝いしてもらっている中で見せた、"ゆりゆり"の両目をつぶってのくしゃっとスマイル。

ぶっきらぼうな"ゆりゆり"だけど、笑顔を見せる場面自体は多かった。特に印象的なのが、唇の端を片方だけくいっと上げるヤンチャスマイルと、目尻を柔らかく垂らして両方の口角を上げるソフトスマイル。白い光に溶けていきそうな透き通った微笑みが、"ゆりゆり"の美しさを際立てていた。

でもあの誕生日パーティーのビッグスマイルは、そのどちらとも違った。"ゆりゆり"ってこんなふうに笑うんだという飾らなさがあって、等身大の"ゆりゆり"が見られたうれしさと、もしも"ゆりゆり"が年下男子じゃなくて同い年のクラスメイトなら、こんなふうにはしゃぐ顔を何度も何度も見られたんだろうかというせつなさで、胸がいっぱいになった。

きっと観る人によって、"ゆりゆり"名場面は様変わりするはず。それほど横浜流星の演じた"ゆりゆり"は光の当て方によっていろんな表情を見せてくれた。まるで角度によって色彩が変わるムーンストーンみたいな男の子だ。

たとえば木村拓哉の取手くん(『あすなろ白書』[1993年、フジテレビ系])や織田裕二のカンチ(『東京ラブストーリー』[1991年、フジテレビ系])のように、これから先どんなに横浜流星がビッグスターになっても、きっと永遠に語り継がれるであろう奇跡の当たり役。あのとき、あの瞬間だから演じられた横浜流星の"ゆりゆり"をぜひ堪能してほしい。

(文・横川良明/イラスト・月野くみ)