テレビ東京では現在、増田貴久が主演を務めるドラマ『レンタルなんもしない人』が放送中だ。本作は、「なんもしない人(ぼく)を貸し出します。」「ごくかんたんなうけこたえ以外、なんもできかねます。」という、"何かすること"が求められ続ける現代において、そう堂々と宣言しながら誕生した不思議なサービスをテーマに、増田演じる"なんもしない"主人公が、出会う人の心を温める不思議で新しいヒューマンドラマ。ただひたすらに"癒される"と話題になり始めている本作のプロデューサーを務める稲田秀樹氏にインタビューし、作品の魅力に迫った。

先日放送され、動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で配信中の第1話では、故郷に帰ってしまう依頼者の「東京での最後の一日に付き合ってほしい」という依頼に応え、東京タワーでの思い出作りに付き合う姿が描かれた。"レンタルさん"に妙な安心感を覚え、東京で頑張った数々の事を振り返り一方的に思いを吐き出していく依頼者。流れでなぜか河川敷に辿り着き、依頼者がまだ思いを吐露していく中であまり居心地よさに"レンタルさん"は寝てしまう・・・。それでも依頼者は不思議と癒され、東京を離れることへの名残惜しさに気持ちの整理をつけて帰っていくことに――。

"なんにもしない"ながら「ただそばに居てくれる」、それだけで依頼者に癒しや安心感を与えた"レンタルさん"。それが視聴者にも伝わっているようで、SNSでも「癒された」という感想が相次いでおり、これまでにないドラマ作品に仕上がっていることは間違いないだろう。

そんな注目作のプロデューサーを務める稲田氏にインタビューした。本作がドラマ化されたきっかけや"レンタルさん"を演じる増田の印象、"レンタルさん"こと森本祥司氏の印象などを聞いた。

――"レンタルさん"をドラマ化したきっかけはなんだったんでしょうか?

同じくプロデューサーを務めている近添有賀さんから最初にお話を頂いたのが1年ほど前・・・"レンタルさん"が話題になって書籍化されてすぐくらいでした。僕はその時"レンタルさん"の存在を全然知らなかったんですけど、頂いた資料などを読んでみたらとても面白いと感じたんです。なんもしないことで依頼者の方が救われたり、気持ちが軽くなったり、前向きになったりしているんだと知って、"レンタルさん"と依頼者の関係性がとても「今風」だなと。

人間関係は向き合って言いたいことを言い合って深めていくのが正しい・・・みたいな固定観念があったりしますけど、"レンタルさん"のようにあまり深入りしないことが、むしろ心地いいこともあるんだなと思いました。

"レンタルさん"が何もしてないのに第三者の心に響くような素敵なエピソードが多くて、それを読んでいるだけでも勝手に救われている気持ちになるんですよね。これは新しいタイプのドラマを作れるんじゃないかと思って、一緒に企画書を仕上げてプレゼンしました。何度も不採用が続いたんですけど粘り強くリベンジし続けて、ようやく念願が叶いました。

本作はドラマとはいえ極力なにもしないということに挑戦していて、史上初の"なんもしない主人公"を目指しています。

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――ドラマ化の前に"レンタルさん"こと森本さんに会われているかと思うのですが、どういったご印象でしょうか?

初めてお会した際に、どういう方向でドラマを作ってくかという相談をさせていただきました。小一時間ほどお話したんですけど、本当に変わった方だなという印象でした(笑)。

たくさんあるエピソードの中には、殺人の罪を犯してずっと少年院にいた依頼者と会うというヘビーなものがあって、そういう場合に相手に感化されて気持ちが重くなったり、活動が辛くなるようなことはないんですか?と聞いてみたんです。そしたら、そういうことは全くないという答えが返ってきて。「依頼者には共感しません」と...。この感覚はスゴいなと思いました。そんな一方で、依頼者からダイエットに効く運動の話を聞いて帰ると、いつのまにか自分でも気づかぬうちにその運動してたりとか、相手の口癖が移っちゃったとか、単純に影響を受けやすいところもある。そのアンバランスな二面性がとても面白いなと感じました。

あとは、"レンタルさん"にとって自分をレンタルするのはある種の活動であって、お金を得るための仕事という認識はあまりないんじゃないかと思いました。生きていく上で自分ができる「苦」でないことをやっているだけ...。今、一番フィットしているから、今、続けている。先のことはまだ分からない。そんな感じも興味深かったですね。

――ドラマ化にあたって"レンタルさん"から「ここはどうしても描いてほしい」というようなリクエストなどはありましたか?

当初はそれこそ"なんもない"という感じだったんですけど(笑)、台本を読んでいただいてからは「僕はこんなこと言いません」とか「言い回しが気になるとか」とか、色々とご指摘をいただきました。特に"レンタルさん"は普段から文字数に制限のあるTwitterを使っているからか、言葉選びに対するこだわりを強く感じました。「あ、なるほど。そういう線引きがあるんだ」と、レンタルさんなりのルールっぽいことが何となく分かって楽しかったです。

――主演を務める増田さんの印象はいかがでしょうか?

増田さんは"レンタルさん"をどう演じるのか、最初すごく悩まれていました。どういう温度感で演じたらいいのか、森本さんご本人の雰囲気に近づけたほうがいいのかなど...色々と試行錯誤しながら準備していったんですが、いざ撮影に入ってみたら、割と早い段階でドラマの世界の"レンタルさん"にちゃんと仕上がって、驚きました。これこそ才能でしょうか。観終わった後にこういう人に依頼したいなと思えると思います。

あまり作った表情のお芝居をされていなくて、本当にナチュラルな感じで臨まれているのが、"レンタルさん"にハマっているなと思います。ああいうチノパンにグレーのパーカーという飾り気のない洋服も着こなして、ロケをしていても周囲からまったく気付かれないほどです(笑)。"レンタルさん"として街に溶け込んでいるんですよね。

作品のベースとなる世界観をチーフ監督の草野翔吾さんもすごく丁寧に作ってくださっていますし、3話と4話はタナダユキ監督にお願いしているんですけど、各話それぞれに味があって、本当にすてきな仕上がりで満足しています。比嘉さんはじめレギュラーの出演者や、ゲストの皆さんもとても魅力的ですし、観ると本当に心が癒やされる作品になっていると思います。

――本読みで森本さんと増田さんがご対面されたと伺ったのですが、その時のお2人の印象は?

短い時間でしたが、増田さんは森本さんがすごく面白いことに敏感な方で、自分が面白いと思うものをシンプルに世の中に提示しているんだということを感じたようでした。それをご本人に確認したら「僕は面白いものに関しては絶対の自信を持ってます」ときっぱりと返答されたのに驚いてました。森本さんのある意味、戦略的なところも感じ取っていて、増田さんも森本さんと似ていて、感受性が高くて頭のいい方なんだなと思いましたね。

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――実際にあったさまざまな依頼がドラマ化されているとのことですが、おすすめの回などありますでしょうか?

僕は第2話(4月15日[水]放送)の岡山天音さんが演じる若きサラリーマンが「会社に行くのが怖いので、出社するのに付き合ってください」というエピソードがすごく胸に響きました。きっと視聴者の皆さんそれぞれが自分の身に置き換え、重ね合わせながら観ることが出来るんじゃないかと思います。ちなみに、第1話の『都落ち』のエピソードは、特に女性スタッフの心に刺さっていましたし、第2話は主に男性スタッフに響いていたんです。回によっていろんな見方が出来るのが、このドラマの良さだと思います。

実は、一部ドラマ用のオリジナルストーリーも入っています。そこもぜひ楽しみにして欲しいです。今回、話数に限りがあって取り上げられなかったエピソードも残っていますし、好評で好結果だったら、ぜひ続編をという密かな野望もありますよ。

――最後に、作品を楽しみにしている方へのメッセージをお願いします。

こういう内容なもので、熱く「見てください!」というのもなんなんですけど(笑)、新しくて、あまり見たことない妙なドラマになってますし、見た後にはきっと気持ちが安らいだり、救われたりするんじゃないかと思っています。いろいろと厳しい今だからこそ...ぜひ「見てください!」と言いたいです。


◆番組情報
『レンタルなんもしない人』
毎週水曜深夜0:12からテレビ東京系にて放送中。
また、地上波放送終了後には動画配信サービス「Paravi(パラビ)」でも配信されている。