目が離せない展開が続いている日曜劇場『テセウスの船』(TBS系)。事件の起きた平成元年から一転、現代に戻ってきた主人公・田村心(竹内涼真)は、歴史が塗り替えられた新しい世界で事件記者となった岸田由紀(上野樹里)と共に事件の謎を追い続け、ついに木村みきお(安藤政信)と対峙する。

ところが、音臼小無差別毒殺事件の真相がわかったと思いきや、心は再び平成元年にタイムスリップ。さらに3月1日(日)に放送される第7話の予告では、みきお以外の真犯人の影もちらつき出し、物語は予想のつかない方向へ向かおうとしている。

そこで、キーパーソンであるみきお役の安藤政信にインタビュー。撮影の舞台裏を語ってもらった。

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きちんと演じることで何か力になれたらという想いがありました

――6話のラスト、衝撃でした。ぜひ撮影の舞台裏、聞かせてください。

あのシーンは、撮影の日がすげえ寒くて、凍えそうだったんだよね。で、現場で「寒いよね」ってつい言っちゃったんだけど、よく考えたら(竹内)涼真や他のスタッフさんたちは、毎日とんでもないスケジュールで、寒い中、頑張っているわけじゃない?

俺なんてそれまで屋内のシーンばっかりで温かったから、全然そういうことに気が回らなくて。みんなが普段寒さに負けず頑張っているところを、変なこと言っちゃったなってちょっと反省しました。まあ、でも寒かったけど(笑)。

――まさに見せ場となるシーンでしたが、撮影に入る前、竹内さんと何か話したりしましたか?

3話で、涼真が鈴木(亮平)さんに「自分はあなたの息子なんだ」って本当のことを告白する場面があったじゃないですか。オンエアを観たとき、あそこの芝居が本当にドキュメンタリーチックで鳥肌が立ったんですよ。で、「素敵だったよ」って感想を涼真にメールしたら、「(安藤さんが出演する)現代版も良くしましょう」って返事が来て。

6話の撮影が終わったあとも、「昨日すっげえ楽しかった」って連絡をくれて、「あんな現場が毎日だったらめちゃくちゃうれしいです」って言ってくれましたね。

――竹内さんとすごく仲が良いんですね。

去年の5月からWOWOWさんの『太陽は動かない』という作品の撮影で涼真とはずっと一緒で、そこですごく仲良くなったんですよ。

この作品のお話をいただいたのも、『太陽は動かない』の撮影が終わってすぐぐらいで。『太陽は動かない』の撮影中にふたりで飲んでいるとき、涼真から『テセウスの船』の話は聞いていて、この作品にかける涼真の想いがすごかったから。自分にオファーが来たのも縁だと思ったし、彼の大事な主演作だからこそ、友人の俺がきちんと演じることで何か力になれたらという想いがありました。

――じゃあ出演を決めたのは、竹内さんの存在が大きかったんですね。

デカいですね。今もデカいですし。やっぱり大切にしたいやつだから。

――安藤さんは、竹内さんのどんなところに惹かれているのでしょう?

ドラマを観てくれている方はわかると思うんですけど、この作品って芝居プラスドキュメンタリーを観ているような感覚なんですよね。涼真の芝居もなんだけど、芝居芝居していなくて、まるで本当のドキュメンタリーみたいに過去と未来を行ったり来たりしているように見える。『太陽は動かない』の芝居とはまったく別人。『テセウスの船』の中にいる心は、心でもあるし、涼真でもある。

それは涼真が撮影に入る前から、何回も何回も台本を読んで、家族のこととか、心のことを一生懸命考えているからで。涼真の芝居が嘘臭くないところが好きだし、それは本人にもメールしました。

――そんな竹内さんと6話のクライマックスで思い切り芝居をぶつけ合った感想を聞かせてください。

すごいんですよ、あいつは。自分でちゃんと納得いかなかったから、「もう1回やりたい」って監督に言うし、俺にも言ってくるし。そんなふうに言われたら、「もちろん俺も付き合うよ!」って気持ちになりますよね。

涼真は、自分が心であることに対して、すごく責任感を持っている。真面目なやつだから、本当に。自分がこの作品を絶対に何とかするぞという気迫が感じられるというか。

本当に大変だと思うんだよ。どう考えても気持ち入りまくりじゃん、全シーンが。それ見ていて、すげえなと思って。あいつのことを思っているだけで泣けてきますね。

――そんな愛すべき涼真さんの主演作となると、安藤さんの気合いの入り方もまた違ったんじゃないですか?

すごく力も入れていたし、すごく台本も読んでいきました。俺の撮影初日が、第1話のオープニングで出てくる、東京駅の前で心とすれ違うシーンで。気合いが入りすぎて、すれ違いざまに立ち上がって走っていってやろうかと思いました(笑)。

――いきなりネタバレ過ぎます(笑)。

ですよね(笑)。やってやろうかなと思ったんですけど、さすがにその勇気は俺にもなく。ちゃんと普通に終わって、あとは涼真に「頑張ってくれ」って伝えて去りました(笑)。

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1話だけでも心の役をやらせてくれないかって言いました(笑)

――改めてですが、安藤さんが感じる『テセウスの船』の魅力を教えてください。

最初に1話と2話の脚本をいただいたとき、この年になると、家族のこととか子どものこととか人とのつながりとか自分もいろいろ経験してきているから、その経験に重ねて読んでいくと、すごく入りやすくて。心とお父さんの関係だったり、お父さんのことをずっと憎み続けていた自分を許せない心の気持ちだったり、そういうのがよくわかって。1話のお風呂のシーンとか台本を読んだ時点で号泣しちゃったんですよ。

――あそこ、いいシーンでしたよね。

クランクイン前に涼真と飲む機会があったんで言いましたもん、「1話だけでも心の役を俺にやらせてくれないか」って(笑)。

――(笑)。

なんだったらプロデューサーにも言いました(笑)。それぐらい素敵な役だし、こんな素晴らしい役で主演を張れる涼真のことを改めてすげえやつだと思ったし、本人にもそう伝えました。

――安藤さんは、この作品の人間ドラマの部分や心のキャラクターに魅力を感じたということですね。

本当に素晴らしい脚本だと思いました。あとは、ちょうど俺、去年やっていた『あなたの番です』(日本テレビ系)というドラマで、ずっと犯人のように見せて、最終的に何もないという役をやっていたじゃないですか。

――正直な話、今回も匂わせるだけ匂わせてワニを飼っているだけなんじゃないかと思いました(笑)。

だから今回は自分で自分が浮かばれるように持っていかないといけないなと思いつつ芝居をしています(笑)。

――まずは6話でしっかりその場があって良かったです(笑)。じゃあ、今後の展開に向けて安藤さんからアピールポイントをお願いします。

7話と8話の台本を読んだんですけど、子役のみきおのシーンがめちゃくちゃいいんですよ。めっちゃ俺がやりてえと思いました(笑)。完璧に演じるからやらせてくれないかなって。

でもね、子ども時代のみきおを演じる柴崎(楓雅)くんがまた素晴らしいんだよね。いいと思う、すごく。確かに俺と似ているなと思うし。だからそこは彼に任せて。また10話とかで再登場できたらうれしいんだけど、そのときワンシーンぐらいだったら本当寂しいよね(笑)。最後までにもう一回大人のみきおにもいいシーンがあればいいなって、プロデューサーさんにお願いしておきます!

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――後編では、本作を通して変わったという"ドラマ"への価値観や役者としての姿勢について聞いた。

(取材・文:横川良明)

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(スタイリスト:川谷太一/ヘアメイク:桑本勝彦)

◆番組情報
日曜劇場『テセウスの船』
毎週日曜夜9:00からTBSで放送中
動画配信サービス「Paravi(パラビ)」でも放送終了後に配信。