「Plus Paravi(プラスパラビ)」ではドラマ好きのライター3名を招き、2019年に放送された中で印象に残ったドラマなどを存分に語ってもらう座談会を開催。前編では、前編では「2019年ドラマ 私が選ぶ"この3本"」や2019年ドラマの傾向などが語られた。後編では、2019年ドラマを振り返りつつ、特に印象に残った脚本家や演出家、役者について聞いた。

【座談会出席者】
◆横川良明:ライター。映像・演劇を問わずエンターテイメントを中心に広く取材・執筆。人生で一番影響を受けたドラマは野島伸司の『未成年』。
◆田幸和歌子:1973年長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。週刊誌、月刊誌、夕刊紙、webなどで執筆。
◆まつもとりえこ:イラストレーター兼ライター。ドラマ・バラエティなどテレビ番組のイラストレビューのほか和文化に関する記事制作も行う。

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原作モノをドラマ仕様に組み立てる力

――2019年ドラマで印象的だった脚本家の方はどなたでしょうか?

田幸:安達奈緒子さんが群を抜いていらしたなと思います。

横川:『きのう何食べた?』(テレビ東京)、『サギデカ』(NHK)、『G線上のあなたと私』(TBS)と、どれもよかったですよね。『きのう何食べた?』では最終回で一緒に年を越して・・・という描写があるんですけど、原作だとそこで周りの人から「あいつら気持ち悪い」みたいなチャチャが入るんです。そのほろ苦さも原作の魅力なんですけど、原作が描かれていた当時とは時代が違うからとその部分は描かれていないんですよね。省き方がとても上手いなと思いました。

まつもと:原作の世界観を崩さずに、再編集するドラマとしての組み立て方がとてもお上手ですよね。

田幸:それでいて、原作の中では展開的には地味なゲイカップルの相談を受けるエピソードをセレクトしているのも秀逸。全然別のエピソード同士をピックアップして編むアレンジ には唸らされます。安達さんの脚本を少し読ませていただいたことがあるんですけど、すごく美しい文章なんです、ト書きとかも。読み物としてグイグイ読める。今後もどんなものを書かれるのか楽しみです。

まつもと:私は『ルパンの娘』(フジテレビ)もすごく面白かったと思いました。

横川:『ルパンの娘』はコメディとして素晴らしかったですよね。

田幸:私、ベスト10には入れてます(笑)。演出も脚本もキャスティングもよくて。ゲラゲラ笑って観ているのに、最後は泣かされるんですよね・・・。

横川:僕も最終回で泣いちゃいました。演出もかなりとがっていて面白かったです。

田幸:センスがさく裂していましたね(笑)。

まつもと:昔の漫画みたい!

横川:コメディをちゃんと表現しつつ"ロミジュリ"にもちゃんとなっていて、恋愛ドラマとしてもホームドラマとしても泣けました。

田幸:意外と泣ける作品だというのは、観ていないと気付けないですよね。

まつもと:若い人向けの作品だと認識されてしまっているのはもったない・・・。大人の方も楽しめると思います。あとこの『ルパンの娘』は同じくフジテレビで放送されていた『ストロベリーナイト・サーガ』と同じ、徳永友一さんが書かれているのに驚きました。

田幸:同じ方なのが意外ですよね、振り幅がすごい!

まつもと:先程言ってた原作の再編集という意味では、『ストロベリーナイト・サーガ』では徳永さんもすごく大切にしているなと感じました。

田幸:あと根本ノンジさんが『フルーツ宅配便』(テレビ東京)と『監察医 朝顔』(フジテレビ)、『サ道』(テレビ東京)を書かれているんですけど、この方も多作で、芸風も幅広くて、これからますます楽しみな方だなと思いました。すごい本数を深夜帯で書かれているんですけど、"月9"の勢いを復活させたというところも大きいなと。

まつもと:『監察医 朝顔』もすごく良かったですよね。

横川:『監察医 朝顔』は事件モノではあるけど事件を通して日常を強く描いているというのが良いなと思います。

田幸:『フルーツ宅配便』も良かったです。"デリヘル"のお話なので見る人が限られてしまうんですけど・・・非常にリアルにかれているんです。根本さんって元々テレビの構成作家などをしながらライターをしてた方で、取材力があり構成力もあるんです。おそらく仕事もすごく速そう。それから、やっぱり『少年寅次郎』(NHK)や『セミオトコ』(テレビ朝日)の岡田惠和さんや、『だから私は推しました』(NHK)の森下佳子さんなどベテラン勢もさすがでしたよね。放送していた土曜夜11時30分からのNHKさんの枠って若い方のチャレンジ枠という印象ですけど、森下さんが今でもそういう枠でキレキレの作品を書かれているのがすごいなと思いました。

横川:ハズレないですよね、この枠は。『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』(NHK)の櫻井智也さんや、『腐女子、うっかりゲイに告る。』(NHK)の三浦直之さんなど演劇界で活躍されている方が書かれているんです。テレビドラマにあまり縁のなかった方たちにお願いしているというNHKさんのチャレンジ精神というのもすごいなと思います。NHKさんで言うと『これは経費で落ちません!』(NHK)も毎週楽しく見てました。『凪のお暇』とのバッティングがもったいないなと思っちゃいました(笑)。

田幸:そうなんですよ!

まつもと:ドラマ好きとしては困っちゃいますよね(笑)。

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日曜劇場は監督で差別化!『ルパンの娘』のセンスがさく裂

――確かに、面白い作品が多くて観るのが大変でしたね(笑)。演出家の方はいかがでしょうか?

田幸:『カルテット』(TBS)なども手掛けた『凪のお暇』の坪井敏雄さんたちのチームは毎回素晴らしいと思います!

横川:TBSさんは安定していて良いですよね。『グランメゾン東京』(TBS)や『グッドワイフ』(TBS)の塚原あゆ子さんも好きです。

田幸:塚原さんは、王道なものを洗練させるのがすごくお上手だなという印象があります。

横川:最近深夜ドラマとか映画のようなタッチの映像も増えているんですけど、塚原さんの美しい映像は透明感もあって好きです。テンポ感も良い。

田幸:どの作品でも新たな視聴者層を呼び込んでいるのがすごいですよね。王道な物語だと古臭くなったりしてしまう可能性があるんですけど、美しく仕上がっていて女性も入りやすくなっていると思うんです。

横川:日曜劇場の枠は塚原さんがいるかいないかというところで差別化がされている感じですよね。色が少し変わる。今まで日曜劇場の枠が好きだった人も見られるし、新たな視聴者層にも刺さっているなと思います。

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実力派俳優たちが大活躍!『凪のお暇』慎二の愛くるしさは高橋一生でなければ出なかった!?

――最後に、印象的だった俳優の方を教えてください。

田幸:やはり、『きのう何食べた?』の内野聖陽さんは魅力的でした。

横川:抜群に良かったですよね。あと『凪のお暇』の高橋一生さんも推したいです。

田幸:分かります。中村倫也さんが演じるゴンさんもとても魅力的だったけど、高橋一生さんじゃなければ、慎二があんなに愛くるしいキャラクターにならなかったなと思います。

まつもと:確かに!

横川:感情が動いている時の眼の揺らめきもすごいリアルですし、それを"滑稽"に見せることができるんですよね。

田幸:慎二の怒った顔ってすごく切ないんです。子供がすごい怒られて先生や親をにらみつけているような、泣きそうな怒りの顔をされていて。幼児性が見えるんです。

まつもと:切ないですよね。

横川:あと『グッドワイフ』や『わたし、定時で帰ります。』(TBS)、『少年寅次郎』(NHK)の泉澤祐希くんがすごく良かったなと思います。この一年ずっと活躍されている。

田幸:私も好きです! お芝居が上手くてナチュラルで、本当に地に足のついた若きベテランという感じですよね。

横川:『グッドワイフ』の1話ゲスト出演の印象の残し方も素晴らしいし、『わたし、定時で帰ります。』でのリアリティのある20代の演じ方。"モンスター新人"とまではいかない、程よい可愛げもあって良いなと思いました。若い俳優さんの中でも特に光っていたなと思います。あと、細田善彦さん。『だから私は推しました』や『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ)など今年一年活躍されていました。

田幸:カッコいいんですけど、ちょっと怪しい不気味な雰囲気もちゃんと表現できるんですよね。

横川:なんと言ったって『ライフ』(フジテレビ)の佐古ですからね! あの目を見開いていた姿をたまに思い出します(笑)。

田幸:そういう時の演技がゾワッと来ますよね。

横川:あと同じく『だから私は推しました』に出ていた笠原秀幸さんも長年地に足をつけた演技をされていて、そういうのをこなすのはすごいなと。

田幸:そのポジションで言うと『べしゃり暮らし』(テレビ朝日)の尾上寛之さんもすごく良かったです。NHK連続テレビ小説『ひよっこ』の兄弟役だった尾上さん、泉澤くんはすごくお芝居が上手な印象が強いです。お二人は実力派ゆえに、連続ドラマのゲスト出演もよくされていますよね。

横川:作り手側としてはきっと頼もしい存在じゃないかなと。

まつもと:いいですよね。私はその中でも改めて中川大志くんも良いなって思いました。

田幸:『G線上のあなたと私』、しっかり魅力が出ていますよね。

横川:コミカルさやかわいらしさ、酔っぱらって也映子(波瑠)をとろんとした目で見つめる姿などが本当に素晴らしいなと思いました。

田幸:こじらせてる感じも上手いし。

まつもと:ちゃんと切ない表情もされるし。

田幸:あと、『わたし、定時で帰ります。』の吉高由里子さんも良かったと思うんです。

まつもと:珍しく等身大の普通の役だなって印象でした。

田幸:力の入った方が演じたら、あのドラマのバランス感が崩れていたかなと思うんです。吉高さんの演技が軽やかで程よいんですよね。あのフラットな感じで物語の中心にいるからバランスが良いんだろうなと思いました。

横川:『わたし、定時に帰ります。』は全体的にキャスティングが光っていた印象です。

まつもと:ドラマが始まる前は、タイトルを聞いてもっとちゃらんぽらんな役かなと思っていたんですが、ちゃんと真面目に仕事もして帰るというところで共感もできたし、吉高さんのあのフラットさがすごくマッチしていましたよね。

横川:『監察医 朝顔』の上野樹里さんもそうですけど、地に足の着いた女性の役を演じられる30代の女優さんが活躍されていた印象です。女優さんだと『凪のお暇』の三田佳子さんもよかった。

まつもと:私もグッときました!

時代に合わせ、ドラマもより多様化していると感じた2019年。平成が終わり、新時代"令和"を迎え何かとバタバタしていたこの一年、『凪のお暇』や『きのう何食べた?』など自分を見つめ直したり、何気ない日常の中で改めて幸せとは何かを考えることができるドラマに注目が集まった。これからどう生きていくのか、自分にとっての幸せとは何なのか、視聴者にとっても人生を見つめ直すきっかけになったのではないだろうか。

イラスト/まつもとりえこ

【ドラマ座談会前編】『凪のお暇』『きのう何食べた?』ヒットの理由は"多幸感"?