――いよいよ、今年もドラフト会議が。いけださんの考える、今年のドラフト会議の見どころを教えてください。

高校生ドラフトは今回ピッチャーが多くて、(プロになったら)野手よりもピッチャーの方が即戦力というか出場機会が多いと思うので、すぐにプロで見られる可能性があるピッチャーが何人かいるかなというような印象があります。もちろん大学、社会人もいるので、どのようになるか分からないですけど、ピッチャーが多いっていうのは夢がある感じでいいですよね。どの球団もピッチャーは何枚いてもいいくらい欲しいでしょうし。

――注目の選手と言うと、大船渡高校の佐々木朗希投手などがいらっしゃいますよね。

僕も一年生から見ていましたけど、そもそもの話、球速のMAXが163キロで"高校生最速"と言われていますけど、実は日本で2番目に早いんですよね。大谷翔平が165キロなので、佐々木投手が日本人で2番目に早い選手なんです。しかも高校生だよっていうのを皆さんに知ってほしいですね。

――日本ハムファイターズが早い段階で1位指名方針を出していましたね。

これに関しては、入ってみないと分からないというご意見あると思うんですけど、数字として誰も届かない数字を出しているというところはものすごい判断材料になると思うんです。 コントロールの問題もありますが、163kmを投げるピッチャー、これほどの逸材はそうそういないんじゃないですかね。今までのドラフトの中でも1位ですよね、本当に。これだけ早い球投げる子はいないですから、間違いないかなと。

学校の方針などもありましたし、投げている機会が少ないということもあったので未知数なところが多い選手でもありますよね。今のポテンシャルが163キロなんですけど、20歳の頃には170キロ台には届いちゃう可能性があるのではないかと。本人が「MAX投げたら170キロ出るかもしれない」と言っていたと人伝に聞いたことがあって、もしかしたら163キロでセーブしているのかなというところが末恐ろしいですし、本当にこの子は"令和の怪物"って呼ばれるにふさわしいピッチャーじゃないかという印象です。

あとドラフトに届けを出していないですけど、及川(恵介)くんという、佐々木投手の球を受けていたキャッチャーがいるんですけど、この子もぜひぜひ取ってほしいくらいの気持ちがあります。そもそも163キロの球をフレーミングでちょっと入れたりすることなどが出来るんです。佐々木投手と及川捕手は盾と矛じゃないですけど、最強の矛を上手いことセーブできる捕手がいるので、それもすごいことだなと思いました。

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――佐々木投手と言えば、高校野球岩手県大会の決勝で登板を回避してチームが負けたことで議論を呼びましたよね・・・。

僕個人の意見ですけど、プロの方が仰る話ってごもっともだと思うんです。選手を守れとか、選手のけがを気にするっていうのは。でも、その先がプロファーストっぽい考えというか・・・高校野球って9割くらいここで野球を辞めちゃう子が主だと思うんです。それで一番の目標が甲子園。甲子園に行くために頑張っているんだっていうとこがあって、もちろんケガしてもいいわけじゃないですけど、佐々木投手はこの甲子園へ行くために大船渡を選んだんです。他の学校からもお誘いいっぱいあったんですよ、それでも「自分は地元の選手たちと甲子園に行きたい」という思いがあったんです。だから監督さんも色々考えてのことだとは思うんですけど、最後は投げさせてほしかったなと。

一個言えると思うのは、甲子園って毎回すごいスーパースターになる子がいたりするじゃないですか。甲子園の舞台って、みんな成長が凄いんですよ。ものすごく成長するので、この時期に甲子園を経験をさせてあげられなかったり、最後の大会に最後まで投げられないというのはちょっともったいない気がしていて・・・。やっぱり成長期なので、化ける可能性があるタイミングは投げてほしかったなと。あとバッティングが良いので、野手として使ってもよかったんじゃないかなと思いましたね。

――佐々木投手も含めて、"BIG3"と呼ばれる、星稜高校の奥川恭伸投手、明治大学の森下暢仁投手はいかがでしょうか。

奥川投手は凄いですよね。甲子園の智弁和歌山戦で、延長最後まで行って一人で投げ切ったんですけど、全部の回で一度は150キロを超えているんですよ。昔、松坂大輔投手が150キロ投げた時は「とんでもないことだ!」と盛り上がりましたけど、奥川投手は毎回、コンスタントに150キロ台を出していてさらに延長までってなると、「もうプロじゃねぇか!」と(笑)。野球解説の元プロの方から聞いた話だと、やっぱり高校生のストライクゾーンってプロよりも割と広めにとってあげるというのがあるらしいんですけど、このコントロールであればプロでも打てないと仰っていたんです。それを理解して投げているコントロールの良さ、投げ姿もまたかっこいいんですよね。それこそ読売ジャイアンツの菅野智之投手みたいな印象を受けるので、どの球団に行くか分からないですけど、"第2の菅野"として出てくる可能性がある選手じゃないかなと。

あと笑顔が良いんですよね! 大体笑っているんです。星稜高校が"常笑"というスローガンを掲げているようで、その効果もあると思うんですけど、元々笑顔がはじける子で、でも試合で負けて涙するということもあるから、感情がこんなに出て、笑顔が可愛くて、素晴らしい球を投げてってなると、これはもうプロに入ったらめちゃめちゃ人気出るの間違いないな、と思うんです。奥川投手はスターになる要素がいっぱいある印象ですね。

――森下投手や東芝の宮川哲投手、九州学院の川野涼多選手など注目選手が多いですよね。

大学、社会人あたりが筆頭になってくる感じですよね。森下投手は明大で大車輪の活躍でしたからね。大分投げたなという印象があるのでどれくらいの疲労がたまっているか分かりませんけど、でももう本当に即戦力で使えるピッチャーだと思います。プロとの差がないわけではないけど、プロに近いくらいのレベルに持ち上げている選手ではあると思うんです。森下投手、川野選手あたりは即戦力だから、"ピッチャー急務!"というような球団は、未来にかける佐々木投手なのか、即戦力の森下投手なのかというところでしょうか。

――東邦高校の石川昂弥内野手などはいかがでしょうか?

石川選手もすごいですよね。体が凄い仕上がりを見せてますし、バッティングが本当に皆さん納得のバッティングをしていて。元阪神タイガースの赤星憲広さんは「欠点がない」と仰っていたくらい。さらに、選抜優勝投手ながら、夏は野手に専念したんですよね。本当は野手の子なのに、野手に専念してやれたのがわずか数か月って考えると、この子ってまだまだ伸びしろがあるんだろうなと。ピッチャーでも選抜を優勝して肩の力も強いですから、ポジション次第ではものすごく跳ねるんじゃないかと思うんです。地元が近いから中日ドラゴンズあたり可能性があるかなと。

あと僕は興南高校の宮城大弥投手が好きなんですよね。身長はそんなでもないけど、この子のコントロールは今までに見た中でも群を抜いてすごいなと。難しい角度からボールが出てくるんですけど、指の感覚が良いんでしょうね。調子が良いときは松井裕樹投手並みの能力があって、もし左が欲しい球団があればとってもいいんじゃないかなって。僕はこの選手すごく推しています。

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――他に気になる選手はいらっしゃいますか?

今年の夏、見られなかったので見てみたいなという所で、武田高校の谷岡楓太投手も気になりますね。武田高校というところがすごい高校で。広島の山奥にある進学校なんです。1日の練習時間が50分しかないんですよ。入学した時の球速が120キロに届くか届かないかくらいだったらしいんですけど、今は152キロ。学校の指導とかが凄かったんだと思うんですけど、とはいえ50分の指導で30キロ上げて152キロ投げられるようになるのって、漫画みたいだし、これはちょっと長い目で見られる球団があれば、もちろん即戦力ではないと思うんです。

和歌山東高校の落合秀市投手も面白いかなと。体格もいいですし、ものすごくプロに注目されているけど、世にはあまり知られていないピッチャーで、面白いのが、落合投手は練習が嫌いなんですよね(笑)。昨今、品行方正というか、真面目な選手が多くて素晴らしいと思うんですけど、その中であまりやりたくないと思っているのにこれだけプロのスカウトから注目されているという。こういう逸材がこの令和の時代に現れてくれたのは嬉しいなと思うんです。昔ながらの野球選手のようなロックな感じでいいですよね(笑)。

法政大学の宇草孔基選手も楽しみですね。高校時代から見ていましたけど、この子は常総学院だったんです。甲子園でも、1試合に2塁打を何本という2塁打記録を作っているし。打てるし、走れるし、本当にアスリート系の選手なのですごく期待しています。

――この選手にはこの球団に行ってほしい・・・ということはありますでしょうか?

ちょっと難しいんですけど・・・佐々木投手は地元であってほしいとは思います。ただ、東北楽天イーグルスは去年、平石洋介監督になったばかりでも成績を残したから良い球団ではあると思うんですけど、まだ方針が決まってない段階で、長い目で見ていく選手を取るっていうのがどうなのかなとも思いまして・・・。でもやっぱり希望としては地元で活躍してほしいですね。これだけプロ野球で地方密着型の球団が出ているから、できれば佐々木投手を楽天で見てみたいです。

――毎年ドラマが生まれるドラフトですが、過去の出来事で記憶に残っているエピソードは?

記憶に残っているってなっちゃうと、(2015年の)やっぱりヤクルトスワローズの真中満監督のことになっちゃうな・・・現場で見ていたので、衝撃的でしたよ(笑)。高山俊外野手が欲しすぎてガッツポーズしちゃったよって(笑)。あれは印象的でしたね。

毎回色々ありますよね、菅野投手の時の"ジャイアンツ一本釣り"とか日ハムが声を上げるとか。本人からしたらたまったもんじゃないかもしれないですけど、いちファンとしては、ドラフトっていうシステムがある以上はそういうこともあるよなというところは面白いですよね。

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――野球初心者がドラフトを楽しむ方法を教えてください。

「はじめまして」で見て楽しいのは多分1巡目くらいまでだと思うんですよ・・・2巡目以降は分からなくなっちゃうと思うんです。今いろんな雑誌出ているので、どこ出身とか甲子園出ていたとか、そういう情報を少し入れてみると面白いのかなと。

あと、昨今のプロ野球見ていても、育成から上がってきていたり、下位指名だったけど活躍する選手とかザラにいるので、そういう選手を今のうちにチェックしておくというのも。後半の3巡目、4巡目や育成あたりまで見たほうが、青田買いしてる気持ちになって、「俺はあの選手知ってたぜ」って周りにも自慢できると思うので(笑)、見てもらえたらなと。

大学生だと、同年代で高卒で"ドラ1"で取られた子たちが活躍し始めたくらいにドラフトの声が掛かったりすることがあるので、「この子ってあの時にあの選手と対戦した子じゃん!」というのが出てくるので面白いんですよね。国際武道大学の勝俣翔貴選手も、(東海大菅生高校時代に)清宮幸太郎選手のいる早稲田実業高校とすごい戦いをしているんです。清宮君が1年生の時で、大逆転負けして敗れたやつとか その時は早稲田大学の加藤雅樹捕手もいましたから、そういう歴史が重なってくると面白いですよね。巡り合いという感じで。

僕は基本的には高校生メインで見ているので、高校生ドラフトが何人くらい掛かるかなって楽しみではあります。球団側は、球団の未来を背負うようなスターたちが入ってくる瞬間なのでピリッとするところもあるかもしれないですけど、視聴者はお祭り気分で見ていていいと思うんですよね。みんなで拍手してあげればいいイベントだと思うので、今回もいろんなドラマを見られたらいいなと思います。

『プロ野球ドラフト会議2019』は10月17日(木)夕方4:30から動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で配信される。