『冬のソナタ』以外にも、パク・シネ、チャン・グンソクら出演、シスターになるため修道院で修行していた双子の妹が、歌手デビューが夢だった兄になりかわって大人気バンド「A.N.JELL」の新メンバーに加入するというドラマ『美男<イケメン>ですね』が女性層を中心に注目を集め、日本での"韓流ドラマ"の代表格の1つとなっている。

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『美男<イケメン>ですね』は瀧本美織、玉森裕太らによってリメイクされたが、近年ではボイスプロファイラー(声紋分析官)たちが事件解決のために奮闘する『ボイス~112の奇跡~』や決して報われることのない"無償の愛"が描かれた切ないラブストーリー『ごめん、愛してる』など、重厚な設定と物語の韓国ドラマが日本人キャストでドラマ化されることが増え、確実に日本に浸透してきているように感じる。

動画配信サービス「Paravi(パラビ)」でも多数の韓流ドラマを配信中。この15年の韓流ブームの変遷を辿りながら、韓国ドラマの魅力を掘り下げていく。

■第1次韓流ブーム(2004年~)

『冬のソナタ』から始まった日本の韓流。その頃一気に入ってきた韓国ドラマは出生の秘密、不治の病、交通事故に記憶喪失~といった事件事情がてんこ盛り、全面に出て来るのは初恋、純愛に激愛、三角関係など、何がなくとも"愛"という感じで、これぞ韓国ドラマというドラマチックさが日本の視聴者に受けた。

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そして「韓国ドラマ=純愛」「韓国ドラマファン=年齢が高い」というイメージができつつあったが、それを打ち破ったのが『私の名前はキム・サムスン』や『宮~Love in Palace』などのラブコメテイストのドラマ。このあたりから30、40代のキャリア女子系も共感できるとして韓国ドラマファンの年齢層が広がった。と同時に『宮廷女官チャングムの誓い』や『朱蒙』などの宮廷や王族たちの権謀術数や派閥争いを描くサクセス時代劇が男性視聴者の琴線に触れ、韓国時代劇ファンを生み出していくことになった。

■第2次韓流ブーム(2010年~)

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そして東方神起、KARA、少女時代らのK-POPアイドルたちの日本での活躍とともに巻き起った第2次韓流ブームをけん引したのが『美男<イケメン>ですね』や『花より男子~Boys Over Flowers』『トキメキ☆成均館スキャンダル』などの若手俳優やアイドルたちが出演したオレ様、ツンデレ、胸キュン、男装など、キラキラ系の少女マンガベースのドラマだった。このあたりから韓国でもアイドルたちのドラマ出演が当たり前のようになり、「好きなメンバーが演技するなら見なくては~」ということで、KPOPから入った10代のファンたちの心をもがっちり掴むようになった。

■第3次韓流ブーム(2017年~)

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BTS(防弾少年団)が起爆剤となりK-POPを中心としてうねりとなった日本の第3次韓流ブームだが、ドラマに目を向けるとここ数年のキーワードは『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』に代表される「奇抜な設定を含めたファンタジー」や、『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』や『花郎』などの「イケメン男子たちの競演」といった作品が目立った。タイムスリップは当たり前、主人公が怪力だったり、超能力が使えたり、宇宙人、鬼、人魚、クローンにロボットに漫画の世界の主人公などなど、もはや主人公が人間ではない奇抜な設定がこれでもかと登場する。いずれも'ザッツ韓国ドラマ'という典型的なものでなく、韓国ドラマの得意技の愛をうまく入れこみながら、いくつものジャンルをミックスさせ、一ひねりさせながら、胸キュンや感動を届けてくれるドラマが多くなっていく。

そして、ケーブルテレビのドラマが隆盛になっており、実験的な作品や、マニア受けするようなタイプの作品などもたくさん登場するようになっている。

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韓国ドラマといえば「家族や愛」だったのに、それらを封印した、捜査もの、メディカルもの、法廷ドラマにグルメにサスペンスなどの専門性の高いドラマが花盛りとなってきた。特に本格サスペンスやミステリーのクオリティーの高さと言ったら! 非常に緻密かつリアルで、このジャンルには外れがないと思わせられるほどどれも面白い。その代表格が『シグナル』。時空を超えて無線機でつながった現在と過去の刑事たちが、力を合わせて未解決事件を解決していくというサスペンスドラマで、ファンタジーと捜査ものとヒューマンな感動と愛をも見事に統合させている。

また今の韓国社会を象徴するように、生きづらい若者たちを主人公にした『ミセン―未生―』のような作品や、ついに登場し始めたお一人さま文化を描いた『おひとりさま~一人酒男女~』や『私に乾杯~ヨジュの酒』というドラマも誕生させている。

今や韓国ドラマは「純愛」を見つける方が難しいくらいジャンルの多様性が魅力となっているのだ。

(文:韓国エンターテインメントナビゲーター 田代親世)

冬のソナタ』Licensed by KBS Media Ltd. (C) KBS. All rights reserved
ボイス~112の奇跡~』(C)STUDIO DRAGON CORPORATION
ごめん、愛してる』Licensed by KBS Media Ltd.(C)KBS. All rights reserved
私の名前はキム・サムスン』(C)MBC&iMBC All rights reserved.
宮~Love in Palace ディレクターズ・カット』(C)2006 Eight Peaks/MBC All Rights Reserved. (C)2009 GD Corp inc.
美男<イケメン>ですね』(C)SBS
トッケビ~君がくれた愛しい日々~』(C)STUDIO DRAGON CORPORATION
シグナル』(C)2016 Studio Dragon & ASTORY