『孤独のグルメ』は今や一大ジャンルとなった「食ドラマ」のパイオニア的存在。腹ペコの深夜にシズル感たっぷりの映像と、五郎独特の食描写をお届けし、視聴者を悶絶させている。今回、原作者であり、The Screen Tonesの一員として音楽を手掛ける久住昌之氏を直撃。『孤独のグルメ』が愛される理由や、撮影裏話などをたっぷりと語ってもらった。

――Season8が決まっての率直なお気持ちを教えてください。

いつも「毎回、このシーズンで終わりでいい」と思ってやっているんですよね。今回は特に、Season1から中心的にやってこられた監督(溝口憲司)さんが、今年3月に急に亡くなられて、(さらなる続編は)ないかなと思ったりしていて。だけど、みんなが「残ったメンバーで頑張ろう!」となったので、「じゃあ僕も頑張ろう」と、襟を正すような気持ちです。

――令和一発目にもなります。

そうですね! それは考えたことがなかったです(笑)。

――何やら、Season8では撮影方法を変えたり、さまざまな仕掛けがあると聞いています。デザートメイン回もあるとか?

そうなんですか、それはまだ聞いてないです(笑)。僕は今回初めて「ふらっとQUSUMI」のタイトルを自分のイラストでアニメっぽく作りました。そこの部分の音楽も新たに作って演奏しました。タイトルの文字も描いた。

――久住さんが思う『孤独のグルメ』が長く愛される理由は、どこにあると思いますか?

今までやってきて本当に思うんだけど、時間をかけて、丁寧に作っているっていうこと。ワンパターンでストーリーのほとんどない話で、だけど、毎回とても工夫して撮っている。下見して、照明やカメラもしっかり決めて、シーンにあった撮り方を考えて。自分の仕事でいうと、五郎の台詞は、脚本にある「肉が柔らかい」「肉汁が」「ジューシーだ」みたいな台詞は、ボクがチェックして全部消しています。そういうのはいわゆるグルメ番組で聞き飽きてる。

脚本家が頑張って書いてくれたものを(修正で)真っ赤にしてしまうのは申し訳ないんだけど、でもスタッフもそれを望んでいるんです。毎回「五郎の頭の中で、今までにない変なことを言わせよう」と思ってやっているんです。

それから、音楽も毎シーズン40~50曲を作っています。「そんなに作る必要があるのか」と思いつつ(笑)、毎回、食べ物に合わせた新曲を作っています。五郎が中華街に行くなら、中華街風の音楽を作る。BGMだから、明確に分からないだろうけど、そういうところが実は毎回更新されているところですね。視聴者にとって無意識な部分で変化をつけている。パッと行って、パッと食べて、おきまりの音楽を流す、というだけを毎回やっていたら1シーズンで終わっていると思います(笑)。

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――音楽はお店やメニューを知った上で制作されているんでしょうか?

脚本が上がり次第、着手します。まだ映像を撮ってなくても楽曲は作り始めます。

――「新しい」にこだわるからこそ、毎回視聴者も新鮮な気持ちで見られるのですね。

そうですね。シーズンごとにテーマ曲も、タイトルバックも変えています。さらに、その曲を激しくしたりゆるくしたり、バリエーションをみんなで作って。シンセの打ち込みより、生楽器を大切にしてます。ボクはウクレレとギター。木魚なんかもよく使います。

――台本もらってから曲を作り上げるまでどれくらいの時間がかかりますか?

いや~、みんな頑張りますよ(笑)。The Screen Tonesは5人なんだけど、最初に「新シーズンやるよ」と決まると、まずタイトルバックを「今回はウエスタンだ」「アイリッシュで行こう」と方向性を僕が決めます。そして、全員が集まってスタジオに入り録音するんです。

Season8のタイトルバックはブラックミュージックにしました。五郎が歩くテーマ曲は初めてゆったりしたワルツにした。あとは各自自宅録音です。録音したものをメンバーとネットでやり取りして「これにギターの音を入れて!」「これにサックスなんか考えて」とか協力しあい、みんなで作ります。今回も、僕がウクレレでコードだけ弾いたのを投げたら、パーカッションとキーボードが入ってきて「江ノ電のテーマ」が完成したり。

――台本へのこだわりを教えてください。

台詞はできるだけ説明的にならないよう、少なくしたいです。台詞の内容も五郎らしい言葉だけ残して、そうじゃない台詞は削る。「この肉は何だろう?」「大腸かな? 小腸かな?」みたいなことが書いてあったら、うるさくて、全然ダメ。五郎は、毎回ものすごくおなかが空いて店に入っているんです。「何だろう?」と思っているうち、もう飲み込んじゃってるというくらいでいい。食事の写メを全部撮ろうと思っていたら、一皿目は撮ったけど二皿目以降撮り忘れちゃった、みたいなことありますよね。

「こんなにやわらかくて美味しい肉初めて食べた」なんてことは、五郎さんの表情が全部表すから、いらないんです。タレントさんの食リポなら、「何か」を言わなきゃいけない状況があるけど、『孤独のグルメ』にその必要はない。むしろ、グルメ評論や食リポから、一番遠いものでないといけない。頭の中に浮かぶ言葉だから自由なんです。普通の人が言わないことを言わせたい。「ウシなのにウマい」というモノローグが、松重さんが大真面目な顔して食べている顔に重なると『孤独のグルメ』になる。

今のテレビというのは「この場面を持たせなきゃ」って思うから、テロップや擬音を入れたり、取材動画に窓をつけてスタジオのタレントの顔入れたり、詰め込むんだよね。僕は、ああいうの嫌いなんだよ(笑)。普通のテレビなら、納豆を20秒混ぜ続けて何も話さないって我慢できないでしょ? 見ている方も「大丈夫かな」と思うくらい。そこを松重さんの顔と音楽で持たせる。Season7の第4話の群馬・下仁田町のタンメンの回だったかな。ただ20秒くらい麺をすすっている映像がありました。本当はそこにもモノローグがあったんだけど、あえて全部取った。

――これだけ長く愛されている『孤独のグルメ』ですが、主演の松重豊さんの印象はSeason1から変化がありましたか?

基本ないですね。それがさすがだと思います。Season2があると誰も思っていなかったから、Season 1というのは何もかも模索しながらやっているわけです。2があるなんて思いもかけず。ところが、Season2をやらせてもらえることになった。なんでもそうなんだけど、続編が出ると、必ず「前の方が面白かった」って、言われるものなんです。

実際言う人もいたし、僕らも一番それが怖かったんだけど、その時に松重さんが、ワンパターンを恐れず、あまりにも淡々と1と同じように演じてくれた。それを見て「ああ、すごい。それでいいんだよな」と余計な心配が消えました。それ以降2、3、4・・・と変えないところが素晴らしいですね。たまに面白い顔や動きがちゃんと入っているけど (笑)。ギャグドラマでもグルメドラマでもないから。役者としてすごくテクニシャンですね。五郎には「なにも変わらず」という磨きがかかっている。

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インタビュー後編では、久住氏の"忘れられない"思い出深いエピソードを聞いていく。

『孤独のグルメ Season8』は毎週金曜深夜0時12分からテレビ東京系(テレビ大阪のみ翌週月曜深夜0時12分)で放送中。動画配信サービス「Paravi(パラビ)」でも見逃し配信されている。

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