あなたがトルコと聞いて思いつくものは何だろうか。世界遺産のカッパドキアやトルココーヒー、ケバブなどを思い浮かべる人が多いかもしれない。日本人にものすごく馴染みがあるとは言いがたいが、魅惑的なイメージで親日とも言われるトルコ。『オスマン帝国外伝 ~愛と欲望のハレム~』は、同国が世界中を魅了した壮大な歴史大河ドラマだ。

動画配信サービス「Paravi(パラビ)」にてシーズン1の配信が開始されている本作。初めて見るという方のために、尋常でないスケールで綴られるその魅力を紹介しよう。

舞台は、14世紀から20世紀初頭まで存在したオスマン大帝国。絶対的な権力で16世紀の帝国を牛耳った第10代皇帝スレイマンのハレム(後宮)に、奴隷として絶世の美女アレクサンドラ(のちのヒュッレム)が献上される。家族と婚約者を殺されて奴隷となっていたアレクサンドラは、スレイマンの寵愛を受けて帝国で生き残り、頂点まで上り詰めようと決意する。だが周囲ではスレイマンの正妻や母后、女官たちの嫉妬と陰謀が渦巻いているのだった。

本作は、実在した人物を描いた歴史ドラマである。スレイマンがヒュッレムを寵愛したことは有名で、政治的なストーリー展開も事実に基づいている。歴史好きなら間違いなくハマる作品だが、本作の凄いところは、歴史に詳しくなくても一話見れば即トリコになってしまう点だ。

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まずなんといっても目が離せないのは、奴隷の身分からハレムの頂点を極めていくアレクサンドラことヒュッレムだ。演じるメルイェム・ウゼルリはトルコ人の父とドイツ人の母を持ち、トルコ語、英語、ドイツ語を操るモデル出身の美女。そんな彼女が演じる主人公は、暗い過去を嘆かず、いかに生き残るか、いかに最強の女性になるかという野心に燃える熱いキャラクターだ。それをスレイマンに感づかれないしたたかさも持ち、時にはウイットに富んだ会話で和ませ、太陽のように微笑んで寵愛を得ていく。こう書くと策略家で嫌な女性のように聞こえるが、ヒュッレムを見ているとスレイマンにでもなったかのように彼女から目が離せなくなる。裏の顔を目にしているにもかかわらず、その打たれ強さ、愛嬌、機転、そして野心に心を奪われてしまうのだ。ある意味、現実社会でも男女問わず"ああ、こういう人いるなあ"と思いながら見ることができる、非常に私たちの世界に近しい人物だ。

また本作は、世界にこれほどのスケールのドラマがあるだろうかというくらいの超・超大作。シーズン1が全48話で、大ヒットを受けてシーズン2以降はさらに話数が増えた。これほどまでに人気がうなぎ上りのドラマも珍しく、すでに90カ国以上に輸出されている。

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これほどの話数エピソード数を誇る大作だけあって、脚本の面白さも光る。スレイマンをめぐる女性たちの愛憎劇はもちろんだが、地位や権力に固執する男性たちの確執も注目ポイント。帝国で起こる権力闘争の末の処刑や暗殺、不貞、裏切りや戦争シーンなどには度肝を抜かれるだろう。韓流や中国ドラマでもこのようなシーンはお馴染みかもしれないが、描かれる規模が大きすぎてドラマを見ているとは思えないくらいの追体験ができるのも本作の特長の一つ。また、「壮麗王」とも言われ芸術を愛したスレイマンが治めたオスマン大帝国の豪華絢爛な宮廷、衣装なども素晴らしく、当時のトルコを旅している気分にもなる。そして本作にハマった暁には、トルコと周辺国の歴史に詳しくなり、ドラマを楽しみながら教養まで深めることができるのだ。

"トルコのドラマなんて想像もつかない"と思っていたあなたこそ、これを機にトルコが誇る世界レベルの大河ドラマを見てみてはいかがだろうか。

(C)Tims Productions

(文/Erina Austen)