総勢2413組の芸人がエントリーした『キングオブコント2019』の決勝の模様が、9月21日(土)にTBSで生放送される。
『キングオブコント』は2008年に始まったコント日本一を決めるお笑いコンテスト。それまでにもお笑いコンテストはたくさんありましたが、「コント」に絞ったところが画期的でした。漫才で競い合う『M-1グランプリ』に比べると、関西以外の芸人の活躍が目立ちます。過去にはバナナマンやサンドウィッチマンも参加していた由緒ある大会です。
動画配信サービス「Paravi(パラビ)」では、東京03やロバート、バイきんぐなど、今もテレビやライブシーンで活躍し続けるチャンピオンを生み出した『キングオブコント』の過去大会が配信されています。今回は、私、ラリー遠田が配信中の過去大会の中から"神ネタ"だと思う5本をご紹介いたします。
オーソドックスな設定で爆笑の嵐を巻き起こす
■サンドウィッチマン「ハンバーガー屋」(2009年大会)
いまや好感度ナンバーワン芸人となったサンドウィッチマンの2人は、漫才とコントの両方をこなす"二刀流芸人"でもあります。2007年に『M-1グランプリ』を制した彼らは、二冠を狙ってこの年に『キングオブコント』に参戦しました。1本目に演じた「ハンバーガー屋」のコントは、オーソドックスな設定で次々に繰り出される富澤(たけし)さんのボケに伊達(みきお)さんのキレのあるツッコミが冴えわたる傑作でした。ちなみに、TBSのバラエティ番組『水曜日のダウンタウン』では、店員がこのネタの設定通りのセリフを言うというドッキリ企画に伊達さんがはめられたこともありました。
「ハンバーガー屋」のネタはこちら(01:07:00あたり~)
暴走キャラの毒舌老女はトラウマ級の破壊力
■かもめんたる「言葉売り」(2013年大会)
人間心理の奥に迫る底意地の悪い言葉の鋭さと、不気味な世界観を成立させる圧倒的な演技力に定評のあるかもめんたる。このコントでは、槙尾(ユウスケ)さんが路上で言葉を売る若者を、岩崎(う大)さんがそこに通りかかった老婦人を演じています。薄っぺらいプライドを抱えて路上の表現者を気取る槙尾さんに対して、岩崎さんが舌鋒鋭く啖呵を切るところは痛快です。岩崎さんが演じる老婦人のキャラクターのルーツになっているのは彼の母親なんだとか。母親はとにかく口が悪く辛辣で、岩崎さん自身も常にその標的になっていたそうです。かもめんたるはこの年に見事に優勝して、その実力を日本中に知らしめました。
川原のセンスが冴えわたる新感覚のリズムネタ
■天竺鼠「寿司」(2013年大会)
川原(克己)さんの繰り出すナンセンスなボケに定評のある天竺鼠は『キングオブコント』でも2008年、2009年、2013年と3回も決勝に進んでいる実力者です。中でもインパクトが大きかったのが2013年に披露したこのネタ。さまざまな寿司ネタに扮した川原さんが、曲に合わせて踊りながら登場して、瀬下(豊)さんが演じる小学生を魅了していきます。ほぼセリフがなく音楽がずっと流れているのですが、いわゆるリズムネタや音楽ネタとも違っていて、見たことがない新しい種類のコントでした。セリフなしでこれほどの爆笑を起こせるのは、発想の斬新さと、川原さんの動きや瀬下さんの表情の面白さによるものです。
何とも言えない中岡のたたずまいが笑いを誘う
■ロッチ「試着室」(2015年大会)
2015年、すでにテレビの人気者だったコカドケンタロウさんと中岡創一さんによるコンビ・ロッチは満を持して『キングオブコント』に参戦。惜しくも優勝は逃したものの、1本目のネタで暫定1位を獲得して底力を見せつけました。このコントの設定は一言で説明できるほどシンプルなのですが、同じ流れの繰り返しだけで笑いを増幅させていくところが衝撃的でした。このネタの面白さを支えているのは、ボケ役である中岡さんのとぼけたキャラクターです。何を考えているか分からない中岡さんのたたずまいと表情。それが見る人の心の中にじわじわと広がっていき、笑いの波状攻撃を仕掛けていくのです。
コントの構造を逆手に取って審査員も魅了した
■かまいたち「告白練習」(2017年大会)
かまいたちのネタの魅力は、偏執狂的な危険なオーラを持つ山内(健司)さんがその個性を生かしてさまざまなキャラクターを演じることです。それぞれがボケとツッコミの両方をこなし、漫才もコントも得意とする器用な芸人でもあります。これはそんな彼らが優勝した年に披露した傑作コントです。冴えない男子学生を演じる山内さんが公園にいるのをたまたま目撃した男子学生役の濱家(隆一)さんが、どんどん恐ろしい事態に巻き込まれていきます。コントというジャンルの構造そのものを巧みに利用するような斬新な展開は、プロの審査員もうならせました。
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