独自の目線や強いこだわりを持って世界や日本を巡る旅人="クレイジージャーニー"の旅の様子をVTRで紹介し、松本人志、小池栄子、設楽統のMC3人が、驚きの体験談を聞く紀行バラエティー『クレイジージャーニー』(TBS)。動画配信サービス「Paravi(パラビ)」では現在、過去の傑作を続々配信中。8月からは、ジャーナリストの丸山ゴンザレス氏が身を挺して潜入取材を敢行した「メキシコ麻薬戦争 後編」(初回放送・2016年5月5日)が配信されている。

番組を代表する旅人・丸山ゴンザレス氏のインタビュー後編では、『クレイジージャーニー』という番組に対する印象を改めて語ってもらうほか、世界中の危険地帯に赴いて取材活動を続ける丸山氏の行動原理に迫った。

――『クレイジージャーニー』では、MCの松本人志さん、小池栄子さん、設楽統さんとスタジオでトークもされていますが、3人の印象は?

松本さんたちとは、プライベートで話したことって一回もなくて。収録以外で話したことがあるのは、ラジオ番組(TBSラジオ「金曜JUNK バナナマンのバナナムーンGOLD」2017年12月29日放送)に出演して、設楽さんと話したときぐらいです。だから、お三方に対する印象は、皆さんがテレビを見て受ける印象と同じだと思うんですけど、僕が感じるのはやっぱり、彼らのユニークな目線ですかね。こちらが想定もしていないような、独特の角度で質問をぶつけてきますから。しかも、奇をてらっているわけでなく、ときに本質を突いてくる。それだけ、僕の取材してきたことに興味を持ってくださってるんだなっていうのが伝わってきて、それもうれしいですね。

──そういえば、「マンホールタウンに潜入」の回で、松本さんがマンホールタウンを取り仕切るボスを見て、「まだらな正義感」といったコメントをされていて、ひざを打った記憶があります(笑)。

おっしゃってましたね。やっぱり表現力がすごいと思います。設楽さんも質問がすごく的確で、ハッとさせられたことも何度もありますし、小池さんも、女優さんだからなのか、人の内面にすっと入り込んだような、本質的な質問をされるときがあるんですよね。

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――ところで、丸山さんは『クレイジージャーニー』の他の旅人の回をご覧になられることは?

佐藤さん(※佐藤健寿:世界中の奇妙な事物や風景を博物学・美学的な観点から撮影・記録する「奇界遺産」で知られる写真家)は見てますよ。僕は、佐藤さんの活動には以前から注目していて、佐藤さんの本やサイトもずっと見ていたんです。ご本人とお会いしたこともあったので、最初は「あ、佐藤さんも出るんだ」みたいな感じだったんですよね。彼は、僕と興味の幅が近いんじゃないかな。同じじゃないけど、似ていると思います。佐藤さんはとにかく博学で、ロズウェル事件とかUFOのことについてもすごく詳しいし、古代遺跡のことも詳しい。僕の専門外のこともよく知ってるし。佐藤さんの回は、いつもすごく面白いと思って見ています。

――ちなみにパラビでは現在、『ウルトラハイパーハードボイルドグルメリポート』(テレビ東京)という番組が配信されています。"ヤバい人たちのヤバい飯を通して、ヤバい世界のリアルを見る"というコンセプトの下、世界各国の裏社会の"食"の現場を追い掛けるドキュメンタリーで、目下『クレイジージャーニー』のファンの間でも話題になっているんですが、この番組は・・・。

ええ、見ましたよ。テレ東だけじゃなく、ああいう番組を、他の局でもどんどん作ったらいいのに、と思いますね。番組同士でテーマがぶつかったりしても、むしろ面白いんじゃないかと思うし。ただそこで、取材対象に興味を持っていない人がレポーターとして出てきたりすると、ちょっとキツいかもしれないですけどね。取材者がちゃんとしているのであれば、あの手の番組はもっと増えてほしいなと思います。

――今後、丸山さんが行ってみたい国・地域はありますか?

この国に行きたい、この地域に行きたい、というのはありません。僕はやっぱり、今起きている"現象"を追いたいので、どうしても横断的になるんです。例えば、アメリカの国境の壁の問題が今、世界的なニュースになっていますよね。中南米の国々からやって来る難民の人たちを受け入れない、国境線での申請を受け付けない、というふうにトランプ大統領が発表していて、それに対して、議員や人権団体が反発しているわけですが、この問題について、どこに取材に行くのかってなったときに、いろいろ考えられるじゃないですか。単純にアメリカに行くだけでは駄目で、いろいろなところを回らなきゃいけないわけですよね。そういうふうに、今は、ひとつの国で起きてることだけで話をまとめるのは実は難しくなってきているんです。

ひとつの現象は決してひとつの国で起きてるわけじゃなくて、同じような現象があちこちで同時多発的に起きたり、あるいは連動していたりもする。だから僕は今、国際問題になるような現象を横断的に追い掛けることになる。特定の国だけにものすごく興味があるとか、一カ所だけを深掘りしたいとか、そういう感覚にはどうしてもならないんですよね。

――となると、今気になっている現象は、やはりアメリカの移民問題ですか?

それは、分かりやすく例に出しただけで、他にもいっぱいありますよ。まさに現在進行形で追い掛けていることなので、あまり詳しくは言えませんが、すでに記事なんかで紹介しているようなものだと、例えば、今世界中で起こっている大麻合法化の問題だとか。あとは、世界の密輸入事情に関しても追っています。世界中のプロレスやローカル格闘技も追い続けていますね。

――そんなふうにアクティブに動き続ける丸山さんの"背中を押しているもの"は何なのでしょうか?

おそらく期待される答えとは違うと思うんですが、シンプルに"お金になるから"ということですね。つまりは「仕事になる」ってことです。僕は、「ジャーナリスト」と名乗ってはいますけど、聞こえがいいからそう名乗ってるだけで、「情報屋」ぐらいでいいかなと思ってるんです。何も解決しないし、何も助けないし、何ひとつ社会に貢献しようとも思ってないので。ただ、僕が興味のあることを現場に行って調べてまとめると、今はコンテンツになる。それもニーズがあるコンテンツになるんですね。

僕は、自分の取材がコンテンツとして売れない時代から、延々と同じことをやってきたわけで、また元の状況に戻ったって別に構わないと思ってるんですよ。世間が僕の活動に誰も見向きもしなくなったとて、こちらとしては、バックパッカー時代を含めたらもう20年ぐらいやってるわけですから。つまり、僕がやってることが今たまたま、時代と噛み合ってニーズが生まれているだけだと思ってるんです。ただ、その噛み合ってる状況というのは、すごく嬉しくて、楽しいです。僕が興味を持つことが、世間に伝わって、世間にも興味を持ってくれる人が出てくるっていうのが、すごく面白い。その分、20年間活動を続けてきた中で、"精度"っていうか"打率"は高まってきているのかなっていう気はします。世の中で起きるニュースに対して、僕が「これはみんなが興味を持つはずだ」っていう感覚があんまり外れない。たまには外れちゃうこともあるけど、それでも、他のメディアもまだ取り上げていない中、僕が取り上げたことが、ぱーっと世間に広まって注目を集めたときは、やっぱりすごく嬉しい。

それと、もう一個要素を加えるとしたら、僕の場合、「これ、割に合わねえな」っていうところにあえて行きたいっていうのがあって。僕は20年かけて精度を高めてきた分、時間を節約したり、お金をかけないようにしたり、取材活動とは別の、それ以外での工夫もめちゃくちゃするんですね。だから、普通のメディアだと割に合わないところでも、僕だとペイできる、プラスにできる、という自負があって。「これ、誰も行かないだろうな」と思うと、逆に行きたくなるっていう天の邪鬼な感じもありますね。

そんなふうに考えるようになったのは、僕の尊敬するライターの大先輩である吉田豪さんが、以前に発信されていた「豪さんのポッド」というネットラジオで、「割に合わないところにライバルはいない」とおっしゃってて、「本当にその通りだなぁ」と思ったのがきっかけです。僕が全然売れない頃、そのラジオを聴きながら、「"割に合わないところ"って、俺の好きな分野じゃん」って。それで、取材を仕事でもあり趣味的にも続けていたら、たまたまテレビから声がかかって、出演することになり・・・実は他にもテレビ番組に出たことがあるんですが、分かりやすくテレビ的にブレイクしたっていうのは『クレイジージャーニー』です。出演したことで知名度が上がって、ありがたいことに、取材テーマだけじゃなくて、私自身に興味を持ってくれる人も出てきて、割りに合わない取材が各種メディアに取り上げられるようになった。取材してきたものを媒体に載せるだけでひと苦労だった時代からしたら、本当に楽になりました。なんやかんや言っても、いろんな取材ができてラッキーって思っていますね。

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――でも、それも元をたどれば、"好奇心"というものに背中を押されている、ということなのでは?

いや、それはだいぶ前の段階の話でしょう(笑)。そりゃあ、こういう仕事をしている以上、好奇心は当然ありますけど、そこは前提だと思うんですよね。好奇心があるから、世界のニュースを見ているわけであって。知りたい欲求というのは普遍的なものだと思うし、自分の好奇心が特に突出しているとも思わないですね。ただし、行動力や情報収集力については、多少人よりも長けているのかなと。例えば、今こういうことが起きているっていうのをテレビの国際ニュースで見たときに、「じゃあ、ここに行くにはどうしよう」って、すぐに現実的な手段として考えることができる、とか。まぁそう考えると、好奇心の先にあるものが、他の人たちとは違うのかもしれないですね。僕の場合は、好奇心の先にすぐ結び付く先を具体的にイメージできるというか。いずれにしろ、好奇心自体が特殊なわけではないと思いますけど。

──丸山さんは、『クレイジージャーニー』に出演されるようになって以降、活動に対するスタンスに何か変化はありましたか?

特にないですね。僕としては、お互い上手に利用し合えればいいかな、っていうくらいに思ってるので。
ただ、ひとつ誤算だったのは、思ったよりも顔バレしてるなと思って(笑)。おかげで国内の取材がちょっとやりにくくなってしまいました。ここまで番組が世に浸透するというのは、完全に想定外でしたね。最初の頃は、ちょっと変わった深夜番組で、どうせ長く続かないだろうぐらいに思ってたんですけどね(笑)。

――ありがとうございました。

◆番組情報
『クレイジージャーニー』
毎週水曜夜11:56からTBSで放送
動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で過去の放送回を配信中
(C)TBS