肝試しに涙した少女は、いつしかおとなになった。可愛げがないかもしれないけれど怖いのはもう、幽霊じゃなくなった。本当に怖いのは、人間。人の心の闇と病みが交差する瞬間。ゾクッとする。背筋にヒヤリと冷たいものが走る。
今回は、動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で配信されている作品の中から、私、映画ソムリエの東紗友美が、暑い夏の熱をほんの少しだけ溶かしてくれるような、"心理的恐怖"を煽られる見応えたっぷりな作品をチョイスしました。
■告白(2010年)
ジリジリ焦げ付くような真っ黒な痛快感を浴びる復讐映画
「白ゆき姫殺人事件」「北のカナリアたち」「Nのために」「贖罪」挙げてはキリがないほど書籍は映像化常連の日本を代表する人気ミステリー作家湊かなえさんのデビュー作を独自の世界観の演出が際立つ「嫌われ松子の一生」「渇き。」の中島哲也監督が映画化。ある中学校のホームルーム、娘を殺された女教師(松たか子)の命の授業が突然開講する。鬼の形相なんて言葉もありますが、真の怒りを伝えたいときは無表情が効くことを学びました・・・。松たか子さんの美しさが一切目立たないほど、むせかえるような怪演をみせています。三吉彩花、のん(能年玲奈)、橋本愛とダイヤの原石の宝庫にも注目。想像できる上で最も胸くそ悪い復讐方法にゾッ・・・。
■バトル・ロワイアル(2000年)
世界中に影響を与えたR15指定の20世紀最後の問題作
中学のクラスメートたちが最後の1人になるまで殺し合う。強制参加の命がけのゲーム、その名もバトロワ。当時15歳だった私は、このゲームに参加したことを妄想し、誰と仲良くするかを線引していたほど実際に影響を受けました・・・。当時、悍ましい少年犯罪が起きたタイムリーな社会的背景がある中、林真理子、荒俣宏といった有識者たちの作品への批判がむしろ宣伝効果をもたらし大ヒットを記録し、国外にも影響を与えた。類似設定の映画もハリウッドで作られました。世界的に"叫び"といえばムンクですがここ日本において、絶叫している男といえば藤原竜也で間違いないですよね。追い詰められる役の多い彼の原点とも言える叫びもご堪能ください。
■悪の教典(2012年)
ただの胸糞映画で終わらせない!サイコパスとは何か知る映画
トラウマというキーワードと共に、真っ先に思い浮かぶのがこの映画。殺人鬼と化した担任教師が40人のクラスメートに襲いかかる。学校を舞台にしたホラー映画より断然怖いです。もしこのクラスの生徒だったら如何にして天才サイコパス教師から逃げ切れるのか方法を探してみてください。恐怖の脳トレができます。ちなみに携帯電話は使えません。海猿シリーズにおいて仙崎大輔を演じた伊藤英明。大勢を救ってきた彼の180度逆をいく殺戮シーンの衝撃だけじゃなく、共感力に欠けた人間のさりげない表情など細やかな演技にも注目。本作の舞台挨拶で彼はこう言った。「伊藤英明は嫌いになっても、『海猿』のことは嫌いにならないでください」と。
■吉原炎上(1987年)
いつの時代も女が集まるところは"炎上"するのかもしれない
日本映画界きっての鬼才、五社英雄監督作品。明治時代末期の吉原遊郭を舞台に力強く生きる女郎たちの生き様を描きます。病にひれ伏した女郎が死の間際にさえ、錯乱した状態で「ここ、噛んで~」と男を求め雄叫びをあげるシーンは兎に角強烈で、私はいまでも仕事で追い詰められた日になるとここが夢に現れます・・・。ドロドロの物語の中、美しいシーンも多く着飾った大女優の美貌や、遊郭の頂点を極めた遊女による花魁道中の凛とした鮮烈な美しさは瞼から離れません。どん底を知った人間の強さ。その"逞しさ"と"生きる意地"に、ハッとさせられることでしょう・・・。最近、ぼーっと生きていたかもしれない・・・と自分を戒めたいという方も是非。
■二重生活(2015年)
人間関係を円滑にするために必要なもの。それは、秘密。
修士論文の課題で無作為に選んだ相手に対して、尾行を始めることになった女学生が対象となる人物の日常生活に徐々にのめりこんでいく様を描く。探偵学校を卒業した私は、実際に尾行実習を経験したことがありますが、女学生が準備を全くせずに始めたヒヤヒヤした尾行シーンから時折魅せるリアリティある尾行のカメラワークなど印象的でした。尾行を現実世界でやったら大変なことになりますので、映画でしか味わえない疑似体験をさせてくれる作品といえます。実はSNSもそうですが、他人の生活を観察し始めるのってクセになってしまいますよね。思い当たる人いませんか?原作は直木賞作家の小池真理子。どことなく文学的な香りが漂う大人な映画。
動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で、「誰かに教えたくなるParavi映画祭り!」を展開中!
(C)2010「告白」製作委員会
(C)2000「バトル・ロワイアル」製作委員会
(C)2012「悪の教典」製作委員会
(C)東映
(C)2015「二重生活」フィルムパートナーズ
- 1