大手映画会社が作る娯楽作だけでなく、作家性の強いインディーズ映画、社会問題を描く社会派映画など、さまざまな作品が混在する現代の日本映画界。多くの才能あふれる俳優や監督たちが、日本映画を盛り上げています。
今回、動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で配信されている作品の中から私、映画ライター・松村知恵美がおすすめの作品を紹介。『万引き家族』で国際的に高い評価を受けた安藤サクラや、常に観客に鮮烈なメッセージを突きつけてくる園子温監督作品など、才能溢れる俳優や監督たちの作品を、ぜひご堪能ください。
■百円の恋(2014年)
安藤サクラの才能が溢れる、愛すべきダメ人間の物語
この作品の主人公は、深夜の百円ショップでバイトをするダメ女・一子。弁当屋を営む実家で引きこもっていた一子がバイトを始め、だんだんと変化していきます。近所のボクシングジムで練習する中年ボクサーに恋をし、彼に触発されてボクシングを始める様を描いています。安藤サクラ演じる一子は物語の前半はとにかく自堕落でイタい女ですが、恋を経験してボクシングに目覚め、劇的に変化していきます。前半のイタい女っぷりから、後半のボクサーっぷりまで、肉体的にも精神的にもものすごい変貌を遂げる一子を演じる安藤サクラの女優としての才能には、感嘆を禁じ得ません。安藤サクラの才能を堪能できる、愛すべき映画です。
■クライマーズ・ハイ(2008年)
日航機墜落事故を追う記者の葛藤。滝藤賢一の出世作
1985年8月12日、群馬県の御巣鷹山に乗客乗員524名を乗せた日航機が墜落しました。本作は群馬県の地方新聞社を舞台に、世界最大の飛行機事故を取材する記者たちの興奮状態を描いています。主人公は、この事故の全権デスクに指名された記者・悠木。悠木に嫉妬する上司、スクープにはやる部下、彼らの板挟みになりながらも、悠木は"クライマーズ・ハイ"の高揚感の中で自らの信念に従い、重要な決断を下すのですが...。悠木を演じる堤真一ほか、堺雅人、高嶋政宏ら脇を固める俳優陣の迫真の演技は圧巻の一言。また、事故現場の山中に足を踏み入れ、精神的に不安定になる若手記者を演じた滝藤賢一は、この作品で実力を認められ、人気俳優となりました。
■愛のむきだし(2008年)
園子温監督が贈る衝撃の愛の形。満島ひかりにも注目!
盗撮。聖母マリア。家族。パンチラ。信仰。欲望。愛。さまざまな要素が不思議に絡まり合い、怒涛の大団円へと向かって突き進むパワーあふれる映画『愛のむきだし』。主人公は盗撮に熱中する高校生・ユウ。牧師である父親に懺悔をするために盗撮を始めます。やがて理想の少女・ヨーコと出会いますが、彼女は父親の再婚相手の連れ子でした。さらにある新興宗教団体の幹部が、ユウの家族を洗脳していき...。盗撮に熱中する高校生を演じるAAAの西島隆弘は、"女囚さそり"をイメージした女装を披露しています。パンツ全開でアクションを披露する満島ひかり、謎の宗教団体幹部を演じる安藤サクラらが見せる人間のエゴにあふれた演技も見逃せません。
■探偵はBARにいる(2011年)
大泉洋&松田龍平のコンビが見せる、現代の探偵物語
札幌・ススキノを舞台に活躍する探偵と、その相棒・高田の活躍を描く「探偵はBARにいる」シリーズの第一作。携帯電話は持たず、連絡はススキノのバーの電話のみ...と、一見ハードボイルドを装いながらも、コミカルかつテンポよく物語が進んでいきます。大泉洋演じる探偵と、松田龍平演じる高田のコンビネーションも最高。高田のポンコツ愛車をめぐるやりとりなど、この二人ならではの絶妙な間で観客を笑わせてくれます。新たな名探偵コンビの探偵と言えるでしょう。東映の社員監督として活躍し「相棒」シリーズなどを手がけてきた橋本一監督がいぶし銀の職人技を見せる、現代の娯楽探偵映画です。
■映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ(2017年)
最果タヒの詩集を映画化した、石井裕也監督の映像詩
最果タヒの詩集を原作に、都会に生きる二人の若者の姿を石井裕也監督が描いたのが本作。主人公は、大学を卒業して建築現場で日雇い労働をする慎二と、昼間は看護師・夜はガールズバーで働く美香の二人。池松壮亮と石橋静河の二人が、東京の街で出会い、不器用に言葉を交わし合いながらお互いの距離を少しずつ縮めていく様子が描かれています。世界から自分だけが疎外されているような若者の孤独感や、それでもつながりを求めようとする焦燥感を、必死で吐き出されるようないくつもの言葉とともに、鮮やかな夜の景色を通して描いています。2020年を前に急速に変貌していく都市・東京の街の風景を記録する、鮮烈な印象を残す意欲作です。
動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で、「誰かに教えたくなるParavi映画祭り!」を展開中!
(C)2014東映ビデオ
(C)2008「クライマーズ・ハイ」フィルム・パートナーズ
(C)「愛のむきだし」フィルムパートナーズ
(C)2011「探偵はBARにいる」製作委員会
(C)2017「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」製作委員会
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