原作・寺嶋裕二による、王道にして斬新、感動と興奮の高校野球漫画として大人気の『ダイヤのA』(講談社)。現在も続編となる『ダイヤのA actⅡ』が週刊少年マガジンにて大好評連載中だ。アニメは2013年に『ダイヤのA』(以下、1stシーズン)、2016年から『ダイヤのA -SECOND SEASON-』(以下、2ndシーズン)として放送されて好評を博し、そして新作アニメとして『ダイヤのA actⅡ』(以下、actⅡ)がついに4月よりテレビ東京系列にて放送スタート、絶賛放送中となっている。

東京の強豪・青道高校野球部を舞台に、主人公・沢村栄純ら熱い高校球児たちの成長と甲子園出場を目指した戦いを描く本作。インタビュー後編となる今回は、青道の正捕手として、そして高校2年の秋からはキャプテンとしてもチームを引っ張る御幸一也を演じる声優・櫻井孝宏に、思い出の名場面やアフレコ現場の雰囲気などを語ってもらった。また、このインタビュー映像は「もっと知りたい!ダイヤのA 御幸一也役・櫻井孝宏編」として動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で配信中だ。

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――Paraviでも『ダイヤのA』のアーカイブ配信が始まっているのですが、1stシーズンと2ndシーズンを振り返ってベスト場面を挙げるとするとどれになりますか?

2ndシーズンで沢村がチェンジアップを投げた王谷高校との試合がすごく好きで印象的でした。「あの沢村がチェンジアップを投げた・・・」という感じで、あの場面のカットも覚えていますね。すごく大きな成長を感じました。ずっと追いかけていたからこそ、そして僕はキャッチャーの御幸役だからこそ、思いはひとしおなのかもしれないですけど、あれはもう忘れられないですね。しかもチェンジアップというのがいいですよね。どう曲がるか分からないけれど、無限の可能性を感じる沢村のクセ球に加えて、新たに勝ち取ったチェンジアップという球種。それが決まったあのシーンは感動的でしたね。

それと、御幸が自分はキャプテンに向いてないとぼやくシーンです。倉持と前園の前でぐずるシーンは、なんか可愛いなと(笑)。あの2人だからというのもあるんでしょうけど、あのシーンはお芝居をする上で、すごく大きなヒントになるシーンでしたね。隠しているわけじゃないんですけど、腹の底を簡単に見せないような人なので、ああいう子どもっぽい、ガキっぽい姿が見られたあのシーンは印象的でした。

――その"ガキっぽい"というところが高校生らしさなのかなという感じもします。

そうですね。あれ以降、そういうところはないですしね。時間が経って大人っぽくも見えてきていますけど、あの瞬間は本当にただの高校生の男の子みたいな姿だったので目に焼き付いています。

――過去シリーズも含めて好きなキャラクターや気になるキャラクターは誰ですか?

やっぱり栄純ですね。読者としても視聴者としても、ずっと栄純を追っかけているので。栄純はすごいピッチャーになりつつありますからね。それと、薬師高校の雷市がちょっと足踏みしているようなところがあって、これは意外だなと思いました。天性の感覚でやっていたけど、そこにロジックが入ってくると分かんなくなっちゃうというか。今までただ打つことだけに集中していたのが、人の気持ちに触れて色々な人たちの思いが乗っかってきて、感覚が変わってきちゃう。今まで知っていた自分とは変わってきて、その小さな誤差で苦汁をなめたりなんていうのが描かれていて面白いなと思います。

――雷市が勝負の怖さを知ってしまうというところですよね。

そうです。今まで無邪気にやっていたのに怖くなっちゃうんですよね。子どもから子どもじゃなくなっていく。そういうグラデーションを、野球を通してヒューマンな部分として丁寧に描いているのが『ダイヤのA』のすごいところだなと思います。

――『ダイヤのA』のイベントやプロ野球の始球式でグラウンドに立たれていましたが、野球経験はありますか?

小学校時代、学区で夏休みになると何丁目何区みたいなので野球大会が開催されていたんですよ。それで何年かは夏休みになると出場していました。ちょっとクラブ活動っぽいところもありましたけど、半分遊びみたいな感じでやっていましたね。あんまり上手くなかったのでポジションはファーストでした。昔は草野球だと、あんまり上手くない人ってファーストかライトを守らされることが多かったじゃないですか(笑)。今はもっと野球論はちゃんと整理されていますから全然違いますけどね。ショートやセカンドとか、あんなの無理だと思って見ていましたよ(笑)。

――実際にやりたかったポジションはありましたか?

その当時はあんまり主体性がなかったので、「球が来るな!」と思いながら守備についていました(笑)。

――櫻井さん自身がキャッチャーになったとしたら、沢村と降谷のどちらとバッテリーを組みたいですか?

それ聞いちゃいますか(笑)。始球式でトークショーをやらせていただいた時に、あっさり「沢村」って答えているんですけどね(笑)。

――そこからactⅡとなって変化はありますか?

結局、2人を天秤にかけても51対49ぐらいの差にしかならないんですよ。栄純を追っかけているところがあるからなんですけど、actⅡで栄純の変化球にナンバーズというのが出てくるじゃないですか。クセ球の延長かもしれませんが、七色どころかそれ以上の変化球みたいな。あれがワクワクするんですよね。光舟や由井が御幸のキャッチング技術を評価するくらいに沢村の球は捕りにくい。そんな栄純が成長していくには、周囲の人たちの手助けなしでは成り立たないんですね。だけど、沢村のピッチャーとしての底知れぬ素質は見ていてワクワクするんですよ。

一方で、降谷は自問自答のような「己に勝つ」みたいなところで立ち向かっていて、描かれ方が沢村とはちょっと違うんです。降谷のほうは、女の子がドキドキしているんじゃないかな(笑)。だから、降谷には女の子を任せて、僕は沢村ですね(笑)。いや、本当は両方ですよ、本当はね(笑)。こういう場だとね、答えなきゃいけないので。ファンの方は分かって下さい(笑)。

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――『ダイヤのA』は非常にリアリティのある作品ですが、その中でもナンバーズはリアリティがありつつも、ちょっと魔球チックなのが面白いですよね。

そうですよね。この"ナンバーズ"というネーミングが絶妙ですよね。ギリギリ現実感があるんですよ。実際にプロ野球の選手がマネしないかな。大谷選手の二刀流みたいな感じで、ナンバーズみたいなね。そんなプロ野球選手がいつか出てきてもおかしくないですよね。

――『ダイヤのA』を見ている小中学生の選手たちが真似して、いつか・・・みたいな。

出てきそうで、ワクワクしますよね。そのパイオニアが『ダイヤのA』ということで、この作品があればこそみたいな。可能性を感じますよ。

――プロ野球選手の中にも好きな漫画に『ダイヤのA』を挙げている方がいますからね。福岡ソフトバンクホークスの柳田選手は轟雷市が好きだそうです。

ギータ(※柳田選手のニックネーム)ですよね。しかも、始球式のイベントで轟雷市役の小野賢章くんが柳田選手にボールを投げたという。いいなぁ。だって、ギータだよ(笑)。漫画の帯にも柳田選手がコメントをしていらっしゃるんですけど、そういうのを見ると、やっぱりこの作品の影響力というのはすごいなと思います。他の野球作品も素晴らしいですけど、自分が関わっているからか、どうしてもひいきにしてしまう部分もありますが、やっぱり面白いですよ。僕ら大人が観ていても、読んでいても、めちゃくちゃ面白くて楽しめる作品だなと思います。

――非常に多くのキャストが一度にアフレコに参加されていますが、他のアニメの収録との違いやアフレコで印象的なことはありましたか?

男性が多いので、ちょっと部活チックにはなりますね。それを察してか、女性陣はわりとロビーのほうに行ってしまって、男性陣が騒いでいるみたいな(笑)。少し年齢差がありますけど、僕は気楽ですね。僕は年齢的には上から数えたほうが早いので(笑)。積極的に若い役者さんとおしゃべりするということはないですけど、若い子がワーッと楽しそうに作品のことを話しているのを見ていると、なんか縁側のおじいちゃんの気持ちになります(笑)。「いいぞ、いいぞ。作品を楽しむんじゃ」みたいな。そんな気分でいます(笑)。

――御幸たちのように上級生みたいな立場ですね(笑)。

そうですね、もはや片岡監督や落合コーチぐらいの気持ちですかね(笑)。落合コーチの心の声も面白いですよね。情に左右されなくて、わりと割り切りがすごいじゃないですか。片岡監督は情が厚い人なんだけど、決断をしなければいけない人として描かれていますよね。落合コーチは勝つためにこれはいる、これはいらないという、足し算・引き算がすごくクールで、それもまた面白いなと思います。まあ、僕はキャストのみんなをそういう風には見ていませんけどね(笑)。でも、やっぱり若い子のお芝居を見るのは面白くて刺激になります。

――御幸というみんなを引っ張るキャプテン役ですが、櫻井さん自身もアフレコでみんなを引っ張ったりするようなことはありますか?

全然ないです(笑)。中心に立っているのは逢坂くんですかね。僕はちょっとちゃちゃを入れたり、リアクションの大きい後輩をイジったりして楽しんでいます(笑)。

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――そういうところは御幸っぽいですね(笑)。

アフレコの現場でも「そういうところ、御幸っぽいですよね」って、すごく嫌そうな顔で言われます(笑)。

――その嫌そうな顔をされると、余計にうれしくなったりするみたいな(笑)。

もう僕は満面の笑みですね(笑)。「なんだ、もっとイジってほしいのか」みたいなフリにしか見えない(笑)。

――最後に、actⅡのアニメ放送を楽しんでいるファンの方へメッセージをお願いします。

今は「カープ女子」なんて言葉もあって、わりと女性がプロ野球を観戦しに行ったり、高校野球の面白さに気付くチャンスがあったりする時代になってきていると思います。なので、この作品を通して野球のことを好きになってもらえたら大成功かなと思います。純粋にこの作品を楽しんでいただいて、彼らがどう生きていくのか、どういう野球人生を歩むのかを見届けてもらえたら本当にうれしいです。興味を持っている方が周りにいるようでしたらぜひとも後押しをしてください。応援してくださっている皆さんはこれからも何卒我々とともに作品を楽しんでいただければと思います。今後とも『ダイヤのA actⅡ』をぜひともよろしくお願いいたします。

『ダイヤのA actⅡ』はテレビ東京系列にて毎週火曜日 夕方5:55から、BSテレ東にて毎週木曜日 深夜0:30から放送中。

(C)寺嶋裕二・講談社/「ダイヤのA actⅡ」製作委員会・テレビ東京