TBSで毎週火曜夜10:00から放送中のドラマ『Heaven?~ご苦楽レストラン~』。1999年から2003年まで「週刊スピリッツ」(小学館)にて連載された、佐々木倫子による漫画「Heaven? ご苦楽レストラン」が原作で、「ロワン・ディシー<この世の果て>」という名のフレンチレストランを舞台に、風変わりなオーナー・黒須仮名子と個性的な従業員たちとの間で繰り広げられる、"至極のフレンチレストランコメディー"を展開している。
動画配信サービス「Paravi(パラビ)」でもスピンオフドラマが配信され注目を集めている本作。主人公・仮名子を演じる石原さとみが、役作りや共演者の印象、撮影期間中に幸せを感じる瞬間などを語ってくれた。
――約2か月ほど撮影をしてきて、現場はいかがでしょうか?
楽しく撮影をしているのですが、どういう部分で仮名子という役の幅を見せればいいのかというのを考えながらやっています。まだ正直あまり分からなくて、撮影した後に編集でいろんなことをしてくださってこの作品が出来上がっている気がするというか。1話を見て、こういう感じになるんだなということが分かった感じです。
どこまでやっていいのか探ってきた1か月半だったので、自分たちが想像していたより攻めていいんだということが分かってよかったです。気が付けば1か月半、ずっと笑っていますね。共演者同士でずっとしゃべっています。
――原作を実写でやる楽しさはどういうところに感じますか?
原作の仮名子はものすごく魅力的なのですが、今回はカトラリーをガンガンやって「まだか!」とやったりするガサツな子にはしたくないということを言われて、漫画をそのまま実写化するのとは違う部分があって、食べる時はとにかく綺麗に食べてほしいということと、マナーをしっかりしていてほしいということは言われました。ちょっとした優しさとユーモアさと断言する力強さと、とにかく生命力みたいなものを大事にと言われたし自分でもそう思うので、そこを大事にしながら演じています。
――仮名子は自分らしさ全開キャラですが、石原さんが思うご自身の"自分らしさ"とはなんでしょうか?
私は自分に飽きたくなくて、変わりたいと思っているのでそういう欲ですかね。自分に飽きないための欲は強いと思います。楽屋でご飯を炊くというのも「一度炊いたのと同じレシピは作らない」とか「ちょっと変えてみよう」「お米自体変えてみようとか」とかいろいろ挑戦しています。
精神的な面も、「こういう自分が好きじゃないからこういう風になりたい」とか「この時にこう言ってしまって後悔したから次はこういう言葉をかけてみよう」「このメイク飽きたから、このメイクにしてみよう」とか。友情は財産だから一生変わらないと思うんですけど、人以外の変化というものはすごく求めているものである気がします。
――メイクや衣装などはアイデアを出されたりしているんでしょうか?
はい。原作を読んだら、仮名子はすごい服と髪型をしているんです。10年以上前の作品なので、「あ、この時のトレンドは確かにそうだったな」と思うんですけど、「今の時代でやるならどうするかな」と思って提案しました。まずみんながスーツとかを着ている中で原色を使いたいなという話をしました。なじんじゃいけないと思うので、はっきりとした色で黒はあまり控えめにしながら、来た瞬間に、「来た!」ってわかるような、これが一番地味だっというくらいの色にしようという話をしました。
あと、食べるシーンがあるので顔は出したいと思っていて、髪をずっと伸ばしていたので、「このスタイリングのまま綺麗に食べられるからこうしよう」とか。これまでにやっていなくてやりたかったメイクとか衣装、髪型で、パンチのあるものにしたいというのをお伝えしました。
――撮影中、体力作りで心がけていることはありますか?
最近は楽屋でごはんを炊いています。炊飯器で出来るレシピを色々検索して、玄米や黒米などを使ったり、ダシで炊いてみたり。今日の献立を考えるのが楽しいですね。今日はバスマティライスを炊いて、スパイスを入れて食べたんですけどそれがものすごくおいしくて、「おいしい・・・!」って感じた瞬間は「うまくできた!」ってすごい幸せになります。
本当に朝から晩までこもりっきりでそれが何日も続くので、主食となるものがおいしくて健康的になったらいいなと思って。これをやりだしてから眠くなくなったり、健康的になったり、撮影しているのに健康になるのは幸せだなと思いながらやっています。体力も体調も精神的な面もすごいいい方向に変わりました。
――『アンナチュラル』(TBS)など食べるシーンが印象的な作品があったかなと思うのですが、今作では"食"についてどう捉えていますか?
プロデューサーさんと話をした時に、仮名子がなぜこのレストランを作りたいのかという気持ちの根本には、フレンチ料理が大好きでおいしい料理を家の近くで食べたい、すぐに 好き放題に食べられるようになりたい。だからこのレストランを作って、好きな従業員を集めて、おいしいフレンチ料理を毎日食べたいというところから始まっているので、毎話食べるシーンを必ず入れるということと、おいしく食べるシーンを絶対入れるということは話しました。
食に対しての貪欲さみたいなものをもう少し見せられたらいいんだけどなと思いながら、食べ物を食べる時だけ幸せそうな子というのを意識しました。怒っていても、おいしいものを食べた瞬間に幸せになるというのだけはしっかりと表現したいなと思って演じています。
――今回は"食"を提供する仕事をする役ですが、そういうお仕事へのご印象は?
幸せを提供する場、すごく人の人生を豊かにする場所や時間って、すごく大事なものだと思うんです。自分のお金や時間、心に余裕が出来た時にそれをより豊かにするための場所って必要不可欠な場所だなと。エンタメもそうだと思うんです。家に帰ってきてテレビをつけた時になんか笑えたり、ほっとしたり、ちょっとだけ心が豊かになったり持ち上がったり、言葉では表せないような部分もある仕事だなと。人生の時間を豊かにする仕事っていうのは私の中ではかけがえのないものだなと思います。
――現場のムードメーカーは勝村政信さんと志尊淳さんだとか。印象的だったエピソードを教えてください。
印象に残っているのは勝村さんによる"志尊さんいじり"ですかね。延々続く気がします(笑)。でも、テスト中とかに一番ツボにはまるのは確実に岸部(一徳)さんです。岸部さんの芝居と笑いで、みんなつられて笑っちゃうというのが一番多い気がします。すごく面白いんです。
志尊さんの芝居で岸部さんがこらえきれなくて笑っちゃうこともあるし、岸部さんの役が真面目にやっていることが異常に面白くて、志尊さんが笑いをこらえられなくて笑っちゃって皆に伝染するみたいなことがすごいいっぱいあります(笑)。笑いがこらえきれないっていう経験をこんなにするとは思わなかったです。
スタッフさんは女性が多いんですけど、キャストチームでは女性一人なんです。ラブストーリーは1ミリも入ってこない物語なので、女性らしくいなくて済むというか・・・人間としての付き合いみたいな感じで、誰も異性として見ていないというとても貴重な現場というか(笑)。女性らしくいなくて済むのですごい楽です(笑)。
――仮名子とご自身で似ているところはありますか?
私この役をやって、切り替え力がつきました。仮名子と川合くんはすごく切り替えの早い役なんです。川合くんはみんながざわざわしていても「まぁ今そんなこと考えても意味ないじゃん!」と言うタイプで、仮名子も何かあっても「うん、お腹がすいたからもう行こう」みたいな。何かが起きたとしても自分にとってプラスになるように全部切り替えられる力をすごい持っているので、その力ってすごい必要だなって思いました。元々切り替え力が低いわけではなかったんですけど、仮名子を演じたことでもっと早く切り替わるようになって、落ち込みすぎなくなりました。
――視聴者へメッセージをお願いします。
このドラマはメッセージ性はあまり強くないんです(笑)。ラブストーリーも1ミリもないし。でも見ていて平和な気持ちになります。悪い人が1人も出てこないし、何かが欠けている人がいっぱい集まっているのに成立してしまうこの感じは見ていて気持ちいい気がすると思います。
「自分は変わらなくていいんだ」「良いところだけ伸ばせばいいんだ」「悪いところも愛されるって幸せだな」「何かがあっても許して諦観の笑みを携えたら意外と上手くスムーズにいくことがあるかも」という風に思えるようになって、平和な気持ちになると思います。
今の時代に合った、ただつけて何も考えずに見られて、ただただ明るい気持ちになれる。平和な気持ちになって、一瞬だけ嫌なことを忘れられたりできるかと。ベテランの先輩と一緒に、全く重くない作品をやるっていうのはとても時代を象徴している気がします。「こういうのもいいんだよ」っていうものになったらいいなと思います。
【番組情報】
『Heaven?~ご苦楽レストラン~』
毎週火曜 夜10:00-10:54
放送終了後に動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で本編とスピンオフドラマも配信中。
(C)TBS
撮影:小澤太一
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