独自の目線や強いこだわりを持って世界や日本を巡る旅人="クレイジージャーニー"の旅の様子をVTRで紹介し、松本人志、小池栄子、設楽統のMC3人が、驚きの体験談を聞く紀行バラエティー『クレイジージャーニー』(TBS)。動画配信サービス「Paravi(パラビ)」では現在、過去の傑作を続々配信中。8月からは、「メキシコ麻薬戦争 後編」(初回放送・2016年5月5日)が配信されている。

番組屈指の衝撃回と名高いこの「メキシコ麻薬戦争」のほか、フィリピン・マニラのトンド地区に広がる"東洋一のスラム街"や、アフリカのヴィクトリア湖に浮かぶ、島が丸ごとスラムのミギンゴ島など世界有数の危険地帯に赴き、その実態に果敢に斬り込んでいる旅人が、ジャーナリストの丸山ゴンザレス氏。パイロット特番から出演し、今や『クレイジージャーニー』という番組の象徴的存在となった丸山氏に、「メキシコ麻薬戦争」をはじめとする取材旅行の思い出や、ジャーナリストとしての仕事への向き合い方などを聞いた。

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――『クレイジージャーニー』が始まるはるか以前から、国内外の都市へ出向き、犯罪の実態やスラム街の実情を取材し続けている丸山さんですが、そうした"都市の闇"に惹かれる理由は?

都市というのは、市井の人々だけでなく、ビジネスマンや犯罪者だったり、それに関わる人がいて成り立つものじゃないですか。繁華街があって、そこを仕切る人たちがいて、また、そこに集まる人たちを目当てにした商売の人たちがいて。いろんな面があって、それらが混ざり合って出来上がっている。そこが面白いんですよね。だから、インスタ映えする写真を見たり撮影するだけじゃ、その都市のことは何にも分からないんですよ(笑)。

――恐怖心よりも、好奇心の方が先に立つわけですか。

いや、そもそも(都市の闇は)怖くないと思うんですよ。皆さん、「怖い」という先入観があるのかもしれませんが、僕としては、あくまでも普通の分野として、普通の手順で取材している。実際、アポをいれるだけで、会ってくれて取材できることも多いですからね。

――取材されるときに、ご自身に課しているルールや決め事はありますか?

ありません。何にも課さない。課すと、ろくなことにならない。「こうしなければならない」というところにこだわると、絶対にミスが生まれますから。
僕の取材の仕方というのは、事前に「こうなんじゃないか」と仮説みたいなものを立てておいて、現場でそれをチェックしていく、というような検証作業なんですね。だから、そこで変な焦りが生まれないようにするためにも、こだわりは持たないようにしています。

――いわば、決め事を作らないことが唯一の決め事なんですね。

ええ、「ここに行かなかったら意味がないんだ」みたいな使命感もありませんし。さらに言えば、困っている人を助けようとか、何か問題を解決しようとか、そういうことも全くありません。極端な話、取材対象者が僕の目の前で命を落としたとしても、それは仕方がないと僕は思っています。なぜなら僕は、その人とは一切関係がないから。僕はただの取材者ですから。だから、現地の人とはプライベートな関わりや交流を極力持たないように、一線を引いています。もちろん、目の前で人が死んでしまったら、ひとりの人間として思うところはありますよ。でも、単なる善意で、誰かを救済しようなんてことは思わない。その関わりは絶対に中途半端になりますから。ただ、これはあくまで理想的な展開であって、人対人ですからね、現地の方と友達関係が生まれてきた場合、それは大事にしています。

――取材をする中で、達成感を得られる瞬間は? どんなときに「やった!」と思うのでしょうか。

現場では割とフラットなんです。だから取材しているときよりも、日本に帰ってきてから、取材してきたことを文章にまとめて、それを読み返して、「面白くなったな」って思えたときの方が達成感はあるかもしれませんね。僕はやっぱり物書きなので。

あと、現場で「やった!」と思うことがあるとすれば・・・強いて言うなら、「無事に終わった」という瞬間ですかね。特に空港に戻ってきたときに、「ああ、終わった~」って(笑)。

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――『クレイジージャーニー』の過去の回について、何かエピソードがあれば教えていただきたいのですが。

アフリカの回は、視聴者の皆さんには受けがいいようですね。これまでアフリカには、テレビで放送されたものでいうと、南アフリカ、ケニア、ナイジェリアに行ったんですが、どれも評判がよかったみたいです。

――現在パラビで配信されているもので、アフリカを取材された回は、「世界最大級のキベラスラムに潜入」、「世界一危険&島まるごとスラム・ミギンゴ島に潜入」があります。

確かにミギンゴ島なんかは、画的なインパクトがあって面白かったと思いますね。普通の住環境じゃない所に建物を建てているから、我々の常識では考えられないような家並みで。そもそも、ミギンゴ島は、単純にビジュアルが面白いから行ってみたいと思ったのが始まりなんですよ。

ただ、僕個人の感想を言わせていただくと、アフリカは、そんなに好きじゃないんです(笑)。何よりもまず、遠い(笑)。機内でお尻が痛くなる。「ここへ行こう」と決めるのは自分なんですけど、決めた後で嫌になるっていう。だからいつも、「アフリカには二度と来ねえ!」と思ってるんですけど・・・なんか行っちゃうんですよねぇ(笑)。案外好きなのかもしれないですね。

やっぱり不思議な現象に出くわしやすいんですよ、アフリカって。普通じゃ考えられないことがどんどん出てくるから、惹かれてしまう。毎回取材が終わると、「面白かったな」「貴重な体験ができたな」と思いますから。だから、もともと僕の主戦場はアメリカとアジアなんですけど、ごくたまに「アフリカに行ってみよう」って、ふと魔が差すときがあって。で、そういうときに限って、『クレイジージャーニー』がスッと近寄ってくるんです(笑)。

――では、パラビで配信されている中で、特に印象に残っている場所は?

一番印象に残っているのはやっぱり、メキシコの麻薬戦争ですね。『クレイジージャーニー』のスタッフの人がついてきたわけですが、良くも悪くも、テレビの人は素人なので、メキシコ麻薬戦争の本当の恐ろしさは伝わっていなかった。だから実現できたんだと思うんですね。これがもし、通信社とか別の報道機関がバックアップしての取材だったら、たぶん取材OKを出さなかったと思います。その意味では、本当に奇跡的な巡り合わせで実現できた取材だと思っていて。だから、このメキシコ麻薬戦争の取材で、僕の中ではひとつ完結したというか。正直、今後もうテレビはやらなくてもいいかなって思ったくらい。その上で、無事日本に帰ってこられて、よかったなと思います。

――「メキシコ麻薬戦争」では、丸山さんはメキシコ中西部のミチョアカン州へ赴き、麻薬カルテルに立ち向かうべく市民が結成した自警団に密着取材をされて。街の治安が回復しつつあると言われる中、カルテルvs自警団という単純な対立構図では説明しきれない、メキシコ麻薬戦争の複雑な実態に踏み込んでいました。

メキシコ麻薬戦争自体は、いろんなメディアで、いろんなジャーナリストが、その構造を解説しています。だから、それを改めて僕がトレースする必要はないだろうと。だったら、その構造を踏まえて、じゃあどこに行けば実際にその戦争を味わえるのか。それを出発点として始まった取材だったんです。

――そんな中、新たな発見はありましたか?

新たな発見というより、「これが麻薬戦争だ」という雰囲気を全身で、なおかつ短期間に感じることができたことが、すごくよかったと思います。軍隊が街に張り出してくるとか、カルテルが報復活動として車両を燃やすとか、銃撃戦が起きるとか、そういったことが実際に起こっていくわけです。あり得ないことを目の当たりにして、まるで映画を見ているような感覚でした。すごく面白かったですね。だからこそ、僕の中では集大成でもあり、あんな取材はもう二度とできないだろうなと思っています。

(後編へつづく)

◆番組情報
『クレイジージャーニー』
毎週水曜夜11:56からTBSで放送
動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で過去の放送回を配信中
(C)TBS