原作・寺嶋裕二による、王道にして斬新、感動と興奮の高校野球漫画として大人気の『ダイヤのA』(講談社)。現在も続編となる『ダイヤのA actII』が週刊少年マガジンにて大好評連載中だ。アニメは2013年に『ダイヤのA』(以下、1stシーズン)、2016年から『ダイヤのA -SECOND SEASON-』(以下、2ndシーズン)として放送されて好評を博し、そして新作アニメとして『ダイヤのA actII』(以下、actII)がついに4月よりテレビ東京にて放送スタートし、絶賛放送中となっている。

東京の強豪・青道高校野球部を舞台に、主人公・沢村栄純ら熱い高校球児たちの成長と甲子園出場を目指した戦いを描く本作。今回は、青道の正捕手として、そして高校2年の秋からはキャプテンとしてもチームを引っ張る御幸一也を演じる声優・櫻井孝宏にactIIの見どころや演じる御幸の魅力などを語ってもらった。また、このインタビュー映像は「もっと知りたい!ダイヤのA 御幸一也役・櫻井孝宏編」として動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で配信中だ。

――2ndシーズンから約3年、actIIがついに始まりましたが、今のお気持ちは?

actIIの放送が始まってもう結構経つので、馴染んではいるんですけど、待ちに待ったactIIでしたね。2ndシーズン放送終了後も、逢坂(良太)くんとは『ダイヤのA』関連のお仕事をさせて頂くこともあって、actIIのアニメ化についても発表前から当然知っていたので、「早く始まるといいね」とか、「ついに始まるね」とか話していました。そういう前向きな夢みたいなものを持ってこの瞬間を待っていたので、すごくうれしいですね。一つの作品を長く続けられるというのは僕ら声優にしてみると一番幸せなことだなと思っているので、actIIが始まって本当にうれしいです。

――発表前にその情報を知っていたということは、早く言いたくてしょうがなかったんじゃないでしょうか?

もうラジオなどで言ってやろうかと思いましたよ。それは冗談ですけど(笑)。ウズウズしていました。それだけ待っていて下さる皆さんの声なんかもチラホラ聞こえてきて、リアクションもあったので、(解禁を)今か今かと待っておりました。

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――約3年ぶりとなったactII最初のアフレコの時はどんな思いがありましたか?

引退組と新しく入ってくる新1年生たちの入れ替わりがあって、ちょっとメンバーが違ったので、現場の雰囲気は少しフレッシュな感じがありましたね。その違いはありましたけど、あまりタイムラグというか、懐かしいみたいな気持ちはなかったです。

――actIIの第1話が回想シーンからいきなり甲子園の戦いに入るというところからも、そういう気持ちになったのでしょうか?

そうでしたね。否が応でもスイッチを入れた状態で始まるというか、緊張感あるスタートだったので、話の見せ方にも我々は乗せられたような。そういう逢坂良太の背中を見ながら、「我々はまた始まったんだな・・・」と思っていました。

――チームメートとも言うべき声優陣との収録現場での再会はどうでしたか?

これがですね、感動のとか、抱き合って喜ぶみたいなことは一切なく、わりと淡々とシュッと始まりましたね。それだけ作品への理解も当然ありますし、新しいメンバーはまたそこから積み上げていくことにはなるんですけど、我々は前提があったので大騒ぎするというよりは一気に入っていったという感じでした。どちらかというと、そのまま地続きで始まったような、「先週も収録していたよね」ぐらいな(笑)。そんなスタートでしたね。

――ブランクは全く感じませんでしたか?

僕は感じなかったですね。ただ、年はとっちゃったので、高校生ができるようにお芝居していましたけど(笑)。

――actII全体の見どころはどんなところですか?

やはり、全国の強豪が一気にズラッと出てくるという、そういうまた大きな舞台に彼らは挑んでいくんだなという世界の広がりもそうなんですけど、もう一つは新1年生が入ってきたことによる、青道高校野球部内のドラマもまた新しくそこで始まったので、それも大きいんじゃないかと思いますね。僕も原作とアニメを追いかけながらですけど、新1年生は「大豊作じゃないの、これ?」ってぐらいですよね(笑)。

新1年生はすごいポテンシャルを感じるメンバーばかりだから、うかうかしていると御幸は光舟あたりにポジション取られちゃうかもしれない(笑)。そういう可能性を感じるわけなんですよ。誰もが「御幸のあとって光舟なのかな?」とか、上級生になって先を感じるようになりましたね。今までは先輩に寄っかかれるところもありましたけど、御幸がキャプテンになって、「キャプテンに向いていない」とぼやいて(笑)。

結局、御幸、倉持、前園と3人で、それぞれの個性を一つにして新しいキャプテンというか、チームのまとめ役というか、そういう姿が前のシーズンで垣間見えたんですよね。だけど、新しい青道高校野球部になった矢先にまた新しい血が入ってくることによって、活性化しつつ部内での競争が生まれるというのが、僕はどちらかというと外に目が向いていたので、「そうか、こういうことが起こるんだな」と面白く見ていますね。

――新1年生が加入する前までキャッチャーは御幸ほぼ1人みたいな形ですよね。

そうですね、僕はちょっとあぐらをかいていた頃もあったんですけど(笑)。でも、少し色の違う、またこういうキャッチャーの姿というか、こういう才能もあるんだなというのは彼を見て思いましたね。

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――光舟と由井という2人はタイプが全く違うキャッチャーで、また御幸とも違いますよね。

「寺嶋先生はなんでキャッチャーを2人も追加したの?」みたいな(笑)。でも、そこには色々なお考えがあってのことだと思いますし、それによって見ている我々、読んでいる我々が色々なことを考えるようになるじゃないですか。「どんなドラマが巻き起こるんだろう?」と。駆け引きと言ってしまうと違うかもしれませんが、先生と作品を作っている感じというか。読者であり、視聴者を巻き込んでいっているような感じがactIIからはより強く感じられますね。

――actIIにおける御幸の見どころはどんなところですか?

御幸ってモノローグが結構注目ポイントだと思うんですよ。試合中もそうですけど、いつも彼は周りを見ていて、キャッチャーというポジションならではだと思うんです。根は熱いんですが、冷静に見つめながら分析・研究をして日々を過ごしているんですよね。これって前シーズンもそうだったんですけど、彼が何を思っていて、どういう答えを求めていて、その先に何を創り上げようとしているのかというのがモノローグの中にたくさん散りばめられていると思うんですよ。そこを見て頂けると、あまり野球のことを知らない人でも「そうか、こういう風にキャッチャーって考えて、ある種タクトを振っているところもあるんだな」なんてことも分かってもらえるんじゃないでしょうか。ただ座って球を受けている人ではないというのが彼を追っかけていると分かると思います(笑)。

――御幸は普段周りの人と話す時は軽い感じで、あまり自分の心情をさらけ出さないキャラクターですよね。

そうですね、飄々とした感じですね。あんまり腹の底を見せないような、後輩をイジってゲラゲラ笑っているイメージですね。ただ、そこにもキャッチャーとしてのメンタリズムじゃないですけど、チームメートとのコミュニケーションや、試合や練習に活かせる何かがあるんじゃないかと思ったりします。

――モノローグと通常のシーンで何か違いを考えながら演技されているのですか?

状況にもよるんですけど、ここのモノローグは際立たせたいと思うと、いわゆるダイアローグのような普通のセリフよりもちょっと大きめな表現にしたりとか、セリフ単位でありますね。ピンチの場面、有利な場面、練習もそうですし、寮生活でのやり取りなんかでもここはすごく言いたいことなんだろうなと思うと、心の声でもクッキリ、ハッキリと伝えられるようにと思いながらやっています。

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――櫻井さんから見た御幸の魅力や、共感できるところを教えて下さい。

つきあいが長くなってきているので、もはや同じ考えでいるというか。部員たちのことも分かっていて、結構ピンチがチャンスだと思っていて、「今ここで、楽しまなきゃダメだろう」というように精神力が強くて、すごくタフな人で勝負師みたいな強さにカッコイイなと憧れますね。だから、そういう考え方ができるようになりたいとずっと思いながらお芝居をしています。なんとなくシンクロとかまで言っちゃうとおかしいですけど、同じように考えられるようになりたいと思いながらやっていますね。

――御幸は試合でもプレッシャーに押しつぶされるということがないキャラクターですよね。

そうですね。ちょっとバッティングにムラッ気はありますけどね(笑)。むしろプレッシャーがあるほうが、彼は力を出せるできるのかな。そういうシチュエーションのほうが集中力や、御幸の持っている野球力みたいなものが発揮されるのかなと思っています。それを徐々に自分でコントロールできるようになっている気がしますね。ここで1本が欲しいという時に打てるとか、ここで最高の球が欲しいという時に導きだせるような。それはまた投手との絆とか、そういう話になってきますけど、そういうすごい選手になっていると思います。

――2ndシーズンのアニメ放送から3年の間がありましたが、actIIで演じていてキャラクターの変化や難しさを感じるところはありますか?

ありますね。たぶん毎回変わっていっているんじゃないかなと思います。野球が大好きで、高校生活を野球に賭けているという彼の思いはぶれないところじゃないですか。でも野球は1人ではできなくてチームプレーだから、チームの中のドラマで彼はどんどん成長しているし、同時に大人になっていっているというか。でも、プロ球団からも話が来ているみたいなのもあって、彼の未来とかも考えると変化していかなきゃいけないですしね。今のままでも十分すごい選手なんだけど、この先を考えた時にもっと登っていかないといけないんでしょうし、ミリ単位でも変化や成長をし続けているんじゃないかとは思いますね。

――actIIのセンバツでも甲子園の観客の声で、御幸に対して「プロが注目している」みたいなセリフがありますよね。

視察じゃないですけど、そういうスカウトみたいな人たちがやっぱりいるんだなと。でも、彼はそれに対して媚びへつらおうとは思っていなくて、その辺はすごくクールですよね。彼の視界にはあまり入っていないとは思うんですけど、僕からするとプロのスカウトみたいな人が来るっていうのはやっぱりすごいなと思いますね。

――初めて御幸という役を演じられると知った時はどんな気持ちでしたか?

僕としてはポジション的にやりたい役だったので、うれしかったですね。アニメーションはいろんな世界を描けるもので、ファンタジーや冒険活劇もそうなんですけど、一つのジャンルとしてスポーツというものは昔から好きでしたし、僕は野球が好きなので。その野球のアニメーション作品で、土台となるようなキャラクターをやれるとなったことはすごくうれしかったです。

――増原監督のインタビューで聞いたのですが、原作の寺嶋先生が櫻井さんの声を聴いて、「御幸です」と即答されたそうですね。

これはもうありがたい話ですね。鶴の一声とでも言うんでしょうか、僕が言うことじゃないですけど(笑)。そうおっしゃって下さって、すごくありがたいなと思いましたね。

――逆に、増原監督は『ダイヤのA』の前に別作品で櫻井さんと一緒に仕事をされていたということもあって、推薦しづらかったというお話でした。

そうですね。そういう公明正大さは必要だと思うので、監督のバランス感覚は素晴らしいですね(笑)。

――御幸というキャラクターを演じる際に心がけていることや、気をつけていることはありますか?

あんまり軽くしたくはないんですけど、軽さが必要なんですよね。だから、彼の背負っているものと、彼にしか分からない野球への思いなんかもあるんですよ。それは栄純もそうですし、それぞれに用意されたドラマがあって、でもやっぱり御幸はキャプテンになって、一つスイッチが入ったような、そういう未来が用意されているんですよね。今後、上級生がいた頃のああいう柔らかさというか、軽さというのは消えはしないんですけど、少しずつより迫力のある選手として芯が通ったようなキャラクターに成長していくのかなと思います。actIIの収録に入って自分の中でもそういう情報があるのか、ちょっとシリアスめというか、そういうシチュエーションが怒濤の試合展開から入っているので、そういうのも手伝っているとは思います。

――御幸の回想シーンなどで少年時代の御幸も演じていますが、高校生との演じ分けで気をつけていることはありますか?

やはり幼いので、その年齢に見合ったニュアンスというか、気持ちが出せるようにと思っています。その辺の裁量は監督さんにお任せしていますけど、あんまり年寄りじみたりするといやじゃないですか(笑)。みずみずしさといいましょうか、そういうのが出るといいなと思っています。

(後編に続く)

(C)寺嶋裕二・講談社/「ダイヤのA actⅡ」製作委員会・テレビ東京