「フルーツバスケット」(原作・高屋奈月)は「花とゆめ」(白泉社)において1998年から2006年まで連載され、全世界でコミックス累計発行部数3000万部を超える大人気少女漫画。完全新キャスト&スタッフで全編アニメ化となり、2019年4月5日よりテレビ東京で放送がスタートした。動画配信サービス『Paravi』でも見逃し配信中だ。
今回は、Paravi独占配信の特別番組『もっと知りたい!フルーツバスケット』の撮影現場を取材し、草摩由希役の声優・島﨑信長と草摩夾役の声優・内田雄馬が出演決定時の心境や演じるキャラクター、収録現場などについてトークする模様をお届けします!!
――草摩由希役、草摩夾役として出演決定した時の心境を教えてください。
内田:そもそもですけど、信長さんは『フルーツバスケット』(以下、『フルバ』)という作品をご存じでしたか?
島﨑:名前しか知らなかった。すごく有名で愛されている作品だとは知っていたけど。
内田:僕もそうですね。名前はうかがっていましたけど、実際に原作を読んだことはなかったですし、以前にアニメ化されたものも見たことはなかったです。今回はオーディションをやるという話だったんですよね。
島﨑:オーディションの時に資料として原作を頂いたけど、読んじゃうよね。まず、原作が面白い。僕ら成人男性だと、そこまでたくさんの少女漫画に触れないでしょ?
内田:ないですね。
島﨑:実は雄馬くんって、少女漫画をすごく読んでいるとか?(笑)。
内田:僕はそんなタイプじゃなかったです(笑)。
島﨑:僕もどっちかというと少年誌を読んでいて、今は青年誌とかを読んでいるほうなんだけど、原作を読んで、「めっちゃ、いい話やん!」って思った。
内田:そうなんですよね。大人になって読みましたけど、大人でもいろいろ考えさせてくれる要素がたくさんあるので、この作品をやってみたいなと資料を頂いた段階で思いました。
島﨑:これを思春期の時に読んでいたら、感性とかも変わったのかなと思うよね。
内田:いろんなことを考える子供になれたでしょうね。
島﨑:いや、なれているよ!
内田:なれてますかね?
島﨑:自信持って! なれているからこの仕事をやれているんだよ!(笑)。実際に子供の時に読んでいたら、変化があって、引き出しがもうちょっと増えたかなとは思うよね。だから、今あらためてのアニメ化ということで、今の若い人に知ってもらえたりして、その子たちのこれからの人生だったり、そういうものに何かいい影響みたいなものがあったらいいなと、オーディションの時から妄想したりするわけですよ(笑)。まだ役が決まってもいないのにね(笑)。
内田:参加したら、そう思いますよね。
島﨑:そうやってモチベーションが高まって挑んだわけなんだけどね。夾に決まった時の連絡はどうだったの?
内田:僕の事務所のスタッフさんに『フルバ』のファンの方がいるんですよ。それで、普段だったら作品に決まった時って「内田さん、〇〇という作品、□□という役で決定です。よろしくお願いします」みたいにご連絡を頂くんです。だけど、今回は「内田さん! 夾くんですよ! 夾くんですから、お願いしますよ!」ってちょっと半ギレの連絡だったんですよ(笑)。「なんで半ギレなの?」と思いましたよ(笑)。
島﨑:ガチファンなんだね(笑)。
内田:ものすごく愛して頂いていたので、「本当に頼みますよ!」みたいな感じでご連絡を頂きました。本当に愛してもらっているんだなという感じがありましたね。
島﨑:そうじゃなきゃ今またアニメ化しないもんね。
内田:本当ですよ。今回は全編アニメ化ですから。それぐらい、「そこまで見たい。そこまで描きたい」という思いが制作側にもあるぐらいですから。でも、そういう気持ちが高まっている作品というのは、オーディションの段階でも感じていたので、それをやれるというのは幸せですよね。
島﨑:そうだよね。声優のオーディションって、わりと複数の役を受けさせて頂くことが多いじゃない。実は、僕も夾も受けていたんだけど、自分が一番フィーリングや考え方が近いなとか、なんか好きかもというのが由希だったんですよ。でも、由希はとても中性的なので、そんなに自分が得意なラインだと思っていなかったから、受かるなら由希ではないかなと思っていて、そうしたら由希だったんだよね(笑)。人から見られている自分と、自分で思っている自分って分かんないんもんだね。
内田:僕は信長さんの由希って分かりますけどね。僕が偉そうに言うことじゃないですけど。
島﨑:もっと言って!(笑)。自信持てるから、欲しい! もっと自信を持たせて(笑)。
内田:この先輩、欲しがりだな(笑)。
島﨑:(笑)。でも、オンエアが始まって、みなさんからいろんな声をいっぱいもらっているんですよね。それと、僕は青二プロダクションという事務所なんですけど、以前アニメ化した際の由希役が久川綾さんという、うちの事務所の大先輩だったんですよ。だから、なんか余計にね。もちろん、いつもしっかりやろうとは思っていますし、そこも良い意味で、変に背負い込むんじゃないけど、ちょっと背負ってというか、そんな感じでやれたらいいなと。プレッシャーを重荷じゃなくて、モチベーションにしてやりたいなと思いました。
内田:いいですね。いろんな思いがこの作品に入っていますね。
――今回のアニメ版の台本を読んだ時にどのように思われましたか?
島﨑:これ、みんなが思っていることだと思うんだけど、丁寧だよね。
内田:本当に丁寧ですよね。まず、原作の流れをかなり忠実にやっていると思うんですよね。心の流れというか、その積み重ねの形をしっかり丁寧に描いてくれていますよね。
島﨑:原作とかがあったとしてもアニメーションって尺が決まっているので、仕事上は間をどうしても詰めたりとか、間のあった流れの部分を詰めてというのがあったりするんですよね。その気持ちをお芝居でつなげるのが僕らの仕事の一つだと思うんですよ。でも、『フルバ』は気持ちの流れをアニメでもしっかりとやってくれているから、台本通りに演じればもう素晴らしいものになるんですよ。
内田:そうですよね。台本に書いてあることをちゃんと読み込んでお芝居をすれば、スッとつながっていく。
島﨑:むしろ、僕らがちゃんとついて行かなきゃいけないよね。
内田:すごく分かりやすいというか、心の中にキュッと入ってくる原作のパワーをすごくアニメーションとして入れ込んでくれているからこそ、楽しいですよね。
島﨑:間も良い感じにゆとりがあるというか、欲しい間があるよね。"お芝居も間が大事"なんて聞いたことある方もいらっしゃるかもしれませんけど、忙しいとか、逆に延びすぎとかじゃなくて、ちょうどいい間で毎回あるから、よりセリフや気持ちも入ってくるし、きっとご覧になっているみなさんもそうなんじゃないんですかね。
内田:言葉でちゃんと会話をつなげるという大切さみたいなものが今回の作品にはすごく詰まっていますよね。お芝居ってそういうもんだと思うんですけど、人との会話や誰かのことを受けて、影響されていきますよね。
島﨑:そうそう。『フルバ』って会話がしやすいよね。声優って台本を読みながらする仕事なので、完全にセリフを暗記して何回も繰り返して稽古を重ねてとかではなくて、その場の瞬発力だよね。だから、かみ合う、かみ合わないというのは刹那的なものがあるんだけど、『フルバ』の現場は毎回すごくかみ合う。
内田:明確にこの子がどこに行きたいのかとか、どういう事を考えているのかというのが、すごく丁寧に分かりやすく書いて頂いていますよね。作中の人たちがすごく葛藤したり、悩んでいたりしていると、それを一歩引いた視点から見る側は、まるで子供を見守るかのごとく、「そういうことで悩んでいるんだね」とか、「頑張れ!」みたいな気持ちになって入り込めるところがありますよね。
島﨑:応援しちゃうよね~。
内田:応援しちゃいますよね。
島﨑:これが世代によっても感想が違うんだろうなと思うよね。
内田:絶対そうですよね。
島﨑:僕らの年齢は、由希達より上だから応援する側に回ることが多いけど、同じぐらいの年齢の子からすると共感があるだろうね。
内田:共感はすごいと思いますよ。
島﨑:年齢が下の子だったら、こうなんだなと見上げるんだろうね。
内田:「そんなこと考えるんだ、大人って......」みたいなね。確かに下の子からの目線ってそうかもしれませんね。
島﨑:本当に家族と一緒に見て欲しい作品だよね。
内田:そうですね、家族と一緒に見てほしいですね。すごくたくさんテーマがありますからね。
――草摩由希、草摩夾というそれぞれ演じている役をどのように捉えていますか?
島﨑:由希は器用そうに見える不器用なんですよね。そこが好きなんですよ。由希って学園で王子様のような扱いを受けていて、人当たりが良くて、優しい王子様で、なんでもそつなくこなすように見えるんです。だけど、実は不器用なところが物理的にもあるんですけど、精神的にも不器用。外づらをうまくやれちゃうから、心の壁ができちゃうとか、裸で接することができない。そういうのがある子だなって思っていて、そこが結構好きなんですよ。僕も分かる部分があって、以前にお世話になったディレクターさんから「信長はよくしゃべる口下手だな」って言われたことがあって、そのとおりだなと思った。
内田:よくしゃべる口下手(笑)。
島﨑:どんどん言葉を重ねていったりとか、ワーッとしゃべるからこそ、本当のところが伝わりにくくなっちゃったりとか、逆にうまく伝えられていなかったりとかね。すごく寡黙な人がひと言言った時の破壊力って、すごいじゃない。説得力とか伝わる感じとか。それの逆というか(笑)。
内田:信長さんはすごくいろんなことを考えるんですよ。頭をとにかく巡らせていろんなことを考えて、それで周りを見ているし、気を使っていろんなことを考えてくれるからこそ、いろんなものが出てくるんですよ。そういうところが、やっぱり由希に近いですよね。いろんなことを考えちゃうんだと思うんです。
島﨑:それは思う。
内田:いっぱい考えちゃいますよね。いっぱい考えた結果、由希の場合は壁みたいなものを取り払えなかったり、そこにたぶん恐怖心だったり、いろんな思いがあると思うんですよね。普通に素直になれなかったりとか、いろんな要素があると思うんですけど、でも考えた結果、一番芯の部分というのを出し切れないみたいな(笑)。信長さんは、わりと僕らといる時はそういうのが出ているなと思いますよ(笑)。
島﨑:出ているね(笑)。そういうのを言われたのは5年前とかの話だけど、僕もだんだん心を開くようになってきてその過程を経験しているから、由希の過程もすごく分かる。今ちょっと心を開いている時とかすごく油断しているもんね、一緒にいる時とか。
内田:本当ですよ(笑)。
島﨑:一緒に遊びに行った時はひどかったもんね。「自由かっ!」みたいな(笑)。
内田:「出かけているのに寝るなんて、自由だな!」みたいな(笑)。でも、そんなところも素敵ですよ。そういう脳の思考の仕方とかはすごく由希と通じる部分があるんじゃないかなと思います。
島﨑:そうだったらいいな(笑)。夾はどう?
内田:夾は、一見、非常にぶっきらぼうですし、無愛想なヤツに見えるんです。だけど、学校の中だと、みんなにイジられてたりと意外に愛されているんですよね。夾も明確に不器用なタイプだと思うんですよ。由希とは逆で、壁というものを作れない。
島﨑:そうなんだよね。
内田:全然作れないから、もう距離を取るしかないんだけど、それで近づいてしまったら、出すしかない。
島﨑:周りから見てもダダ漏れなんだよね。
内田:そうダダ漏れ。出てしまっているのを感じられるのも本人はイヤだったりとか、そういうイヤだから明確に距離を取っちゃったりとか、突き放したりしちゃう。でも、そういう不器用さが彼のまっすぐさですよね。素直な部分かなと思っていて、そういうところで夾を1人の人として見ると、カワイイなと思いますね。
島﨑:すごく魅力的だよ。由希からしたら、うらやましい部分あるだろうなと思うもん。逆だもん。
内田:真逆ですよね。
島﨑:うまくやれちゃうから本心を出せない人と、うまくやれないから本心で人と接することができる人だよね。
内田:お互いがお互いをうらやましいなと思っているでしょうね。
島﨑:雄馬くんも愛されタイプだよね。
内田:そうですか? うれしいな(笑)。
島﨑:みんな雄馬くんが大好きだよ。みんなメロメロだから(笑)。
内田:恥ずかしい(笑)。
島﨑:ただ、夾みたいに不器用じゃないけどね(笑)。
内田:いや、もう大人なんで(笑)。
島﨑:大人だよね。雄馬くんも周りをすごく見ているし、周りの事を考えているし、気を使うし、人懐っこいし(笑)。
内田:人がいないとさみしくて、「不安......」ってなるんで(笑)。
島﨑:僕ら子(ネズミ)と猫(ネコ)だけど、本田透役の石見(舞菜香)さんにも言われたけど、どっちかというと戌(イヌ)だよね(笑)。
内田:お互いに戌(イヌ)ですね(笑)。
――収録現場の雰囲気はどんな感じですか?
島﨑:めちゃくちゃいいよね。
内田:めっちゃいいですね。みんな『フルバ』が好きですよね。もちろん、みなさんも参加している作品はどれも大切にされていますけど、それ以上ですね。昔から原作を読んでいて、感情移入するキャラクターが演じるキャラクターじゃなくて、各々別に感情移入してしまう子がいるんですよね。
島﨑:普通に現場で泣いている人とか多いよね。
内田:収録現場の僕らも成人している人が多いから、彼らの心のやり取りを親のような気持ちで見守ってしまうんですよね。
島﨑:そう。
内田:大人になってみたら些細なことだったりすることで、すごく悩むじゃないですか。それってやっぱり思春期だからですよね。僕らから見ると、「頑張れ~!」みたいに思っちゃう。
島﨑:なるよね。僕らも一視聴者と同じというか、泣くというのは役が泣いている人が演じている時に泣いているんじゃなくて、その時にしゃべっていない人が見ていて一緒に涙しているんだよね。
内田:見ていて、もう泣けてきてしまうという。あれはすごいですよね。
島﨑:個人的な経験上、現場で作品の話とかが自然と多い現場っていい作品になるというのがあって、『フルバ』はまさにそれですね。
内田:ずっと『フルバ』の話をしてますもんね。
島﨑:みんなときめいているからね(笑)。
内田:本当に素敵。こんな気持ちにさせてくれるのも、こういう作品だからですよね。
島﨑:そうだね。あとはスタッフさんの熱意や愛がすごくて、みんな毎回楽しそうなんですよ。原作の高屋奈月先生もよく収録現場に来てくださるんです。先生も何かあったらと思っていらっしゃるけど、基本的にはお任せしますというか、見守ってくださっている感がすごいんですよね。いつもニコニコ楽しそうにしてくださっているのはうれしいですね。
内田:原作の先生が見に来て頂けるって、制作の現場としては非常に光栄でうれしいですよね。そこから生まれてきているものだからこそ、今回アニメーションを作るにあたって、一緒にまた先生も含めて、みんなでこの作品に関わっているんだなと感じます。その感覚がすごくて、みんなで一致団結できるように監督もはじめ、スタッフのみなさまがしてくれていて、愛情が本当にあります。それが差し入れとかにも表れていますよね(笑)。
島﨑:差し入れね(笑)。いろんなとこでいつも言っちゃうんですけど、現場の思い出というと、みんなが「まず、差し入れ」って言うんですよね(笑)。
内田:本当にすごいんですよね。
島﨑:収録が朝なんですけど、朝一でいろんな名店に毎週行って買ってきてくださるんです。みんなで美味しく頂くんですけど、雄馬くんはね。
内田:ちょっと甘い物が食べられないんですよ。
島﨑:糖質制限。流行っているよね。
内田:体を鍛える関係でやっていまして。食べられないと話をしていると、「じゃあ、雄馬くんでも食べられるやつを買ってくるよ」と言って、本当にそういうものを買ってきてくれるんです。だけど、どら焼きとかドーナツとか甘いやつがたまに出てきて、「食べないの?」と聞かれるんですよ(笑)。
島﨑:そこに雄馬くんの愛されがあるんだよ。草摩紫呉役の中村悠一さんなんか「雄馬く~ん、ドーナツは穴があるからカロリーないよ」って言ってたよね(笑)。
内田:先輩ですけど言いますよ。「何を言うとんのじゃ!」って(笑)。
島﨑:「こしあんはこしているから大丈夫」とかね(笑)。そうやって、いろんな先輩がみんなで雄馬くんをイジってるよね(笑)。
内田:「チクショー! ありがとうございます」ですよ(笑)。
島﨑:本当に楽しく愛を持って一致団結しております(笑)。
(後編に続く)
(C)Paravi(C)高屋奈月・白泉社/フルーツバスケット製作委員会
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