2017年に創立55周年を迎え、日本アニメの源流として日本アニメ界を創成期から牽引してきたアニメーションスタジオ「タツノコプロ」。『マッハGoGoGo』『科学忍者隊ガッチャマン』といったアクション作品から、『ハクション大魔王』『タイムボカンシリーズ』などのギャグ作品に、『昆虫物語みなしごハッチ』『けろっこデメタン』などのメルヘン作品とさまざまなジャンルで数多くの名作を生み出し、タツノコアニメとして多くの人々を夢中にさせ、近年も『KING OF PRISM』『Infini-T Force』『エガオノダイカ』といった作品を精力的に世に送り出し続けている。

今回はそのタツノコプロの初期から演出家として支え、黄金期を築き上げたてきたアニメ界のレジェンドでもあるアニメーション監督の笹川ひろしにタツノコ・ヒストリーや現在のアニメ界の状況、今の時代の人へのオススメ作品などを語ってもらった。

1962年に吉田竜夫、吉田健二、九里一平(本名/吉田豊治)の吉田三兄弟によって、漫画制作プロダクションとして設立されたタツノコプロ(当時は「竜の子プロダクション」)。手塚治虫の専属アシスタントを務め、漫画家としても活躍していた笹川はやがて吉田三兄弟と出会い、タツノコプロで漫画の仕事を手伝うことになる。

「もともと吉田竜夫さんは挿絵画家だったんですよ。タツノコプロを創設した時も漫画を描いていて人気漫画家だったんです。でも、プロレスものとかハード路線だった。すごい人でしたね。吉田さんは絵描き、画家なんですよね」

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日本初の連続テレビアニメ『鉄腕アトム』の絵コンテにも関わっていた笹川は、アニメ作りに夢を見て、漫画制作に没頭する吉田たちを説得してタツノコプロ単独制作作品の第1号である『宇宙エース』を1965年に作り上げた。そして、笹川が自身のアニメ制作の中で一番大変だったと語るタツノコプロ初のカラー作品『マッハGoGoGo』に携わることになる。

「あの頃は、『鉄腕アトム』みたいな柔らかなデフォルメされた画の作品ばかりで、『マッハGoGoGo』のようなリアルなアニメって他社でもあんまりなかったんですよね。それで、吉田(竜夫)さんが「どうしてもハードな、リアルな線でアニメができないか」と言ってきたんです。漫画家の時からそういう画風の人だったですから。マッハ号の硬い重さの感じる質感とか、風防とかヘルメットの光とか。とにかくリアルに徹していたんです。リアル路線の初期ですね」

そのリアルさにより大ヒットとなった『マッハGoGoGo』は、日本だけでなく全米でも人気を獲得することになる。タツノコプロ初のカラー作品ではあるが、当時は白黒テレビとカラーテレビの両方が存在する時代。どちらで見てもおかしくないようにテレビ局で色の検査を行うなど、モノクロ時代とは違う制作の大変さを味わっていた。その一方で、リアル路線のはしりとして多くの困難にも直面していくこととなる。

「手塚先生の『鉄腕アトム』によって、アニメというのは簡略とデフォルメするものだという考えが主流で、どうしたら省略できるかという工夫がされていたんですよ。例えば、"ア""オ""ウ"の3枚の口だけの動きを描いておいて、それを組み合わせておけばしゃべるキャラクターの口の動きを作ることができた。そういう省略がアニメだ、という傾向だったんですよね。だから、吉田さんのような画で人間的な芝居をするのはアニメ向きではないという風潮だったので、吉田さんがあのキャラクターを作って「これでやろう!」と言い出した時はアニメーターがみんな青ざめました(笑)。吉田さんの画はきれいで本当に人間が演じているように見えますから、劇を作るにはいいんですけどね。でも、画は大変! 例えば一人の人物描くのに、宇宙エースみたいなキャラクターだったら何枚も簡単に描けるようにデザインされていますから。"タツノコの画は難しい"というのが当時の常識で、動画を何千枚も書かなきゃいけないアニメーターたちが『僕にはできません』って尻込みしちゃったんですよ」

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当時のタツノコプロは社内の人数だけではテレビアニメのシリーズを作ることができなかったため、外注や吉田竜夫の画風に近い人を捜して依頼していたという。

「でも、キャラクターを見せると『これは見るものであって、描くものではない』という断られ方してね。それを吉田さんに言うと『絵描きが描けないわけないだろ!描けるまで練習しろ!』と言うんですよ(笑)。吉田さんの『僕のキャラクターで動かせないわけはない。このキャラクターで絶対にやろう。苦労してもいいからやろう』という言葉から、他を捜したり、養成したりしていました。結果的には、少ない人数でも苦労して作り上げていましたね。弟さんの2人、特に三男の九里さんは、お兄さんが手取り足とり教えていました。絵も似ているんですよ。この人がいたから大変助かった。あの時、僕の意見を聞いた吉田さんが『アニメというのはそういうものしかできないのか・・・』と受け入れていたら、オーバーに言えば、今のアニメの繁栄はなかったと思いますよ」

日本アニメ界の歴史をともに歩んできた笹川。レジェンドである彼は現在のアニメ業界をどう考えているのだろうか。

「今の時代に求められる人材としては、絶えずなにかを考えてくれる作家的な人がやっぱり欲しいですね。それに、時代に合わせていかないといけないでしょ。いつまでも同じ考え方じゃいけないから。今は世界ですよ。世界を見回して何が流行るか。流行っているかではなく、察知して、見極めて作っていかないとかなり難しい。時流を読むというのが大事ですよ。流行っていないところへ突っ込んで行ったって、考えがズレていたらお客さんは見てくれませんから。だから、なるべく多くの人に見てもらうなら、どこを満足させるかですね」

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創立55周年記念作品として制作された、オリジナルアニメ『エガオノダイカ』の制作陣たち若手についても多くの期待を寄せている。

「やっぱり良いもの、喜ばれるものを作ってくれればいいんですけど、時流にあっているかどうかですね。女の人が強くなってきたからか、女の子が主人公というものがだいぶ増えてきたなと思うんですが、そのへんは合っているみたいですね(笑)。そこにメカが入っていて、良いところがいっぱい入っているんですよ」

動画配信サービスParavi(パラビ)でもタツノコプロの過去の名作から最新作まで数々のタツノコ作品を配信しているが、そんな笹川に現代の人たちにもオススメしたいタツノコアニメを聞いた。

「今のアニメは偏ってきて、美少女アニメが多いですよね、タツノコアニメには男性路線というものがありますから、男の子にも堂々と見てもらいたいので『科学忍者隊ガッチャマン』『新造人間キャシャーン』とかですかね。ガッチャマン、キャシャーン、ポリマー、テッカマンなどの人気キャラクターが集まった『Infini-T Force』は大サービスな作品ではありますね(笑)。フル3DCGアニメですが、あれをテレビシリーズでやれたというのはすごいですよ。そういう男の子が夢中になるものが欲しいですよね。だから、『科学忍者隊ガッチャマン』『新造人間キャシャーン』という路線はタツノコプロに今も一つはあってもいいですよね」

タツノコプロは"家族で見られるもの"を主流として作ってきたと明かす笹川。シリアスものだけでなく、ギャグものなどの作品でも後ろにちゃんと家族を感じられるものが多いと語る。

「『新造人間キャシャーン』は親と子の葛藤とかが描かれていて、人のために戦うというテーマがありました。タツノコプロとしてはそういう"家族"をテーマやメッセージとして描きたいというのがあったんですよね。今の時代は作品の数が多くなったでしょ。好きなものを選んで見られるんですよね。今の子は幸せですよ(笑)。でも、その作品も喜んでもらいたいという根っこの部分は同じなんですよね」

(中編につづく)

『マッハGoGoGo』『宇宙エース』『新造人間キャシャーン』 (C)タツノコプロ
『エガオノダイカ』:(C)タツノコプロ/エガオノダイカ製作委員会