独自の視点やこだわりを持って世界&日本を巡る"クレイジージャーニー"たちが、その特異な体験を語る伝聞型紀行バラエティ『クレイジージャーニー』。これまでになかったまったく新しい視点から番組を展開する同番組の演出を担当する横井雄一郎氏へのインタビューの後編では、番組に出演したジャーニーたちの裏話を聞いた。

前編はこちら:『クレイジージャーニー』の仕掛け人・横井雄一郎が語る「大切なのは文化へのリスペクト」

――番組に出演したことで、世間に認知され、人気に火がつくジャーニー(出演者)の方たちもたくさんいらっしゃいますね。なかでも、ヨシダナギさん、丸山ゴンザレスさん、佐藤健寿さんは非常に人気があります。お三方は、横井さんから見て、どんなお方ですか?

ヨシダナギさんは、番組に出演していく中で、どんどん人気が出ていくのを実感したジャーニーですね。彼女が初めて出演してくれた後に、恵比寿で個展をやっていたんです。正直、その時はこじんまりとした会場でした。でも、その後、どんどん人気が出て、翌年には渋谷の西武の広いスペースで個展を開いていました。僕がお伺いしたときは、女子高生が会場に入れなくて待っているぐらいで・・・1年でこんなに変わるんだと目の当たりにして、ナギさんの作品の素晴らしさは当然として、テレビの力のすごさも感じました。

丸山ゴンザレスさんは、番組でもちょくちょく触れていますが、実は体をすごく鍛えてるんですよ。松本さんと張るぐらいベンチプレスも持ち上げるそうで(笑)。それをモチベーションにしているようですね。佐藤さんも人気者ですが、どんなテレビ、ラジオに出ても、相変わらず遅刻しているようです。彼は、遅刻癖がすごいんですよ(笑)。

――危険な地域にも行かれることが多いと思いますが、トラブルやハプニングも多いのではないでしょうか?

いろいろとありますが、でも、そのまま描いちゃっていることが多いですね。視聴者の皆さんがご覧になっている通りです。

――なるほど。それにしても、同行されるディレクターさんは、大変なことも多いでしょうね。

そうですね。番組内でも話題に出ていますが・・・現地の通訳の方にお願いして、行きたい場所を伝えると「歩いて30分で着く」と言われるのですが、実際は山道を6時間だった、というようなことはよくありますね。30分だと思ったから荷物を持ってきたのに・・・という(笑)。そういうトラブルは地味に精神的にも肉体的にもきますね。

――旅に同行されるディレクターさんは、横井さんがご指名されているんですか?

はい。基本的には付き合いが長くて、ロケが得意で、人が好きな人たちにお願いしています。予定通りにいかないことも多いので、予定通りにいかないことを描ける、トラブルを楽しめる人たちです。

――今まで一緒に仕事をしてきた中で、できた信頼関係がある方たちということですね。危険地帯にも行かなければならないですから、当然、信頼関係は大事になってきますよね。

そうですね。こちらも危険な地域に行くときにはさまざまな対策をとっていきますが、それでもディレクターはジャーニーと同じモチベーションではないので、当然ながら時には嫌だなと思うときもあると思います。例えば、ゴンザレスさんと行ったメキシコ麻薬地帯では、着いたその日にディレクターから写メが送られてきて、「高速道路に遺体が転がっていて、緊張感がすごい」と書いてありました。やはり安全が第一なので、決して無理をしないで、1日の終わりに連絡してねと伝えましたが、こっちも気が気じゃないですよ。

信頼はしていますが、何かあったらと思うと心配にもなります。だから僕は、ロケに行ってもらっているときは、携帯に現地時間を入れておいて、現地時間での日中に連絡がなかったらホッと一安心しています。日中に連絡があったら、ドキドキです。

――待っている横井さん側も気が抜けないですね。そんな横井さんの中で、一番印象に残っている放送回はどれですか?

ブラジルのスラム街のファベーラでギャング写真を撮影している伊藤大輔さんの回です。伊藤さんも「オラオラ」系の方で、その雰囲気がいかにもな感じで印象的だったのと、やはり緊張感が半端ない場所だったので。殺人がバンバン起こる地域ですし、繋いでくれる人がいてやっと成立するという、キワを体感できる放送になったと思います。

それから、ゴンザレスさんのマンホールタウンも印象に残っていますね。だって、嘘みたいでしょう?漫画の世界みたいで、こんなことって本当にあるんだと、単純に驚きがありました。でも、社会的にどうしようもなく、そこでしか生活することができないという現実があって、そしてその世界の中にもボスがいて・・・と、すごく印象的でしたし、『クレイジージャーニー』を象徴するような旅だったと思います。

20181226_crazyjourneyyokoip_02.jpg

――ジャーニーの皆さんは個性的な方ばかりですが、印象に残っているジャーニーの方というと?

犬ぞり師の本多有香さんです。犬ぞりがしたくてカナダに移住して、犬と共に暮らしながらギリギリの生活をしているという方なのですが、あらゆるパイプを使って熱心に説得してやっと来ていただいたという経緯があります。本多さんと仲のよい方から何度もお願いして、なんとか日本に帰国するのに合わせて出演していただけたのですが、テレビに出演することなど興味ない方ですし、松本人志さんのことも知ってはいても「犬ぞりの話をして楽しいですか?私を取り上げて楽しいですか?」とい冷めたスタンスを持っていらっしゃったので、正直、僕たちも収録がどうなるのかわからなかったんです。もちろん、犬ぞりや犬に対する情熱や愛情は本物なんですが、テレビに出演することに興味がなかったんでしょうね。

僕たちも不安があったので、収録前にMCの松本さんたちにもそのことは伝えて、松本さんも「わかったわ」って。それで、いざ収録となったら松本さんを含め、MC陣のギアが2段階ぐらい上がったんですよ。松本さんたちの「笑わせるぞ、楽しませるぞ」という気持ちがすごくて、本多さんも爆笑されてました。僕たちが密着したり、打ち合わせしたりしたときには見たこともないような笑顔で「面白かったです、楽しかったです」っておっしゃって帰って行かれました。密着中は、こちらが説明を聞かせてくださいとお願いしても、そっけないお返事が返ってくるだけだったのに、収録中はゲラゲラ笑ってましたから。そのMCの方たちのギア感も含めて神がかっていたなと、印象深いですね。

――個人的に、マサイ族に嫁いだ永松真紀さんの回も驚きの連続でした。

永松さんの本を拝読して、すぐにご連絡して、すぐに会いに行きました。たまたま日本にいらっしゃっていたときだったので、運良く会うことができたんですよ。マサイ族については、ジャンプ力がすごいとか、そういう一般的なことしか知らなかったので、永松さんから本当にディープな生活のお話が聞けて面白かったですね。前提となるものが日本とはまったく違うので、これが文化の違いなんだなと実感できた回でした。

『クレイジージャーニー』は旅に同行するVTRがメインとなっている番組ですが、永松さんが話してくれた、当事者としてのマサイ族の姿は画にはできないものだったので、このときはトーク中心の放送だったんです。でも、反応も視聴率も良くて、ディープかつ真の文化に迫ればみんなに見てもらえるんだと思えたきっかけになった回でもありました。

その後に"千日回峰行"を制した大阿闍梨の塩沼亮潤さんにご出演をお願いしに行ったら、このマサイ族の回をご覧になっていらっしゃったようで、「人間の核心たるところをきちんと紹介していて、すごくいい番組だと思った」とご快諾いただけたんです。後につながったという意味でも、印象に残っています。

――「Paravi(パラビ)」ではアラスカの写真を撮影されている松本紀生さんの回も配信されています。

松本さんは物腰の柔らかいスマートな方なのですが、1年の3分の1をアラスカで過ごされているという、やはりちょっと常人とは違う感覚を持っていらっしゃる方でした。自分にしか見えないゴールがきっとあって、楽しくてしようがない。毎回、何か発見があるから飽きないんでしょうし、無欲にオーロラの写真を撮ることだけを追求している。やっぱり、マイナス40度の世界で、かまくらを作って一人で生活しているって、静かではあるけれどすごい闘志がありますよね。夏は夏で動物や大自然を撮りに行って、テント暮らしをしていますし・・・撮りたい絵を撮るために生活していて、純粋な方という印象があります。

――『クレイジージャーニー』は、「Paravi(パラビ)」で配信されるようになったので、ぜひ振り返って観ていただきたいですね。

『クレイジージャーニー』で紹介している旅は、世界レベルで楽しめる(価値ある)ものだと自負しています。例えば、マンホールタウンなどは、ヨーロッパの人が見ても驚くような生活だと思うんです。動画配信が広がる中で、世界中のどこにいても見てもらえるシステムが確立したらいいなと期待しています。どこかの国で爆発的に人気が出て、それが巡り巡って制作費に少しでも還元されないかな、と(笑)。映像的には自信があるので、ぜひ、海外の方にも見ていただきたいです。

『クレイジージャーニ―』の過去回が、動画配信サービス「Paravi(パラビ)」にて配信中。

インタビュー前編はこちら:『クレイジージャーニー』の仕掛け人・横井雄一郎が語る「大切なのは文化へのリスペクト」

(C)Paravi