日本が誇るバレエダンサー熊川哲也率いるKバレエカンパニーから、選りすぐりの男性ダンサー5人で結成された「Ballet Gents(バレエジェンツ)」。2014年の発足以来、ディナーショーやオーケストラとのコラボレーション、地方特別公演などを経て、2018年12月22日に東京では初めてのシアターでの単独公演を行う。座長宮尾俊太郎、ゲストの大貫勇輔のインタビューに続き、バレエジェンツの残る4人のメンバーにもそれぞれインタビューを行った。3人目は、篠宮佑一をピックアップ。

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インプット、可能性とその表現を求めて

――最近、パリに行かれたと聞きました。

ルーブル美術館の敷地内にあるスペースで展示されていた画家の方の取材に行ってきました。最近いろいろなアーティストたちに会う機会が多いんです。絵や音楽の良さに触れる中で、バレエの良さは他の何にも代えられないことも実感していて。だから、早く踊りたいですね(笑)。

――8月に、Kバレエ カンパニーを退団されましたね。

いろいろなことに挑戦してみたいと思い、8月末に退団しました。Kバレエを退団しても、幸せなことにバレエジェンツは続けさせていただけるということで、精一杯臨もうと思っています。

――宮尾さんは、篠宮さんのことを「テクニックがすごく強く、独特のシュールな笑いが取れるダンサー」とおっしゃっていましたよ。

そのようにアピールできるように踊ってきたと思います。生活にあるすべてのことをインプットととらえて、それを踊りでどう表現していくか、これからも突き詰めていけたら自分にしかできない表現が生まれるかもしれない可能性を感じているので、そういうところに力を入れていきたいと思っています。

人に会ったり、講演を聞いたり、今はとにかく、いろいろなところでインプットを増やしていくようにしています。人に伝える表現方法はいろいろありますが、どれも最終的にリンクするところがあると思うので。今は発信するための幅を増やしていこうとしています。

――そんな篠宮さんは、どのようにバレエと出会ったのでしょう?

6歳の時に、母に連れられてバレエを観に行ったんです。「すごい!」となったところに、「僕もやりたい」と半ば強制的に言わされたような感じでした(笑)。でも、日常的な生活では味わえない刺激に、幼少期ながら魅了されたんだと思います。その感覚が青春時代にも続いていったので、15歳でプロのバレエ団に入りました。当時はほとんどの方がすごく年上で、大人の世界に入っていく感覚でした。弟分をやっている時期が長かったんですが、そういった中でも自分をアピールするということを積極的にやってきたと思います。

――バレエのどういうところに魅了されたのでしょうか?

一番は、やはりすべての要素が含まれていることだと思いますね。視覚的にも、聴覚的にも、五感にダイレクトに伝わってきやすい。バレエや、総合芸術が素晴らしいのは、そういう点なのかなと最近感じています。

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熊川さん、宮尾さん、ジェンツのダンサーたちについて

――熊川哲也さんは、どういう方ですか?

まず、僕が今の状況を与えてもらっているのは、すべて熊川ディレクターのおかげだと思っています。すごく愛情も感じていますし、バレエダンサーとして、芸術監督として、Kバレエカンパニーの代表としてだけでなく、ジャンルを超えたすごい人だな、と感じます。それは、Kバレエを離れたからこそ思うことなのかもしれないです。

――バレエジェンツのリーダー宮尾俊太郎さんについても教えて下さい。

第一に、すごくおしゃれな方です。(バレエの)外の世界でも、宮尾さんみたいな方ってそうそういないんですよ。プロポーションもセンスも、作品作りってそういうものがすべて出る。ジェンツの舞台というのは、熊川ディレクターのDNAを受け継いだダンサーたちが創っているものだと思うので、感性の集合体でもあると思うんです。そういったところを宮尾さんがリーダーとしてまとめ上げてくれているのですが、もし僕が宮尾さんの立場だったら難しいなと思う部分が多々あります。振付も面白いですし、リスペクトしています。

――大貫さんとは初共演になりますか?

舞台を拝見した際にお会いしたことはあるのですが、一緒に踊るのは初めてなので、すごく楽しみです。素晴らしいダンサーなのは重々承知しているので、負けないようにしなきゃな、と。まず、気持ちの部分で負けないように(笑)!

――ジェンツの他のメンバーのことも教えて下さい。

益子(倭)くんはすごくストイック、バレエに対して貪欲です。そういうところが彼の踊りにも出ているし、彼の生き様そのものだと思います。この前、僕の家のバー(バレエのレッスンに使う手すりのようなもの)をあげたんですよ。家でもバレエをやっているぐらい、バレエに情熱のある方です。

栗山(廉)さんは、とても純粋ですね。みんな純粋だけど、特に。ちょっと前まではすごくかわいい感じだったのに、最近男だなと感じることが増えてきました(笑)。

杉野(慧)くんは男前な人だと思います。男くささというか、そういうところが僕にはないので、うらやましいと思う部分もあったり。舞台の厚みを出せる方だと思っています。

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好きな役、趣味、Kバレエで学んだこと

――特にお好きな役や作品はありますか。

思い出深いのは、主役デビューだった『ドン・キホーテ』のバジル役ですね。一番練習したと思います。性格的に合うのは『コッペリア』のフランツ役などかと思いますけど。すごくハッピーボーイでいろんな女の子を好きになっちゃうみたいなところが、近いところがあると思います(笑)。でもやはり思い出深いのはバジルです。初めての主役だったので、最初、出て行った時はフワフワしてたんです。でもどんどんストーリーに入っていくことができたと思うし、その中で役と自分をリンクさせて生きること、それを感じることができたと思います。しかも公演が1日しかなかったので、その役は1回にすべてを懸けるような感覚で。そんな気持ちで臨んだので、とても思い出深い公演です。

――Kバレエで学ばれたことは、何ですか。

一つのことに情熱を持って取り組むこと、そこに魂を吹き込むこと。そして、最後に一番感じたのは、人として誠実であることを熊川ディレクターから一番学んだと思います。

――憧れのダンサー、興味がある人物などおられますか?

現役ダンサーの方ですと、スティーブン・マックレーさん(英国ロイヤルバレエ団プリンシパル・ダンサー)が好きですね。もちろん表現的な部分も好きなんですが、彼自身もすごくいろいろ勉強されていて、今の目標は「現役を終えた後に(バレエ団の)監督をやることだ」とおっしゃっているんです。そのために大学に行ったりもしていて。彼の活動には、常に注目しています。

他のカテゴリーでもすごいなと思う方はいっぱいいて。興味を持つのに、あまりジャンルには囚われないようにしています。どんな分野にでもアプローチできなければ、変化に対応できないと思うので。変化に対応するために、いろいろなところに関われるような人になっていきたいと最近思っています。

――12月22日の公演、楽しみにしております。

Kバレエを離れてから4ヶ月ぶりの公演になるので、4ヶ月分の気持ちを爆発させようと思っています。だからそれに対応できるだけの準備をしっかりしないと、ですね。

面差しも話しぶりも端正という言葉がぴったりな篠宮佑一さんだが、身体の中から溢れるようなもっともっといろんなことを知りたい、やりたいという意欲が輝いていた。「4ヶ月分の気持ちを爆発させる」という公演が楽しみだ。

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(C)Paravi