若年性アルツハイマーに冒された女医の北澤尚(戸田恵梨香)と、彼女を明るく健気に支え続ける小説家の間宮真司(ムロツヨシ)。10年にわたる2人の愛の奇跡を描いたTBS系ドラマ『大恋愛〜僕を忘れる君と』が、まもなく最終章を迎える。"ラブストーリーの名手"大石静が描く完全オリジナル作品として視聴者の涙を誘った尚と真司、2人の愛の行く末は?
身を削るような"大恋愛"が繰り広げられる中、サンドウィッチマンの富澤たけしとともに、明るいパートを担った引っ越し会社の若手社員・小川翔太を演じた杉野遥亮。「尚と真司の姿を通して、人を根本から愛することを学んだ」という彼が、本ドラマに対する熱い思いを語った。
――これまでの撮影を振り返ってみて、どんなことが印象に残っていますか?
ほかの現場へ行ったときに、『大恋愛』のことをよく聞かれます。「すごく感動したよ」とか「この先、いったいどうなるの?」とか。今までそんなこと、あまり聞かれたことがなかったので、僕もこの作品の一員になれて、誇らしくもあったし、嬉しくもありました。
――ご自身の役柄に対しては、どんな思い入れがありますか?
最初は結構、悩みました。ドラマ全体を考えると、僕が演じる小川と、真司(ムロツヨシ)、木村さん(富澤たけし)が集う引っ越し会社でのやりとりが"明るいパート"になればいいなと思っていたんですが、変にトーンを変えたくなかったし、かといって、自分のキャラクターも生かしたかったし。そこは葛藤がありました。
――3人の掛け合いやムード、信頼関係みたいなものが、回を追うごとに、いい感じになっていきましたよね。あれは自然に出来上がっていったものですか?
ある程度、監督に方向性を決めていただいたんですが、割と自然に出来上がっていったと思います。本編で使われてないところでも、アドリブでお芝居が続いていったり、どんどん自分の素の部分を出していこうというムードがあったので、ムロさんたちに引っ張っていただいたな、という感じです。
――小川というキャラクターの面白さもよく出ているなと感じました。
振り返ってみると、小川を演じることはすごく楽しかったです。とくに引っ越し会社の溜まり場でウダウダ喋っているところなんかは、語弊があるかもしれませんが、良い意味で遊びに来ている感覚に近かったかな。ただ、少しスパンが空いて現場に戻ると、余計なことを考えて緊張してしまったりしていたので、もっとリラックスできていれば、もっともっと楽しめたのかな、という思いはありますね。
――一番共演シーンの多かったムロさん、富澤さんとの思い出、あるいはエピソードなどありますか?
ムロさんに、突然スプレーをかけられるシーンがあったんですが、「ああ、僕と真司はこういう(いじられるくらい仲の良い)関係性なんだな」って(笑)。真司にとって木村さんは、他で言えないことを唯一吐き出せる存在ですが、小川はそれを知った上で、自分なりに良き先輩を大切に思っているという感じで接することを心掛けました。
――富澤さんとはいかがですか?撮影風景を拝見して、すごく落ち着いた方という印象を受けました。
僕が現場で緊張しているときに、唯一、一緒にいて安らげる人でしたね。撮影に入るときに、「俺って、いつも無気力なんだよね~」とおっしゃっていたんですが、その佇まいがすごく自然体だったんです。こんなに緊張する現場でも、ここまでフラットにやれる人がいるんだと思ったら、急に肩の荷が降りて。
――ロケでもご一緒するシーンが多かったですよね。
この間も一緒にロケに行ってきたんですが、周りに人が集まってきたときも、老若男女問わず、自然体で接しているし、握手も気軽に応じているし。僕なんか、撮影の合間にファンサービスとかして良いのかな?とか、いろいろ考えちゃうんですが、富澤さんはそんなこと気にすることもなく。改めて「この人、すごいな」と思いました。
――杉野さんが演じられている小川は、9話で、尚と真司のお子さんを発見するという重要な役割も担いました。終盤に差し掛かった今、改めて、小川という役に対して思うことはありますか?
第8話までは、真司との関係性が大切だったと思いますが、子どもが生まれ、そして、行方不明となった子どもを僕が見つけ、その間に奥さんである尚のことも深く知るようになって、今はほかの方たちと同じように2人を温かい目で見ているような気がしますね。ドラマの上では3年という月日が流れているわけですが、そこをうまく表現できていたらいいな、と思います。
――小川とご自身との共通点みたいなものはあるんでしょうか?
小川は、先輩に対しても壁がなく遠慮のないタイプですが、僕は最初、ちょっと壁がある。でも、その壁が取れて信頼関係が築けたら、たぶん小川のような感じになると思いますね(笑)。
――杉野さんご自身は、1人の視聴者として、尚と真司の関係性をどのように受け止めていますか?
僕はまだ本当の愛を知らなくて、このドラマを通して、人を根本から愛することがどういうことなのか、学ばせていただいた感じがします。正直言って、僕が真司の立場だったら、厳しい現実から逃げ出していたかもしれません。だから、ここまで人を愛することができるなんて羨ましいなとも思いました。ものすごく一生懸命だし、背負っているものへの覚悟もあるし、キラキラして見えるといいますか・・・病気のことを抜きにしても、かっこいいなというか、憧れますね。
――ご自身も、いつかはこのくらい身を削るような大恋愛がしてみたいですか?
このドラマを見たら、思いますよね。ふとした台詞の中にも心にすごく響くものもありましたし、とにかく大石さんの脚本が素晴らしいなと思って。確か、尚役は戸田さんを当て書きしたとお聞きしましたが、僕もいつかは当て書きされるような俳優になりたいなと思いました。
――杉野さんの周りの同世代の方は、このドラマに対してどんな反応を示していますか?
うーん、同世代とはあまり作品の話はしないのですが、SNSやファンレターなどを見ると、皆さん、ボロボロ泣いている印象があります。感想は、どちらかというと、僕の母親やそのお友だちのお母さんなど、大人の女性から聞くことが多いです。「今期のドラマで一番面白かった」とか、「次はどうなるのか教えてほしい」とか言って下さる方も多くて(笑)。皆さん、なぜかドラマの内側に入ってきたくなるみたいですね。
――終わってしまうのが名残惜しいですが、どうなるのか、楽しみでもあります。また、本作を経た杉野さんのご活躍に期待しております。最後に、来年への抱負などがあれば。
『大恋愛』が始まる前は、学生ものの作品が多く、同年代が集まってワイワイやっている感じだったので、戸田さんやムロさんのような大人の俳優さんと接する機会があまりなかったんですね。だから9月以降、このドラマの撮影に入るのがすごく怖かったんです。それこそ最初は、自分で勝手に根を詰めたり、思い悩んでネガティブな方向に走ってしまったり、そういうことが結構ありました。でも、後半から先輩たちと面と向かってお芝居することが「楽しい」と思えるようになって、「次はこんな風にしてみよう」とか「もっとこういうアプローチができるんじゃないか」とか、すごく意欲的になれたので、来年は、その気持ちを活かして、お芝居をもっともっと楽しめたらいいなと思います。
金曜ドラマ『大恋愛~僕を忘れる君と』最終回は、TBSにて12月14日(金)22:00より15分拡大スペシャルとして放送。動画配信サービス「Paravi(パラビ)」でも配信中。
(C)TBS (C)Paravi
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