戸田恵梨香×ムロツヨシで描く奇跡のラブストーリー『大恋愛~僕を忘れる君と』が好評放送中だ。若年性アルツハイマーに侵された将来有望な女医と病気により自分を忘れていく恋人を献身的に支える元小説家のピュアな恋愛を描く本作は、幅広い世代から支持を受け、動画配信サービス「Paravi(パラビ)」でも常にランキングの上位で再生回数を重ねている。「恋愛ドラマは視聴率が取れない」と言われている現在、ここまでの人気を得ている理由とは―?

今回"トレンディードラマ"全盛期に数々のヒット作を世に送り出してきたTBSテレビ エグゼクティブプロデューサー貴島誠一郎氏を進行役に迎え、『大恋愛』プロデューサーの宮崎真佐子氏と佐藤敦司氏にヒットを生み出す現場のクリエイター裏話を中心に話を聞いた。

(プロフィール)

貴島誠一郎
株式会社TBSテレビ エグゼクティブプロデューサー。一般企業勤務を経て1982年にTBSに入社。営業、編成を経て1989年より制作局にてドラマ制作を担当。2003年にはTBSの子会社ドリマックス・テレビジョンの常務取締役に就任。その後はTBSテレビ制作局ドラマ制作センター長、制作局スペシャリスト局長、執行役員付ドラマ担当プロデューサーなどを歴任。
1990年代に一大ブームを巻き起こした『ずっとあなたが好きだった』(1992年)『愛していると言ってくれ』(1995年)などを手掛け、その後も『理想の結婚』(1997年)『青い鳥』(1997年)『Sweet Season』(1998年)『肩ごしの恋人』(2007年)など多くのヒットドラマをプロデュース。

宮崎真佐子
株式会社TBSテレビ ドラマ制作部所属 プロデューサー。2008年にTBS入社。プロデュース作品は『逃げるは恥だが役に立つ』(2016年)『監獄のお姫さま』(2017年)『レンタルの恋』(2017年)など。

佐藤敦司
株式会社ドリマックス・テレビジョン ドラマ本部所属 プロデューサー。プロデュース作品は『家族ノカタチ』(2016年)『あなたのことはそれほど』(2017年)『きみが心に棲みついた』(2018年)など。

ラブストーリーが視聴率をとれない時代に

貴島:現在放送中の『大恋愛~僕を忘れる君と』(以下『大恋愛』)でプロデューサーを務める宮崎さん、佐藤さんですが、宮崎さんは私がドラマ部長を務めていた2008年に入社した直属の部下、佐藤さんは私がドリマックス・テレビジョン時代にプロデュースしたドラマ『弁護士のくず』(2006年)、『肩ごしの恋人』(2007年)でADをされていました。ちなみに二人は今まで一緒に仕事をしたことは?

宮崎:佐藤さんのお名前は以前から知っていましたが、一緒に仕事をするのは今回が初めてです。

佐藤:実は我々はドラマ『渡る世間は鬼ばかり』のADを担当していたという共通の過去がありまして。現場では一緒ではなかったものの、そのことはよく話題に出てくるので妙な親近感はありますね。

宮崎:『渡鬼』は私たちのドラマ制作現場の原点ですよね。今もセットに入る時に散らばっている履物を見ると無性にそろえたくなります(笑)。

貴島:時期は違えど、TBSを代表する偉大なドラマにADとして参加した経験から、すでにお二人の間には"阿吽の呼吸"が出来ているんですね。そんなお二人がプロデュースを担当するドラマ『大恋愛~僕を忘れる君と』ですが、視聴率も非常に良く、見逃し無料配信サイトや動画配信サービス「パラビ」でも常に再生回数が上位にランクインしていると聞いています。

宮崎:ラブストーリーがあまり視聴率をとれない時代と言われている今、再生回数の多さもそうですが、視聴率が常に2ケタをキープできているというのは作り手として本当に嬉しいことだと思っています。直球のラブストーリーでタイトルもド直球にしたので(笑)。どれだけ皆様に受け入れていただけるか探り探りのスタートでしたが、第1話から予想以上の反響をいただき感動しました。

貴島:放送後、ネットやSNSで視聴者の反応を目にする機会も増えていると思いますが、どうですか?

宮崎:Twitterなどの感想はよく見ています。金子文紀監督(※代表作:映画『木更津キャッツアイ』、映画『大奥』シリーズなど)も「ガールズちゃんねる」という女性が書きこむ掲示板などをよくチェックしていらっしゃって、感想に一喜一憂しています(笑)。

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佐藤:最近はオリジナルドラマが少なくて、僕自身も原作もののドラマを手掛けることが多かったのですが、『大恋愛』はオリジナルドラマとしてちゃんと評価をされて見ていただけているのが伝わってきて嬉しいです。脚本の大石静さんが書かれる世界観が本当に素晴らしくて、僕らスタッフも渡された台本を読む度に「早く続きが読みたい!」と、一視聴者のような感覚になれるのが、これまでに経験がなかったことなので、僕自身非常に新鮮に感じています。

貴島:原作ものは「最後はこうなるんでしょ?」と思いながら視聴者も見ていたりしますが、オリジナルドラマの結末は脚本家、プロデューサー、監督の頭の中ですからね。撮影中に、俳優さんから「ラストはどうなるんですか?」なんて聞かれたりしますか?

宮崎:今回は台本が完成するのがすごく早くて、準備稿の段階ではありますが結構先までキャストの皆さんにはお渡ししています。皆さん気持ちを整える時間が持てていることや、大石静さんの脚本が読み手の想像に任せてくれる部分が多いので、現場で役者とスタッフが一緒に話し合いながら作ることができる"余白"が多いんですね。「このシーンとこのシーンの間には"多分"こういう事があって、今こういう気持ちで会話している設定だよね」っていうキャラクターの心情などを、毎回どのシーンを撮影する時も確認しながら撮っています。

貴島:脚本の大石静さんとは、私もプロデュースを担当した『長男の嫁』(1994年)『私の運命』(1994年)などで一緒にお仕事をさせていただきました。アシスタント・プロデューサー時代からだと20年以上の知り合いになりますが、あんなに熱量のある恋愛ストーリーを次々と生み出すバイタリティーはすごいことだなって思うんですよ。

宮崎:そうですね。先日ドラマの中打ち上げの席で大石さんとお話をした時に、「最近、同世代の人よりもアナタぐらいの若い子としゃべった方が、話が合ったりするの。私のイメージしたいものを分かってくれるのよね」とおっしゃっていたんです。「大石さんが今の時代にちゃんと受け入れられるラブストーリーを書ける感性はこういうところにあるのかな」と思いました。

女性は「なぜ」ではなく「いつ」で好きになる

貴島:私が以前大石さんとお仕事をした時に「そろそろ年齢なりのお話を書きませんか?」と言ったことがありますが、「私は最後まで恋愛ドラマを書きたい。いろんなドラマを書くにしても、やっぱり恋愛ドラマを書いていきたい」と言われたことを思い出しました。恋愛ドラマの視聴率が厳しい今、ベテランの大石さんと若い二人のプロデューサーがタッグを組んでヒットに結び付けた意味は大きいと思います。打ち合わせでは、さぞかし赤裸々な恋愛話が飛び交っていることと思いますが、どうなんでしょう?

佐藤:女性陣が盛り上がってそれぞれの恋愛を語っている時は、男の僕はちょっと入り込む余地がないというか・・・(笑)。

貴島:そんな時に「あなたも何か言いなさいよ」とか言われたりしません?

佐藤:「男としてどう思うのよ」と意見を求められたりしますね(笑)。

貴島:それは答えるのが難しい(笑)。私は『愛していると言ってくれ』で北川悦吏子さんと仕事をした時に、「主人公同士、"なぜ"好きになったんですか?」としつこく聞いていたら、「女性は"なぜ"好きになるんじゃなくて、"いつ"好きになるかです!」と大反論されたことがあります。「女性は今まで好きじゃなくても、ある時・あるシチュエーションで好きになったりするものなんです。男性の場合はだいたい好きになるタイプは同じなので"なぜ"好きになったのか理由があるのかもしれないが、そこが女性とは違う」と言われ、それ以降、しつこく聞かないようにしました(笑)。

宮崎:大石さんも「"何で"好きになったのかって、そんなに重要?」とおっしゃっていましたね。今回、1話で戸田恵梨香さんが演じる北澤尚が、ムロツヨシさんが演じる間宮真司を好きになる理由を"わざと"描かずに、会話するうちにだんだんフィーリングが合って、いつの間にか好きになって、キスまでいくという感じにしたんですけど、大石さんも「"これ"をされたから好きってことではないよね」っておっしゃっていて。でも尚は婚約者がいる身なので、ただの尻軽女に見えないように、「真面目さゆえに、お礼に食事をおごらせてくださいと言って、気づいた時には惹かれ合っていた」という描写にするなど、その辺はすごく気を遣いました。

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佐藤:3話で「"好き"と"嫌い"は自分じゃ選べない」っていう台詞があったんですが、"好きになったら好き"っていう直球な台詞が僕は非常に印象的でした。最初に読んだ時、男としてはちょっと理解が出来なかったんですけど(笑)。戸田さんとムロさんのお芝居を見て「気持ちで動くとはこういうことなんだ」と納得しました。

貴島:対照的に、尚の元婚約者で主治医の井原侑市役を演じる松岡昌宏さんですが、3話目くらいまでは気持ちではなく理論的に行動する"理系男性"として描かれているのがちょっとかわいそうかなと。情に厚い本人を知っているだけにね。相手の病気が分かったから婚約解消って、いくらなんでもそんなドライに割り切れるものなのかなって。

宮崎:「理性で考えて婚約した相手だから、その人に病気が見つかった時に、結婚する前に分かって良かったと思うんじゃないか」と大石さんはおっしゃっていましたね。金子監督も「籍を入れる前に病気が分かって婚約解消するのが普通でしょ。俺だったら分かってラッキーって思う」と言っていて、私は「えー!?」ってなりました。もしも私がその立場だったら「それでも好き」「婚約解消はしたくない」って言って欲しいですもん。佐藤さん、どうですか?

佐藤:・・・ラッキーまでは思わないけれど、僕も身を引くと思います。何年も恋愛してきて「この人のすべてを背負ってもいい」と思えるくらいの人なら違うかもしれないけれど、お見合いで出会ってまだ3ヶ月の相手ですからね。でも病気発覚後の尚の主治医として彼女を支える存在になったので、ただの計算高い人ではないという描かれ方になっていると思いますよ。

宮崎:大石さんいわく、「医師という社会的エリートのヒロインが病気になって、どんどん希望を失って堕ちていく姿が萌える。私はエリートが堕ちていく様が見たいの」っておっしゃっていて(笑)。なるほど、大石さんが脚本を書いた『セカンドバージン』(2010年/NHK総合)にもキャリア官僚が登場したり、確かにエリートが出てくる作品が多いんですよね。『大恋愛』でも、大石さんが描きたいものをどう表現されるのか、注目していってほしいですね。

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ドラマクリエイターたちの"恋愛ドラマ"談義はまだまだ続きます!後編もお楽しみに。

金曜ドラマ『大恋愛~僕を忘れる君と』はTBSにて毎週金曜日22:00より放送。
動画配信サービス「Paravi(パラビ)」では、第1話から最新話までを独占配信中。

※宮崎真佐子の「崎」は、「大」の部分が「立」が正式表記

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