ドラマスペシャル『あまんじゃく 元外科医の殺し屋が医療の闇に挑む!』に続き、テレビ東京(以下、テレ東)開局55周年特別企画として制作されたドラマBiz『ハラスメントゲーム』で同局初の連ドラ主演を務める俳優の唐沢寿明。「テレ東さんの"攻める"姿勢にずっと注目していました。視聴者が"面白い"と思えるものにとことんこだわりたい」と意気込む唐沢が、本ドラマに込めた思いを熱く語った。
本作は、「パワハラ」「セクハラ」「マタハラ」など、連日テレビやネットで取り上げられる「ハラスメント問題」に、真っ向から挑む痛快ヒューマンエンターテインメント。スーパー業界大手老舗会社のコンプライアンス室長・秋津渉(唐沢)が、社内に起こる様々なトラブルを奇抜なアイデアと手法で解決していく姿を活写している。
――最近のテレビ東京にとても関心を持っていたそうですが、どういうところが気になっていたのでしょう。
何でしょうね。ある時期から、スタッフが変わったんじゃないかって思うくらい、変わりましたよね。ドラマもそうだし、バラエティも、"攻めている"姿勢がいいなと思って観ていました。『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』とか、『ヒャッキン!~世界で100円グッズを使ってみると?~』『緊急SOS!池の水全部抜く大作戦』とか最高じゃないですか。だから、今回、2本連続で主演をやらせていただくことになったので、僕も演技で攻めてみたいと思っています。
――『あまんじゃく』では、元外科医の殺人者、『ハラスメントゲーム』では、さまざまハラスメント問題に挑むサラリーマン、とても対照的な役が続きましたが、切り替えは大変ではなかったですか?
僕は割と切り替えが早い方で、「じゃ、次」と言われたら、次のことだけに集中するタイプ。それに、『あまんじゃく』はもう撮了していたので、ぜんぜん大変じゃなかったですね。ただ、(『あまんじゃく』が)どんな作品になっているのかな?というのは気にはなっていましたけどね。
――唐沢さんが演じる秋津渉(あきつわたる)というキャラクターはどんな人物なのでしょう。
単純に言うと出世レースに負けた人。仕事ができなかったわけじゃないけれど、空気が読めないところもあって、ちょっと変な奴(笑)。ふざけたところや厳しいところ、いろんな面を持っているキャラクターです。ただ、人って自分では気付かないだけで、もともと多面的なものだから、僕は秋津を特異なキャラクターとは思っていませんけどね。そんな彼がどんな活躍を見せるか、視聴者の皆さんに"面白い!"と思ってもらえるよう、とことん演じてみたいと思っています。
――まさにタイムリーなテーマですが、どういったところが見どころになってきますか?
「ハラスメント」という言葉が今、クローズアップされていますが、その流れを逆手にとって言いたい放題、被害者の顔をして主張している、というケースも結構多いはず。そういうところまで踏み込んで、このドラマで描ければいいなと思います。
――確かに、ハラスメントという言葉を盾に怠けている人も少なからずいるかもしれませんね。
問題なのは、怒られた方も、ちゃんと考えなければいけないということ。自分が何が間違いだったのかとか、きちんと認識することも大事ですよね。逆手にとって訴えるのは、一番いけないことだから。このドラマでは、理不尽なハラスメントを成敗していくだけじゃなく、その背景にあるものにも目を向けて、ハラスメントというものをもっと広い視野で考えるきっかけになれば、と思っています。ただ、脚本が井上由美子さん(『白い巨塔』『BG~身辺警護人~』他)なので、硬い部分の話もそれほどガチガチにならないというか、エンターテインメント性のある作品になっているので、楽しみながら観ていただけると思います。
――ゲームというワードが気になりますよね、とても意味深だなと。
解釈の問題だから、ゲームみたいなところもあるのかもしれないですね。本当に悪質なハラスメントの場合もあれば、その人のために言っているのに「怒られた」と受け手がねじれた解釈をする場合もある。「己を知る」という言葉があるけれど、それって自分のダメな部分も認めるわけだから、確かに傷つきますが、それを受け止められない人がハラスメントという言葉に逃げ込んで、挙げ句の果てには嘘をつく人も出てきていることも大きな問題だと思うんです。
――唐沢さんご自身は、いわゆる理不尽なパワハラを受けてショックを受けた経験はありますか?
僕がデビューした頃は、言ってみればパワハラだらけだったかも(笑)。理不尽なことも随分言われたけれど、同時に、自分のためになるアドバイスもあったので、その言葉だけを拾って、あとはスルーしていました。聞いている振りをしてね。そういうの、うまいから(笑)。 "なるほど"とか言って聞き流し、良いことを言われたら"それいただき!"みたいなね。そういうしたたかさも大事。今の子は"怒られていること"だけに意識がいってしまい、良いことを言ってもらっていても気づかないことが多いのかもしれない。とにかく謝って、この場を早く過ぎてくれれば・・・というその場しのぎでは、成長しないと思うんですよね。
――自分で見極めていく力も大事だと?
そうですね・・・あ、一つだけ忘れられないことがあった!まだぜんぜん売れていない頃に、(前会社の)マネージャーと一緒に仕事先へ挨拶に行って、名刺やプロフィールなどを渡していたんですが、それをその場でゴミ箱に捨てられたことがあって。これは絶対に忘れませんね(笑)。
――そんなドラマのようなことが実際にあったんですね。
やった方は覚えていないかもしれませんが、やられた方は忘れませんからね。いじめっ子、いじめられっ子というのがあるでしょ?いじめっ子は「そんなことあったかな?」なんて言うんだけれど、いじめられた側は絶対に覚えている。ただ、それをバネにしてがんばってきたところもありますが。
――逆に、今でも忘れられないグッときた言葉(または行動)はありますか?
まだ若くて売れない頃、先輩によく食事をおごってもらっていたんですが、「お前は金を出すな。その代わり、お前に後輩ができた時にはおごってやれよ」と言われたことが心にずっと残っていて、それは今も実践しています。あとは「一緒に仕事をするスタッフを大事にしろ」とかね。当たり前のことですが、そういうことをちゃんと言ってくれる先輩がいるっていうことはありがたいことですよね、財産です。
――最後に本作の楽しみ方を唐沢さんの言葉で。
秋津という主人公がくだらないことをやったり、訳のわからないことをやったりするけれど、そういう姿を見ながら、「バカだなぁ」と思って観たり、「おかしなヤツだなぁ」と思って笑ったり、最後は「熱い男だなぁ」と思って感動したり・・・そういった"感情の揺れ"みたいなものが詰まっている作品だと思うので、落ち込むことがあったら、これを観て元気を出していただければ。『あまんじゃく』は、嫌な上司を思い浮かべながら観るとスカッとしたけど、この作品はどうかな?まぁ、見方は自由だからね(笑)。
『ハラスメントゲーム』は、毎週月曜夜10:00テレビ東京系にて放送。BSテレビ東京では金曜夜9:00から。また、動画配信サービス「Paravi(パラビ)」でも配信中。
(C)テレビ東京 (C)Paravi
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