動画配信サービス「Paravi(パラビ)」にて独占配信中の『SPEC サーガ黎明篇 サトリの恋』で、主人公・サトリ役を務める女優の真野恵里菜がインタビューに応じ、恩師・堤幸彦監督と再びタッグを組んだ本作への意気込みを語った。
本作は、ドラマ『ケイゾク』『SPEC』の「SPECサーガ完結篇」として、同じくパラビで独占配信中の『SICK'S 恕乃抄』に続く新シリーズ。人の心を読むことができるSPEC HOLDERの一人、サトリ"こと星慧(ほしさとり/真野)の若き日の姿とSPEC 発現のルーツに迫る。
――サトリ役は、真野さんのターニングポイントになったキャラクターだと思いますが、今、改めて、どんな思いを抱いていますか?
ハロー!プロジェクトでデビューし、音楽活動と同時にお芝居もやらせていただいてたんですが、最初、何をどうがんばればいいのかわからなくて。とりあえず、自分なりに野望を持つしかないと思って、「いつか地上波のドラマに出る!」という目標を心の中で掲げたんですが、それをサトリ役で叶えてくださったのが堤さんでした。もともと『SPEC』の大ファンだったので、まさか自分がその世界に入れるなんて思ってもみませんでしたね。まさに、本格的に役者として歩みだすきっかけをくれた思い入れの強い役です。
――大好きだったドラマだけに、気合いが入ったのでは?
そうなんです。嬉しさのあまり気合いが入りすぎて、体調崩し、撮影が中断してしまったこともありました。最初は1話だけのゲスト出演だったんですが、その後も劇場版やスペシャルドラマにも出させていただいて。結構、ファンが多かったんですよね。真野恵里菜というよりもサトリのファンが(笑)。それからは、サトリちゃん、サトリちゃん、って声を掛けられるようになり、今も言われ続けていたんです。こんな長く愛される役ってなかなか経験することはできないので、ありがたいことだなと思いましたね。
――相当、インパクトがあったんですね。何が魅力だったんでしょう?
堤さんが私の性格を見抜いていて、それが役にうまくハマったのかもしれません。『SPEC』の前に、堤さんの演劇ユニット「キバコの会」の舞台で何度かお世話になっていたんですが、どちらかというと、気が強くて、Sキャラの役を堤さんからいただくことが多くて。言ってみれば、サトリもそんな感じじゃないですか。見た目はゴスロリ(ゴシック&ロリータ)ファッションだけれど、言うことは結構キツイですからね(笑)。
当時、劇中でサトリがAKB48さんの歌を歌っていたら、冷泉さん(田中哲司)が「ハロプロにしろよ!」って注文をつけるところも、かなりザワついたと思うんですよ。一番、触れにくいところにサトリという役を通して触れてきたので、そこも反響が大きかったかもしれませんね。「真野ちゃんの本心も入っているんじゃないの?」とか、当時は言われましたけど、それも『SPEC』の世界だから笑って許せるし、面白いなと思いました。
――そして、8年の時を経て再びサトリを演じるわけですが、なんと物語がSPEC HOLDERになるまでの前日譚。真野さんは年齢を重ねて、サトリのもっと若かった日に戻るという不思議な現象ですが、演じてみていかがでしたか?
まず、何年も経つのに、衣装が当時のまま、キレイに残っていたのが嬉しかったですね。当時の方が少しふっくらしてはいたんですが、「あ、入った!」という喜びもありましたし、「制服、まだ着るか!」みたいな不安も正直ありましたが、『SPEC』の世界って、逆にリアルじゃなくていいというか、そこに女子高生のリアルさを求めなくていいと思っているので、割と気楽にサトリ役には入っていけました。
――サトリの衣装がすごくお似合いです。鏡をご覧になったときはどう感じました?
笑えました!スタッフの皆さんは、自分たちが心配していたよりも「意外といいね」みたいな感じでしたね。いろんな種類の「お~!」が飛び交っていたので面白かった。堤さんも「いけるね」と褒めてくださったので、「これでいいのかな」って(笑)。
――今回、いろいろなキャラクターがサトリに絡んで来るそうですが、主役を務めながらの返しが大変そうですね。
とにかく皆さん、キャラがすごいんですよ。サトリも変わっている子ですが、関わってくる人たちがそれをさらに上回る濃さなんですよね。だから、視聴者の方々は胃もたれするんじゃないかなと(笑)。今回、主役ということでお話をいただいているので、ちゃんと物語を進めなければいけないし、軸にならなければいけないのですが、皆さんが遊び心いっぱいのお芝居をされていると、「いいなぁ」っていう気持ちが芽生えて、ちょっぴり嫉妬もしました。でも、サトリの作品のためにいろんなキャラクターが集まってくれたことはすごくうれしかったし、私がサトリをやらせていただいているからこそ見える景色もありましたので、「しっかりと今の自分を100%出さなければ」と、背筋が伸びる思いでしたね。
――共演者がまた、ツワモノ揃いですから大変だったと思いますが、笑いを誘発されたりとかはなかったですか?
笑いを誘うというよりも、勝手に笑ってしまったのが温水洋一さん(笑)。以前、舞台でお世話になっていて、その時は愛に苦しむ役で、そんなに笑いはなかったんですが、今回は完全に笑わせに来ていて。真剣にやらなきゃいけないんですが、可愛いというか、愛おしいんですよ。「なぜ、温水さんにこんな格好をさせてしまうの?」「なぜ、こんな飾りを頭につけさせてしまうの?」とか、いろいろ考えていたらツボに入っちゃって。しかもそれが、悔しいくらい似合っている。もう、完全に負けたと思いましたね(笑)。
――ということは、堤さんの演出がより過激になったという感じですか?
いや、全く変わってないです。そこがとても懐かしかったし、以前よりも自分が早く対応できているところもうれしかった。私の演技を見ながらそれに堤さんが乗っかってくるんですが、「私も負けない!」みたいな、いい緊張感がありましたね。「何がくるんだろう」というドキドキ感もあれば、私が面白いことをすると、それを採り入れてくれるときもあるし。なんというか、このドラマを二人三脚でやってきた感覚はありますね。
――恩師的なところもあるので、「成長した姿を見せたい」という気負いはなかったですか?
むしろ逆ですね。素直に甘えられるというか、「無理!」とか普段の現場ではなかなか言えないんですが、堤さんには「そんなの無理ですよー」って冗談でも言えちゃうし、「いや、できるでしょー!」って言われると、「いや、ぜんぜんできるし!」みたいなやりとりもできる。親子の会話じゃないですが、心を許せるし、甘えられる。でも、正直に言うと、ほんのちょっぴり成長したところは見せたいなぁというのはありましたね。本当に不思議な関係。私のファンの方も「見つけてくれてありがとう」って堤さんにすごく感謝しているんです。
――8年前に比べて、ご自身で成長を感じる部分は?
あまり周りを気にしなくなりましたね、アイドルをやっていたので、一人でも多くの方に「かわいい」と思ってもらわなきゃいけなかった分、撮影現場やスタッフさんの前でも、どこか「アイドルの私がここに来ました」というのが出てしまって、それによってちょっと遠慮がちになったり、自分をよく見せようとしたり、100%お芝居に打ち込むことができなかった。でも、ハロプロを卒業して「お芝居が何より大切」だということがわかってからは、かなり変わりましたね。集中するシーンでは自分の空気を作らせていただいたり、スタッフさんと談笑するときもあれば、離れて役に集中する時もあったり、自分のペースで役者というお仕事に向き合えるようになったとは思います。
――(サッカー日本代表の柴崎岳選手と)ご結婚されて、これから"女優・真野恵里菜"はどう変わっていくのでしょう。
自分自身も、そこはやはり意識しますね。結婚して「妻」と呼ばれるようなると、今後、そういう役が回ってきてきた時に、観られ方も変わってくるじゃないですか。今までの私だったら、「ちょっと違うな」とかダメ出しされても、独身の私が既婚者を演じているから仕方がない、というところもありましたが、これからいろんな経験値も増えていくので、それは活かしていきたいなと思いますね。例えば、料理をする時間も多くなるでしょうから、主婦の役が来た時にちゃんと包丁さばきを観せられるように修業しておくとか。これからも女優業は続けていくつもりですが、生活と仕事は隣り合わせにあり、どちらもつながっているものなので、双方の経験を大事にできたらな、とは思いますね。
――でも、ご結婚されてすぐのお仕事が『サトリの恋』って、すごいめぐり合わせですね。
そうなんですよね。撮影が始まった頃はまだ独身だったんですが、視聴者の方々にはそういう風に見えるので、若干恥ずかしいです(笑)。でも「これが私の仕事のスタイル」というのが、よりわかってもらいやすいので、逆によかったかなとも思いますね。
――本作は「パラビ」で独占配信されるのですが、近年のこうしたメディアの多様性についてどのような感想をお持ちですか?
私もお仕事していると、テレビがなかなか観られないので、配信サービスに複数登録しています。テレビだと録画してもどんどん溜まる一方だし、家にいないと観られない、という制約がありますが、配信サービスだと、結構移動時間を利用して観られるし、ここのこのシーンだけをもう一度見たいとか、すぐに選べたりするので便利ですよね。役者としては、最近、テレビはコンプライアンス的に制限がとても厳しいので、割と自由にできる配信ドラマはやりがいがあるし、面白いです。『サトリの恋』も、当初90分だったのが、いろいろなギャグが注ぎ足されて、結局、120分くらいになって全6話になった(笑)。
テレビだと尺が決まっていますから、泣く泣くカットしたり、このシーンはツッコミすぎたから控えておこうとか自粛したり、そういうところも配信ドラマなら思いっきりできる。お金を払って、選んで観てくださる方々なので、だからこそ尖ったものができるし、面白いなと。そこで人気に火がついて、逆にテレビでやっていただけるとうれしいんですが・・・でもきっと、ピーだらけになっちゃうかもしれませんね(笑)。
――真野さんのこれからの目標を教えてください。
役者に関しては、健康であれば、何歳になってもできるし、求めてくださる方がいる限りは、人の心を動かす仕事として触れていたいと思っています。ただ、このタイミングで結婚をさせていただいたので、わがままではあるけれども、いったん、一人の女性としての生活を経験させていただくことになりますね。また、彼のおかげで、海外で生活するチャンスもできましたので(インタビューはスペイン移住前)、いろんなことを吸収し、人としても女性としても成長して、また何年後かに女優活動を再開できたらなと思っています。
――それでは最後に、『サトリの恋』を真野さんの言葉で思いっきりPRしてください。
サトリのSPECがなぜ発動したのか、という瞬間がこの作品を観ればわかるし、また、SPEC HOLDERそれぞれにいろいろな悩みがあることもわかるので、そこは大きな見どころですね。そして何よりも、堤さんがキラキラした青春ものを撮ってくださったというところは、私だけでなく、堤作品のファンにとってはとても新鮮だと思います。前半がキラキラした青春ドラマ、後半がSPECに目覚めるサスペンスドラマ、トーンの変化も楽しめるので、1本で2倍ドラマを楽しめるのも魅力。
さらに、本作は、『SPEC』シリーズとしての前日譚でもあるので、これを観ると、「シリーズの全てが観たくなる」というループから抜けられなくなると思いますよ!
SPECサーガ黎明編『サトリの恋』は、動画配信サービス「Paravi(パラビ)」にて独占配信中。
(C)Paravi
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