麻雀をこよなく愛し、プロ級の腕前を持つサイバーエージェント社長・藤田晋氏(45)。インタビュー前編では、現在テレビ東京で放送中(毎週水曜深夜1:35より/『Paravi(パラビ)』にて全話一挙配信)の麻雀ドラマ『天 天和通りの快男児』の魅力と見どころ、さらには麻雀から学んだビジネスの極意などをたっぷり語っていただいた。今回はその後編。前編はこちら

今年10月に立ち上げた麻雀のプロリーグ「Mリーグ」への熱い思い、動画配信サービスの可能性と未来、さらにはお子さんとのほっこりするような麻雀話など、公私にわたる藤田社長の思考や人柄をたっぷりとお届けする。

なお本作は、ギャンブル漫画の第一人者・福本伸行氏の伝説的麻雀漫画を実写化した人間ドラマ。麻雀に命を懸けた男たちの手に汗握る心理戦をスリリングに描いている。キャスティングも原作のイメージを再現すべく、主人公の天貴史役に岸谷五朗、天のライバル・赤木しげる役に吉田栄作、天と赤木を尊敬する井川ひろゆき役には古川雄輝を起用した。

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地上波を超える動画配信サービスの時代が必ず来る

――パラビでは、ドラマ『天』の放送・配信に絡めていくつか麻雀に関わるコンテンツを配信することになりましたが、藤田社長だったらどんな番組が観たいですか?

麻雀といえば、かつては博打の代名詞だったわけですが、今はイカサマなんか誰もできないし、賭け麻雀で食べていこうなんていう人もいないわけです。確かに『天』はエンターテインメントとして最高に面白いドラマですが、その一方で、麻雀の新しいクリーンな世界を描いたドラマも今後作ってほしいな、というのは希望としてありますね。ちなみに今月から始まった「Mリーグ」は「ノー・ギャンブル宣言」をしていて、賭け事に関わったら追放されるというルールになっています。

――「Mリーグ」についても少しお聞きしたかったのですが、初代代表理事(チェアマン)として手応えはいかがですか?

熱狂的なファンも増えきて、かなり盛り上がっています。その盛り上がりがどれだけ外に波及していくかが課題ですね。AbemaTVの中では、プロ野球並みの数字を取るのですが、まだまだ一部のコアなファンで成り立っているので、麻雀を知らない人、あるいは「Mリーグ」を知らない人に、いかにわかりやすく伝え、興味を持っていただくか、というところでしょうね。本当はスーパースターが出てくるのが一番うれしいですが。

――昔のプロ野球中継のように、月、火、木、金のレギュラーでやっていますよね。

もともとの発想が、プロ野球のストーブシーズンに、それに変わる娯楽を提供したい、というところからスタートしているんです。サッカーだと週一くらいしかできませんが、麻雀なら毎日やれますからね。しかも、対局がどれだけかかるかわからないので、時間の制限がないネットTVととても相性がいいんですよね。

――ということは、スポーツのプロリーグを参考にされたというか、かなり意識されて「Mリーグ」を作ったということですか?

そうですね。最近の麻雀のプロは、今回の『天』や『麻雀放浪記』なんかもそうですが、ああいう「悪カッコいい」世界から一線を引くために、みんなスーツを着て、将棋のような世界を目指してがんばってきたんですよ。ただ、僕が見る限り(経済的に)限界が来ていたのも事実。そんな中、イン・スポーツが注目され始め、オリンピックでも麻雀が競技として検討されている波が来たので、それを生かして「スポーツ」として盛り上げていこうと考えたわけです。

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――ゆくゆくは下部組織を作って、裾野を広げる計画もあったりするのでしょうか?

そこはちょっと迷っている部分ではあるのですが、やはり、プロ野球みたいに参入企業を絞ったほうが、よく覚えられるし、選手名も頭に入ってくるんじゃないかと思っているんですね。Jリーグのように、J2、J3までいくと、多すぎて名前が全く覚えられない、という現象も起きてくるので、今は絞っていく方向で考えています。ただ、プロの人たちが、「次のMリーガーになりたい」と期待しているので、なんとか間口を広げたいという思いもあるので、悩むところではありますね。

――ビジネスモデルとしては、どういう風にお考えなのでしょう。

もちろんスポンサーをつける、という構図になるとは思いますが、現代的なスタイルで考えるならば、「会員権」というものを年間単位で販売して、チームの公式サポーターとしてその人たちを優遇していく、というのもいいかなと思っています。例えば、年間1万円の会費で1,200人集まれば、会員組織を運営する人材が確保できるので。そういった、サポーターを大切にする仕組み作りも今、検討中です。

――舞台演出も、スポーツのプロリーグを意識した感じになっていますよね。これも藤田社長のアイデアなんですか?

いつもはそんなに出しゃばらないようにはしているんですが、「Mリーグ」に関しては、かなりこだわりがあるので、細かいところまで踏み込んで注文をつけたりしていますね。AbemaTVでライブ配信されている対局をパブリックビューイングで、ワイワイ大勢で観る、というのも僕のアイデアなんですが、あれが結構、盛り上がるんですよ(笑)。

――今、AbemaTVのお話が出ましたが、その流れでお聞きしたいのですが、パラビでは、ドラマの二次利用とともにオリジナルの番組もこれから積極的に作って行きたいと思っています。藤田社長は、こういった動画配信サービスの未来をどのように捉えていますか?

基本的にパラビさんのような動画配信サービスは、競合他社とは思っていないんですね。そういった立ち位置で言わせていただければ、リニアで放送してネットで配信する、という流れは、『天』のようなドラマにとっては、ある意味、正解なんじゃないかなと思います。かつて、ホリエモン(堀江貴文氏)が「放送と通信が融合する時代が来る」と言っていましたが、それは100%間違いなくて、いずれ地上波は役目を終えて、動画配信サービスの時代が来ると思います。ただ、外国資本の企業が日本でどんどん拡大していくのは、国としてどうなのかな?とは思いますね。できれば、パラビさんをはじめ、国内勢にがんばっていただいて、日本のメディアを盛り上げていっていただけたらと思いますね。

――麻雀関連番組なども含めて、より充実したサービス、コンテンツをご提供できるようにがんばりたいと思います。ところで藤田社長のお子さんは、まだお小さいとは思いますが、ご自宅で一緒に麻雀で遊んだりするんですか?

雀卓はありますが、子どもとはやらないですかね。今5歳なんですが、AbemaTVで僕が麻雀を打っている姿を観ているので、仕事だと思っているようです(笑)。本人は「やりたい」とは言っていますが、まだちょっと早いですかね。ただ、昔は「子どもが麻雀なんて」というイメージがありましたが、「Mリーグ」を始めるちょっと前辺りから、小学校の麻雀教室が活況になってきていて、見方がかなり変わってきたようですね。老人ホームでもボケ防止に活用したり、「健康麻雀」というものにも注目が集まっているようなので、ぜひ、その流れを加速させたいですね。

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(取材・構成/編集部、坂田正樹)

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