佐久間宣行(テレビ東京)×藤井健太郎(TBS)による局の垣根を越えた" 夢の対談 "第2弾。人気バラエティ番組を多数手掛けるプロデユーサー二人に、そして昨今盛り上がりを見せる動画配信サービスについて、さらにはバラエティ番組の未来について語ってもらった。
――パラビでよく観られている番組が、必ずしも地上波で視聴率がよかったものとは限らないのですが、「有料」「無料」について、お二人はどのようにお考えですか?番組制作に何か影響を与えているのでしょうか?
佐久間:藤井さんが作るような番組は、情報量がすごく多いので、配信サービスでもう一度ちゃんと観たいというのは、あるでしょうね。あとは・・・この言い方が正しいかどうかはわかりませんが、わざわざDVDを買って観たいとか、パラビでもう一度観たいと思わせるバラエティ番組は、やっぱり「作品性の高さ」があるんじゃないですかね。
藤井:そうですね。今、地上波の番組を作る上では、視聴率的な面と、その作品性みたいなものをなるべく両立させるように制作に取り組んでいますが、有料の配信サービスだけに特化したものを作る場合は、視聴率に配慮する必要がなくなるので、番組の質も変わってくるでしょうね。例えば、『Amazonプライム』でダウンタウンの松本人志さんがやっている『ドキュメンタル』。あの番組を地上波で放送してもいい数字は取れないと思うんですが、すごく面白いコンテンツですし、若い人にもちゃんと人気があるので、ああいう番組が視聴率にとらわれずビジネスとして成立しているというのは、バラエティの幅も広がっていいことだと思いますね。
佐久間:確かに、『ドキュメンタル』のように企画性があって、シリーズで終わるバラエティ番組をパラビなんかでもやったら面白そうだね。
藤井:それまでのバラエティ系配信コンテンツは、テレビバラエティの劣化版でしかなかったので、その意味でもあの番組は革命的でした。単にコンプライアンス的にというだけではない、正しく「地上波では観られない」というジャンルを拓いたところはありますからね。
――もしもパラビでバラエティ番組を作るとしたら、お二人ならどんなことをやりたいですか?
佐久間:個人的な趣味で作っていいんだったら、『SICKS~みんながみんな、何かの病気~』ような、コントとバラエティとドラマが組み合わさったものを、またやってみたいですね。笑いとミステリーが融合したようなものが面白いなと思っているので。
藤井:僕もドラマを含め、普段やっていない新しいことにトライしてみたいなとは思って企画は出してるんですが、やはり予算の問題も出てくるんですよね。自分がやりたいこと全てとなると、どうしても予算的に厳しくなって・・・。
佐久間:なるほどね、予算の問題は出てきますよね。僕は藤井さんの『人生逆転バトル カイジ』が好きなので、アドベンチャーゲームの『ポートピア連続殺人事件』をドラマ化したらどうかなって思ってるんだけど。ほとんどの人が犯人を知っているから、逆に面白いかなと。上に何て言われるかわからないけれど、これはマジで企画書を書こうと思ってます。
藤井:『カイジ』も本当はネット配信のコンテンツとして、シーズン1で10話完結くらいのものを作って、毎話1人ずつ落ちていくのが一番番組に合っているような気がしますからね。
佐久間:そう考えると、『ゴッドタン キス我慢選手権』なんかも、単純に4話くらいで一気に配信できる状態の方が面白いかもしれない。
――お話を聞いていると、何か現実的な可能性を感じますね。
藤井:僕や佐久間さんは、ネット配信に向いている番組をたまたま作っていたので、そういうフィールドが広がったことは、喜ばしい時代だなと思いますね。
佐久間:例えば、『6人のテレビ局員と1人の千原ジュニア』という企画があったじゃないですか。ああいうものだったら、TBSとテレビ東京のそれぞれの色が出るので、共作すると面白いと思いますね。僕と藤井さんはもうやったから、やりたくないけど(笑)。
藤井:確かに。同じ企画でTBS版とテレビ東京版があって、それを1話ずつ順番に配信するとか。
――今年に入って、『とんねるずのみなさんのおかげです(した)』や『めちゃ×2イケてるッ!』など、昭和から続く長寿番組が終了しました。今、バラエティ番組はどのような局面を迎えているのでしょう。
佐久間:バラエティ番組というより、視聴の現状になってしまいますが、この間、あるクイズ番組をやった時に、ネットで見ると、若い人たちの感想がたくさん上がっていたんですが、視聴率にはあまり反映されなかったんですよ(苦笑)。テレビで観ていない人たちをちゃんと測定しないと、ある程度、上の層が見ないと視聴率には跳ね返ってこないという状況が続きますね。 それを如実に表したのが、『ゴットタン マジ歌選手権』。ライブのチケット1万2千枚は即完売したんですが、10代が7%、20代で40%、30代で30%と若いんですよね。視聴率の情報と全く違うわけです。
藤井:『水曜日のダウンタウン』なんかも、まさにそういう状態ですね。
佐久間:もっと極端になると、SNSに上げた違法動画を観て、「面白かったです!」っていう感想が届くことも。そこだけ300万回再生になっていたりして、この状況ってどうなの?って思うことも多々ありますね。
藤井:音楽では、収入のメインがもうCDの売り上げじゃなくて、ライブとグッズにシフトしてきていますけど、ファンがある程度いればちゃんと潤っていますよね。だから、何かうまくビジネスとして成立するやり方を、誰かが見つけてくれるといいんですけどね。
――ネットの普及によって、お二人が入社された時から、テレビを取り巻く状況がかなり変わってきましたが、未来をどう捉えていますか?
佐久間:今、お話したように、従来の視聴率の測り方だと、10代、20代で観ている人たちを数字上、キャッチできていないという問題はありますが、番組作りの面白さは全く変わっていませんし、相変わらず一番視聴者にリーチできるのは、地上波のテレビだと思っているので、絶望はしていないですよ。パラビから発注を受けて作ることも、今後出てくるかもしれませんが、いろんなパターンのものを作っても、それがお金になる時代が来たな、という感じですね。
藤井:僕もそうですね、あまりデメリットは感じていないです。先ほども言いましたが、自分がこれまで作ってきた番組が、たまたまネット配信などに向いていそうなものだった、ということもあるし、今までだったら商品にならなかったものも商品化する道ができてきている気がするので、作り手としては、むしろ好転しているというか、いい状況になっているんじゃないかなと思いますね。いちユーザーとしても、面白いものが増えているなと思って観ていますし。
佐久間:過去の面白いバラエティ番組も、違法動画じゃなく、パラビのような配信サービスなどで視聴者が簡単にアクセスして観られるのも、すごくいいことだと思いますね。
今回の対談では、2人の人気バラエティプロデューサーが、局の垣根を越えて、バラエティ番組の過去・現在、そして未来を大いに語ってもらった。動画配信サービスの登場を「番組制作の幅が広がった」とポジティブに捉えている2人が、ネットオリジナル番組をパラビで制作する日も遠くないかもしれない。佐久間、藤井、両氏の活躍から今後も目が離せない。
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