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イエバエを利用したムスカの事業は、迫り来る食料危機への対処だけでなく、世界的なゴミ問題の解決につながる可能性も秘める。「ESG投資」「インパクト投資」などが注目されるなか、昆虫を主役とするクリーンテックへの関心は今後、どれだけ高まるだろうか。流郷綾乃CEOは事業領域の拡大を示唆しながら、投資家たちの意識変革に期待を寄せる。

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瀧口:この飼料と肥料を使って実際どんな事業モデルを考えていらっしゃるか伺っていきたいんですが。

流郷:基本的には3つの軸があって、「有機廃棄物」と「飼料」と「肥料」です。これは三つの軸でもあるし、3つの産業に分かれているということでもあるんです。飼料と肥料というのは認知度が上がって、それらを許容する生産者がいてくれたら販売できるというのは想像できるじゃないですか。

じゃあ有機廃棄物というのはどうやって普段は処理されているんですかというところですが、ゴミというのは通常焼却処分であったり微生物の発酵処理であったりするんですけど、ゴミに対して実は皆さんお金をかけて処理しているんです。そこが結構抜け落ちちゃう方が多いんですけど、それこそ家庭ゴミの処理って税金の中に含まれているから、これお金かかってるわーって思いながら捨てている人っていないわけです。

でも皆さんが人類として生活する中で、ゴミというものは行政なのか誰かなのかは別として皆さん処理にお金を払っているし、商品を買うように目に見える形でお金を渡しているわけではないですけど、お金をかけて処理をしているということがまずあるんです。なので我々のキャッシュポイントで言うと、ゴミを処理するということも非常に大きなキャッシュポイントですね。

瀧口:社会的コストがゴミ処理に多くかかっているということですよね。

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流郷:そうです。飼料と肥料が出てくるので、それ自体を販売していくということでキャッシュポイントとして3つあるという状態です。なので流れで説明すると、まず畜産農家さんたちが畜産業を営む中で出てくる畜産排泄物を収集してくる、もしくはそこの近くでプラントを建設したりするんです。そのプラントの中に我々のソリューションが入っているんですけど、畜産排泄物を入れて出てきた飼料と肥料を飼料マーケット、肥料マーケットに関わる方々に販売していくというような流れになります。

瀧口:鮮やかですね。

村山:まさにサーキュラーエコノミー(循環型経済)で循環していくようなイメージで分かりやすいですね。

瀧口:サスティナビリティという文脈でクリーンに作られたエネルギーやクリーンに作られた食べ物を選ぼうということについては消費者として意識がだんだん出てきていると思うんですけど、ゴミの処理というところまでは頭が全然回っていなかったですね。それにひとつひとつお金がかかって処理してもらっているんだなと。循環の後半部分が考えられてなかったですね。

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流郷:ゴミにはなかなか考えが及ばないと思いますね。それこそフードロスとかは皆さんもよく話題にされると思いますし、一般の消費者の方々も食の部分なのでピンと来る方もたくさんいらっしゃると思うんですけど、フードロスよりも畜産の排泄物の量の方が圧倒的に多いんですね。年間8千万トンくらい出ているので、フードロスに比べると3倍、4倍の世界なんです。

村山:とてもユニークな会社だと思うんですけど、どんな人が働いているのか気になりますね。スタートアップもいろいろなジャンルがあって、AIであればデータサイエンティストだったり、自動運転だったりイメージしやすいんですけど、ムスカと言う会社ではどういう専門性を持った人が集ってこういう面白いことをやっているのかなと。

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流郷:先ほどもお伝えしたように領域が広いというのもあって、三つの柱それぞれの領域のスペシャリストというのが必要になると思っています。それが必ずしも全員揃っているかというとまだ揃っていない部分もあるんですが。まずコア技術であるところのハエの専門家。創業者の串間(充崇)だったり、前身の企業からずっとハエの研究をされている人達のチームがあります。

村山:ハエを愛している人たちですね。

流郷:愛してくれていると思います(笑)。あとやはりビジネスモデルとしても新しいものなので、我々としてやっていこうとしているのがサプライチェーンの構築や環境インフラの構築です。今までなかったものを作っていこうというところで、うちのCOOの安藤(正英)はもともと三井物産出身で資源エネルギーなど環境インフラを作ってきた人間がジョインしてくれています。そういう専門性の持った人間がビジネスデベロップメントという形で関わっています。

そしてスタートアップなのでファイナンスと言う意味でファンディングがかなり重要になってくるので、そこに長けている人間。CFOの小高(功嗣)がいたり。今トータルで役職を含めて15名。業務委託を含めると20名体制でやっていると言う形です。

村山:インフラとして作っていかなくてはいけないという意味では壮大ですよね。