「スタートアップ」が未来を創る――。話題のスタートアップや、イノベーティブな起業家をいち早く取り上げる「ビジネスにスグ効く」経済トークショー『日経STARTUP X』。PlusParaviでもテキストコンテンツとしてお届けする。
スタートアップですら急成長期に陥りがちな大企業病。組織の中の風通しが悪くなったり、社員一人ひとりの当事者意識が希薄化したり。Smarの利用度が低い日本の企業社会において、自社サービスをいかに普及させていくのか、その意気込みも聞く。
瀧口:組織作りにおいて大事にされていることで権限移譲が大切とおっしゃっていましたが、実際どのようにされてるんですか?
宮田:本当に権限移譲は大事だと思っていてどういう権限移譲をしているかというと、私はもともとWEBディレクターなのでプロダクト側の人間なんです。サービスを出した半年のタイミングでプロダクトにノータッチになる。あとは開発チームに全部任せたりということをよくやっています。今200名規模の会社になっていますが、各マネージャー達もどんどん現場のメンバー達に権限を渡して彼らに大きな意思決定をしてもらうというのをチャレンジしています。
事業が大きくなってくるとやることも増えますし、より専門性を求められるんですよね。なので自分よりもより専門性のある人を採用する。この人は自分よりもシステムには詳しくないかもしれないけどファイナンスに詳しいとか、自分よりビジネスに詳しいとか、そういう形で自分よりどんどん専門家を採用して彼らにやってもらった方がうまくいくぞということで渡していくのが大事かなと思っています。
また、優秀な人達ってToDoで仕事を渡されても嫌がるんですよね。こういう風にやってくださいって渡されると嫌がる。なのでToDoではなくて課題を渡すようにしています。具体的なタスクというよりも「今会社に課題があるので、この課題を何とかしてください」というような渡し方をすると結構頑張ってくれるなというのがありますね。
瀧口:なるほど。問題だけ提起してどう解決するかは任せますという方がいいんですね。
宮田:そういうやり方をしています。あとは当たり前ですけどあまりチェックしない。やはりチェックされすぎると人間やる気をなくしてしまうので、任せたからには信じてやってもらう。なかなか難しいんですけどそれを頑張ってやっています。
原:権限移譲って不安とかないですか?例えば過去に失敗をしたり。
宮田:3年前くらいの話なんですけど、プロダクト側は簡単に権限移譲できたって話をしましたが、営業に関しての権限移譲はすごく失敗しまして。営業チームができた当初は3名くらいの小さいチームだったんですがうまくいかなくて。毎週営業の定例ミーティングをやっていたんですけど、社長対策をされているんじゃないかっていうくらいに聞くことに対してスパッと答えてくるんですよね。
原:読まれているみたいな(笑)
宮田:ただ建設的な議論が全然出なくて、これはいかんと思ったタイミングがあったんです。なので思い切ってその会議に出るのをやめてみたところ、その会議がすごく盛り上がって建設的な議論がされて、各営業がすごく成長して売上の成長スピードも上がるということがあったので、専門家じゃない人間が関わるのは本当によくないんだと思いました。基本的には自分よりも営業が得意な人、そのジャンルの専門家に任せるのがいいなということを身を持って経験したことがあります。
瀧口:いろいろサービスが増えていく中で、「これは誰がやるべき仕事なんだっけ」みたいなことが増えてくると思うんですけど、そういう時はどうされていますか?
宮田:我々の会社の中でもたらい回しみたいなことが発生する時があるんです。「これは営業の仕事なの」「カスタマーサクセスじゃないの」「いやプロダクトマネージャーの仕事じゃないの」と。最近社内である社員が面白いことを言っていたんですが、「たらい回しが2回くらい起こったらこれは新ポジションを作る合図じゃないですか」と。それは面白いなと思いました。
たらい回しを経て新しくできた弊社の中の"PMM"と呼んでいるポジションがありまして、プロダクトマーケティングマネージャーというんですが。一般的にプロダクトマネージャーって関わる範囲がすごく大きいんですよね。製品作りの指揮もするし、一方でビジネスサイドの橋渡しもする。幅が広い難しいことをやるんですけど、彼らと営業やカスタマーサクセスの間でボールが落ちると言いますか、誰のボールか分からなくてお見合いが始まって物事が進まないということがあるんですよね。
そういう時には新しいポジションを作るチャンスじゃないかということで、そのボールを誰が持つべきかと役割を決めてあげて、評価を紐づけるということをやるように工夫をしています。
原:それが新しいポストを作るサインだと捉えるというのは面白い見方ですよね。