20200221_nikkei_30.jpg

瀧口:最初から順調だったんですか?

宮田:そうですね、比較的順調だったかもしれないですね。思い返してみると大変だったのは、前例がないサービスだったのでどうやって作ったら本当にお客さんの困りごとを解消できるかという、最初の製品をどう作るかということがまず難しかったです。あと、なかなか人事の人以外は気づきにくい課題なので、エンジニア採用の時などは苦労しました。エンジニアの人にはなじみが薄いジャンルなので「本当にそれって大変なんですか?」「ニーズあるんですか?」といった感じでエンジニアに限らず投資家の方に伝えるのも苦労した部分かなと思います。

瀧口:何か事業の追い風になったようなことや、タイミングなどはあったんですか?

宮田:先ほど申し上げた2015年に国がAPIを出してくれて書類の自動作成だけじゃなくて、電子申請ができるようになったことが一つ。あと2015年にマイナンバー法というものが施行されて、企業が従業員のマイナンバーを集めなくてはいけないという法律ができたんですけど、その法律自体が紙ではなくてクラウドで集めてもいいですよという法律になっていて、企業の皆さんが紙ではなくてクラウドで集められるサービスを探し始めた年でもあります。

マイナンバーって社会保険関係では必ず書かなくてはいけないので、SmartHRにその機能がついていると合理的だよね、ということでそれも一つの追い風になったと思いますね。

原:それは単なるラッキーだったんでしょうか。それともそういう動きが来るだろうと見越していたんですか?

20200221_nikkei_31.jpg

宮田:これはラッキーでしたね(笑)。当初はマイナンバーはスコープに入っていなくてあまり気にしなかったんですけど、これは切り離せないものだなと分かったので、かなり早い時期からマインバーを回収して書類に自動で印字させる機能なども開発しました。

原:"持ってる"起業家ですね(笑)。

瀧口:本当ですね。時代との巡り合わせがばっちりです。SaaSという言葉を聞いたのはこの3~4年くらいだと思うんですけど、導入される企業としては「こういうのがあってよかった、ありがとう」といったスムーズな感じだったんでしょうか。

宮田:抵抗があってなかなか導入してもらえないのでは、みたいなことをよく言われますが、意外とそんなことはなくて。皆さんそれ以上に圧倒的に困っておられて、手書きの書類やハンコなど・・・お客さんの中には手書きし過ぎてペンだこができている方もいらっしゃったんですよね。それが楽になるなら今すぐ入れたいということで、存在を知ってさえもらえたら導入されるケースはすごく多いです。

原:その導入の判断というのは人事系になるんでしょうか? それとも経営陣でしょうか。

20200221_nikkei_32.jpg

宮田:その会社によるんですけど、100人未満の会社だと担当者がこれ入れたいということで決まるケースもありますし、1000人以上の会社だと経営企画の方だったり管理部門の部長だったり、そういう方も導入に携わるケースが多いです。

瀧口:働き方改革も進める一環でそういった煩雑な業務をもっと簡潔にするという文脈になるんでしょうか。

宮田:会社のペーパーレス化ですとか、デジタルトランスフォーメーションですとか、働き方改革の第一歩としてまずは人事部の残業を減らして、より"攻め"の働き方改革をするために、誰がやっても付加価値が変わらないようなペーパーワークの簡略化から手を付けてくださる会社さんに選んでいただくことが多いです。

瀧口:後発のスタートアップで、SmartHRさんと同じような事業をしている会社さんもあると思うんですけど、そういったところも気になったりしますか?

20200221_nikkei_33.jpg

宮田:気にならないって言ったら嘘になりますが、それよりもお客さんの方に向き合うのが結果大事だと思っておりまして。後発の会社さんはSmartHRを真似されているんですが、新しい機能開発は我々の方が得意だと思っております。先ほど苦労した話をしましたが、前例のないものを作っているんですよね。それが得意な会社だと思っていますし、そこに楽しみを見出せる会社なので、あまり気にせずにどんどんお客さんの課題を解決できる新しい機能、製品を作っていきたいと思っています。

瀧口:この分野というのは先行者利益というのはあるんでしょうか。

宮田:そうですね。解約率が低いので(笑)。

瀧口:一度いいと思って愛されるサービスになると長いんですね。

原:使えば使うほどスイッチングコストが高くなるというか、なかなか他にいかなくなりますよね。

20200221_nikkei_35.jpg

宮田:先ほど言いましたように解約率がすごく低いんですよね。2%の解約率でも4年強使っていただける計算なので、一旦どこかほかの製品が入ってしまうとリプレイスというのはすごく難しくなります。なのでちゃんとビジネスとして成り立つためには、お客さんがある程度勝手に使い始めるくらいに良い製品を作らないといけないので、我々としてはより良い製品作りを頑張っていきたいと思っています。

(C)Paravi