「スタートアップ」が未来を創る――。話題のスタートアップや、イノベーティブな起業家をいち早く取り上げる「ビジネスにスグ効く」経済トークショー『日経STARTUP X』。PlusParaviでもテキストコンテンツとしてお届けする。

従業員の雇用契約や社会保険の諸手続きなど、企業の人事部の業務はいまだ「紙とハンコ」のスタイルが一般的。年末調整の時期には書類の山が出現し、社員らも面倒な作業から逃れられない。こうした業務をクラウドの活用で劇的に簡素化するSaaSビジネスとして展開し、NEXTユニコーンの規模まで急成長したのがSmartHRだ。事業モデルを着想したきっかけや成長の秘密を宮田昇始CEOに聞いた。

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瀧口:さて、今回の『日経STARTUP X』ですが、ご一緒させていただくのは日経ビジネス副編集長の原隆さんです。原さん、よろしくお願いします。

原:よろしくお願いします。

瀧口:そして本日のゲストをご紹介します。企業向けにクラウド人事労務ソフトを提供する株式会社SmartHRのCEO、宮田昇始さんです。宮田さん、よろしくお願いします。

宮田:よろしくお願いいたします。

原:宮田さんは何度か一緒に飲んだことがあるんですが、ここ最近急成長で。日経のNEXTユニコーン調査でも注目されていますよね。いつの間にか大きくなって。いつの間にか、と言ったら失礼ですね(笑)。

宮田:そんなことないです(笑)。

瀧口:一気に急成長というところを今日は詳しく伺っていきたいと思います。まずSmartHRさんが提供されているサービスはどういうものか教えていただけますか?

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宮田:企業向けにいわゆるSaaS(サース)、クラウド型のソフトウェアを提供しております。何ができるかと言いますと人事部門のペーパーワークやハンコなどをなくすサービスです。デモ画面をお見せしながら説明しますと、従業員さんが入退社する時や産休・育休の手続きに社会保険の手続きをするんですが、この数が非常に多くて年間1億5千万件くらいの手続きが行われているんです。

瀧口:日本全国で1億5千万件ですか。

宮田:そうです。その手続きは大量の難しい紙が必要だったり、いろいろな役所に行って並んで書類を出したりするんですね。うちの会社ではお客さんがこういうことに困っているんだということを理解するために、新入社員は自分の入社手続き書類を自分で出しに行くということをやっているんですが、先日港区の年金事務所に行ってもらったところ2時間くらい待って結局書類を出せずに帰って来るということがあるくらい、いまだにアナログな世界なんです。それを変えるようなサービスを作っています。

こちらは入社手続きをする時のデモ動画ですが、従業員を一人採用して雇用するだけでも、これだけたくさんの書類が必要なんです。

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瀧口:すごく多いですね。

宮田:こういった書類がSmartHRを使っていただくと必要なくなります。会社がやることは非常に簡単で、新入社員の方をメールアドレス等で招待していただくだけです。そうするとその新入社員に「入社手続きをしてください」という案内が届きます。新入社員は入社を待たずして自宅にいながら自分の手続きを進めることができます。インターフェースも簡単なので、初めてやる方でもすぐにできます。

あとは会社側でその方のお給料や、人事が入力するべき内容を入力するだけで必要な書類が全て出来上がるような仕組みになっています。これまで大量の紙を手書きして役所に持って行って並んでいたということを、オンライン上で簡単にできてしまうというサービスを提供しています。

瀧口:今まで紙でしなくてはいけなかったことを、役所がネット上でできるように対応し始めたということですか?

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宮田:我々がサービスを出したのが2015年ですが、総務省が運営するe-Gov(イーガブ)というサイトがありまして、"E-Government"の略称ですね。このサイトがAPIを公開したんです。APIは何かと言いますと役所のシステムと我々の民間のメンバーが使っているシステムが繋がれる仕組みでして、そのAPIというシステムを介してSmartHRから役所に電信しているような仕組みになっています。

瀧口:APIって例えば他にはどんなものに使われているものなんですか?

原:APIってインターネット業界では昔からあるインターフェースだと思うんですけど、一番分かりやすいのは例えば食べログなどを見た時に、地図をクリックすると画像にGoogleマップが出てきますよね。あれは食べログが作っているわけではなくてGoogleが提供しているものなんですけど、それをAPIでつないで食べログの中で同じサービスとして見せるように提供しているんです。API自体は昔からあるんですけど、なかなか政府などの環境が整っていなかったところが2015年に整ったということですね。

瀧口:APIが開放されたということですね。

原:民間同士は今までも連携が多かったんですが、それを政府と連携するということが今のトレンドかなと思いますね。