20200117_nikkei_11.jpg

瀧口:そこですぐに「じゃあAIだ!」と、もともと大学時代にされていた研究を思い出されたんですか?

渡辺:当時すぐにピンとは来ていなかったです。2008年頃の経験なんですけど、当時はまだまだAIという時代ではなくて冬の時代でしたし、AIでどこまで解決できるかというところはまだ具体的なイメージがつかなかったんです。その後、2010年から2011年にかけて今で言うディープラーニングという技術が世の中で徐々に認められ始めて、いろいろなことができるようになってきたということが、特にアカデミックな業界で騒がれ始めたんです。

そういったAIの技術自体が進化し始めたということと、2011年あたりはiPhone3が日本に入ってきて広がり始めたという時代なんです。どんどんスマートフォンが広がって、それと同時にSNSが非常に広まってきて個人の情報というものがより取りやすくなり、データが蓄積されるようになってきたという時代の節目のようなものを感じまして。データの話と技術の進化の話、もともと抱いていたアパレルに対する業界問題意識がちょうど重なり合って、起業しようと思い立ったのが2011年でした。

瀧口:ディープラーニングの時代というのを感じ取られたというのも、ずっと専門の領域をウォッチされ続けていたからということですよね。

渡辺:そうですね。実際に就職して仕事をしている中では業務としてAIを使うことはなかったんですけど、趣味のような研究活動はやっておりました。そういったことを続けていたからこそ、ディープラーニングというAIの変化に割と早い段階でキャッチアップできたかなと思います。

瀧口:今でこそスタートアップって皆さん知ってる言葉になったと思うんですけど、2011年ってまだ少し早いですよね。

渡辺:そうですね。まだまだ今とはスタートアップを取り巻く環境も違いました。

瀧口:資金調達環境も。

20200117_nikkei_13.jpg

渡辺:おっしゃる通りです。私も当時自分の勉強のためにお金をつぎ込み過ぎてあまり貯金がなかったものですから、なけなしの300万を資本金にしてたった一人で会社を立ち上げたわけですけれども、そこから資金調達を行って事業のプロトタイプを作ったり。ここにくるまでは資金面もそうですし、業界の人脈もない中でやってきたので人脈作りなど困難な局面がたくさんありました。

瀧口:すごいファーストペンギンですよね。起業される時もそうですし、この分野もこれからの分野というところで、まさにアントレプレナーという感じがします。

渡辺:世の中に無い技術や仕組みを生み出すというところに非常にこだわりを持ってやっていますので、まだ誰も成功していないところにチャレンジしている分、楽しい反面、自分たちが切り開いて答えを見つけていかなくてはいけない難しさはあるなと感じています。

瀧口:今まで起業されてから一番のピンチはどういう時でしたか?

20200117_nikkei_15.jpg

20200117_nikkei_17.jpg

渡辺:数えればきりがないくらいたくさんあるんですけど(笑)、例えば起業して5年くらいは資金繰りは経営の重要課題でやっていて、毎週口座の残高やその後のキャッシュフローを気にするような時代は結構長く続いておりました。最悪な時は会社としての預金の残高が残り2万円くらいになってしまって。個人の預金通帳の残高より低いところまで追い込まれた時期もありました。そういった中でめげずに何とかやって、助けてくれる方も幸いにもたくさん見つかって今に至っています。

瀧口:一番ブレイクスルーを感じた瞬間というのはここまでどうでしたか?

渡辺:やはり人との出会いであるとか、企業様との出会いというのは要所要所のターニングポイントごとにあって。設立当初に何もない頃から投資家として支援してくれたような個人投資家の方との出会いだったり、今のAIのソリューションの礎を築いてきたようなアパレルの大手の企業様との提携であったり、そういった要所要所の出会いはピンチを救ってくれたと思いますね。

瀧口:SENSYさんの名前というのはアパレル業界では皆さん知っていらっしゃるんでしょうか?

松本:大手さんが顧客さんでいらっしゃるということで、徐々に知れ渡っていると思います。追随する同業他社がこの1年で随分出てきているような気がしますね。

瀧口:その道を開かれた存在ということですね。

松本:そうですね。まだまだ同業他社といってもどちらかというとトレンド予測などが中心で、需要予測まで踏み込んでいるかというとちょっと毛色がまた違うような気がするんですが。

渡辺:弊社のアプローチは企業様のお客様が次のシーズンにどういったものを必要とされるかという需要予測をやっているんですけど、他のサービスさんでは例えば世の中のマクロのトレンドとして「こういうカラーや素材が今流行っている」とか、そういった予測をされている起業さんもいらっしゃいます。この二つは似て非なるものでして、我々としては競合というよりは補完関係にあるようなソリューションになっていくんじゃないかと思っています。