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SENSYが開発した「人の感性を学ぶ」人工知能(AI)が活躍の場を求めるのはアパレル業界だけではない。個人の味覚を分析し、おすすめの商品を提案する機能を生かして「食」の分野に攻め込もうと実証実験に取り組んでいる。「AIソムリエ」の普及、そして生活用品や金融など他分野での活用へと、渡辺祐樹CEOは次なる一手を模索している。

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瀧口:前回に引き続き人の感性を学習するAIをアパレル業界に提供している、SENSY株式会社の渡辺祐樹CEOにお話を伺っていきます。渡辺さん、よろしくお願いします。

渡辺:よろしくお願いします。

瀧口:ここからは渡辺さんのヒストリーについて伺っていきたいと思います。渡辺さんは慶応義塾大学の理工学部ご出身ということですが、そこではどんな研究をされていたんですか?

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渡辺:人工知能のアルゴリズムの研究をしておりました。

瀧口:今でこそAIや人工知能と盛り上がっていますけど、その時代の人工知能というのはどんな感じでしたか?

渡辺:いわゆる冬の時代と言われるタイミングで、あまり人工知能という言葉自体も研究の中で使ったりする時代ではなかったですね。

瀧口:どうしてその中で人工知能の研究をしたいと思われたんですか?

渡辺:もともとは物理学が好きで大学に入りました。システム工学という分野になるんですが物理の問題を人間が手の計算で解くのではなく、コンピュータを活用して人間ができない問題をどのように解いていくのかということに非常に将来性や面白さを感じて、その道に入ったという感じです。

瀧口:かなり理系的なマインドをお持ちの中で、今AIという部分でSENSYがやっていることとつながってくるわけですか。

渡辺:そうですね。技術としてはそこで学んだことを今でも使っております

瀧口:そんなバリバリの理系でいらっしゃる中で、経営も志されて公認会計士の資格も取得されたと伺っております。

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渡辺:大学時代は2週間くらい研究室に寝泊まりして研究ばかりしていたんですけど、やっている研究が基礎研究だったので、世の中の何かの課題を解決するための研究というよりは何かに使えるかもしれないからやるような研究だったんです。研究自体は面白かったんですけどやっていく中でもっと世の中の具体的な課題を解決したり、足りないものを生み出したりしたいという思いが強くなりまして。新しいビジネスや新しい産業の仕組みを作りたいと思い、起業を志すようになりました。

瀧口:卒業されてすぐ起業されたわけではないんですか?

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渡辺:ではないですね。その後3社ほど経験しました。1社目は「フォーバル」という通信系の商社で、当時は営業やマーケティングのスキルや、当時のフォーバル創業者の大久保(秀夫)社長からさまざまな起業家精神や経営のノウハウを学びました。その後はコンサルティング会社に移りまして経営のコンサルティング、マネージメントを行い、会計士の資格もその当時取得しました。

瀧口:その時に取られたんですね。

渡辺:やはり理系出身でお金やファイナンスが身近にはなかったので、そういうところが理解できないとコンサルティングの業務の中で経営者の方とお話するにも能力不足ですし、自分のビジネスを考えるという観点でも必要なスキルだなと思い、勉強しました。

瀧口:企業に勤めていらっしゃった時もずっと起業に向けての道と考えて働いていらっしゃったんですか?

渡辺:そうですね。大学4年生の時に起業を志して、そこから7年間のサラリーマン時代は常に起業を目指して自分に足りないスキルや経験を補っていくための期間でした。

瀧口:IBMにもいらっしゃって、それも起業に向けての道のりということですね。起業するタイミングとしては、いつ頃ビジネスモデルを思いつかれたんですか?

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渡辺:今のビジネスの最初のきっかけになった体験は、IBMでコンサルティング業務をやっていた頃にあります。あるスポーツアパレルのメーカーさんで、さまざまな財務分析をして企業の中期経営計画策定をご支援するというプロジェクトのリーダーとして入らせていただいたんですけど、僕にとっては初めてのアパレル業界との接点でした。その時企業の財務状況を分析する時にものすごい在庫を抱えていらっしゃって、そういった在庫の山が無駄になってしまうことが非常に多いという課題を聞いたんです。

それがその企業単独の問題ではなくて業界にわたる問題だということも知って、そういった問題を何とか解決できないかなというところが原体験になっています。