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瀧口:先ほどのアパレル業界の話に戻りますが、松本さんはずっとアパレル業界を見ていらっしゃって、今のアパレル業界の現状というのはどうご覧になりますか?

松本:ニュースや新聞でも連日のように大手さんの店舗の大量閉鎖ですとか、4期連続赤字ですとか、いろんな業績不振にかかわる報道が出ていますけど、2018年に取材させていただいた時にまさに在庫の過剰ということが問題になっていました。国内のアパレル市場って1990年前後に15兆円くらいあったのが、今は9兆円を切っていて、4割くらい減っているんです。その一方で国内ではこの30年間で衣料品の供給点数が2.3倍までふくらんでしまっている。ますます需要と供給のギャップが拡大しています。

なのでSENSYさんの需要予測というのは活躍の場があると思います。やはりある形の服が売れたら一斉に同じトレンドで作る。これだけ店舗数が多いと同じようなものが市場にあふれてしまうのでやはり残ってしまいます。適正な物を適正な時に作るという感覚へとなかなか抜け出せず、ずっと大量生産を続けてきたツケが今の業績不振を招いているということですね。

瀧口:実際AIの成果はどのくらい生み出せていますか?

渡辺:すでにアパレル企業様では大手の17ブランドくらいとお付き合いをさせていただいていて、セレクトショップのナノ・ユニバースを展開しているTSIさんや、傘のマークで有名なアーノルド・パーマーのレナウンさんなど。そういった企業様と一緒に今、在庫の効率化をテーマに取り組ませていただいております。

瀧口:実際の手応えというのはどうですか?

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渡辺:まだまだ改善する部分は残っているんですけど、例えば廃棄ロス。無駄な在庫を15%くらい削減できそうだとか、そういった実証実験結果は出てきております。先ほど9兆円産業という話がありましたけど、今大体世の中で必要とされているニーズが9兆円、これに対してアパレルは20兆円くらいのもの作りをしている。そういった業界なんです。無駄になってしまっている約半分の在庫部分、これをいかに効率化ができるか。そして効率化した分企業様が強くなっていきますので、この強くなった部分を消費者に還元していくという流れを作っていきたいと思っております。

瀧口:SENSYさんは2011年に創業しているということですね。松本さん、ここまでの歩みとして取材されてみてどうご覧になっていますか?

松本:私が取材させていただいた2018年がまさに本格稼働というところだったと思うんですが、そこから何か新しい課題は見えてきましたか?

渡辺:いろいろと企業様に引き合いをいただいたり導入いただいたりしてお付き合いも広がっているということと、一方で導入が始まったからこそ分かるAIの使い方の難しさとか、そういったことも見えてきたり。あとはアパレルでもともと作ってきたものが他の業界、先ほどのスーパーやドラッグストアでも同じような効果が生み出せそうだということが発見できたり。多くの気付きがあったこの1年だったと思います。

松本:導入企業さんの意識改革という部分では、アパレルさんは旧来型の体質も残っているように思いますけど、何か意識改革は進みましたか?

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渡辺:やはりAIというソリューション自体がまだまだ新しいですし、従来のシステムとはまた違う使いにくさといいますか、注意点もあって。過度にAIに期待をし過ぎたり、逆に抵抗感を持ちすぎてしまったりする企業様も中にはいらっしゃるんですけど、AIは魔法の杖でもないですしガラクタでもないので、きちんとした距離感でAIと付き合っていただくためには、使い方を人間が定義をしてあげて、適切に育ててあげればきちんとパフォーマンスが出るものですから、そういった意識というか使い方の部分まで入り込んで一緒になってAIの成果を実現していくという付き合い方が必要だなというのは、ここ1年くらいで実感しているところです。

瀧口:たしかにちまたで"AI脅威論"が出ていたり、過度にセンシティブになりすぎる部分もありますね。AI予測でアパレルのファッションの需要予測をされていると思うんですけど、その予測をされすぎることによって、消費者にとって今まで出会うことのなかった個性的な商品に出会う機会を逃すということは起きてこないんでしょうか。

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渡辺:やり方次第かなと思っております。従来の需要予測の考え方では起こりがちかなと思うんですが、例えばお客様をマスとして捉えて、このマスのお客様のマーケットにもっとも売れる商品って何なのかということを統計的に突き詰めていこうとすると、全ての企業で同じ答えになって、みんなが同じものを作ったり、その過程で本当は少数だけど必要とする人がいる商品が切り捨てられているという傾向が起こりうるかなと思っております。

しかしもともと弊社が創業した時のコンセプトでもありますが、そういったニッチなニーズもきちんと拾っていけるような社会や産業にしていきたいという思いがありまして。そのために必要なのはお客様をマスとして見るのではなく、一人のお客様としてどういったものをこのお客様が必要とされているのかということを理解した上で、あまり売れないけど本当に欲しい人がいるということの予測がきちんと立つアイデアが見つかれば、実は従来は切り捨てられたかもしれないけど、たった100枚でもちゃんとニーズがあるということが分かればその100枚をきちんと作って売るということで採算性が取れるということにつながると思います。

そういった小さいニーズも拾っていくような社会にしようとやっているのが、弊社の需要予測の考え方です。