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深刻な需給ギャップを背景にアパレル業界が不況に苦しんでいる。いかに売れ筋を読み、在庫の適正化を図るか。そんな課題を解決しようとSENSYが提案するのが、感性工学の知見を取り込み、需要を予測する人工知能(AI)の活用だ。どんなデータを分析に生かすのか。これまでの実証実験で示された実力とは。渡辺祐樹CEOが分かりやすく解説する。

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瀧口:今回お邪魔しているのは、人の感性を学習するAIを開発してアパレル業界などに提供している東京・渋谷のSENSY株式会社です。CEOの渡辺祐樹さんにお話伺っていきます。渡辺さん、よろしくお願いします。

渡辺:よろしくお願いします。

瀧口:今回ご一緒していただくのは、「NIKKEI STYLE Men's Fashion」編集長の松本和桂さんです。松本さんはファッション業界、アパレル業界を長くみていらっしゃると伺いました。松本さん、よろしくお願いします。

松本:よろしくお願いします。

瀧口:松本さんは以前も渡辺社長に取材されていると伺いましたが。

松本:ちょうど1年前、2018年の12月くらいだと思うんですが、平成の30年間を業界別に振り返るという企画でアパレルを担当しました。その時に渡辺社長が、2018年はAIを使ったアパレルの需要予測の元年であるとおっしゃっていたのが、とても印象に残っています。

瀧口:なるほど。また詳しい話を深掘りしていただけたらうれしいです。まずはSENSYさんはどんなことをしていらっしゃるスタートアップなのか、ざっくりと伺いたいのですが、ずばりどんな会社ですか?

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渡辺:まずSENSYというのは弊社で開発しているAIの名前で社名にもなっているんですが、人のセンスや感性を解析するというコンセプトで独自開発している技術になります。人の気持ちの部分を予測することによって、世の中の物の売れ方や情報のコミュニケーションの在り方などの分析に向けてAIを提供するという会社になります。

瀧口:人の気持ちはAIで解析できるんですか?

渡辺:そうですね。100%ではないんですが、人の気持ちのメカニズムを解析するという感性工学という学問がありまして、そういった学問のノウハウや知見を取り入れながら、それをAIで再現するということをやっています。

瀧口:感性工学ってあまり聞き慣れない言葉ですね。

松本:感性を数値化して見える化するということですか?

渡辺:そうです。学問自体は結構歴史のある学問なんですけど、昔からさまざまな情報やデータ、アンケートなど、人間の行動・感情の変動要因を解析・分析するという技術があります。昨今はそういった学問分野にもAIの技術が取り入れられているという背景があります。

瀧口:気持ちをAIで分析されちゃうというのは、いよいよ未来が来た感じがしますよね。実際はどんな情報を読み込んで分析するんですか?

渡辺:感性工学の考え方でもあるんですけど、人が商品を買いたいとか、お店に足を運びたいと思う背景には何かしら人の気持ちに影響を与える要因があるだろうという考え方に基づいておりまして、そういった要因をデータで集めてくるということになります。例えばその人が見たであろう商品の画像データや読んだであろう文章の情報、体感したであろう気温、その他さまざまなトレンドを含めたデータを集めてきて、人一人の気持ちを分析するということをやっております。

瀧口:具体的に想像できるように、例えばアパレルだと何のデータをどこでどう集めるということになるんですか?

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渡辺:まずアパレルはお客様が何か商品を買ったというデータ、いわゆる購買履歴を過去何年分か集めて、"何月何日どこのお店に行かれてこの商品をいくらで買った"というデータをたくさん集めます。さらにデータに合わせてECサイトをそのお客様が見たタイミングであったり、見た商品で何月何日にこの商品を検討されたというデータを集めてきたり、その時に買われた商品、見た商品の画像の情報、文章の情報、この時この店舗はどういう天候だったのかなというデータを集めてつなぎ合わせるということをしています。

瀧口:松本さんは1年前に取材されたとおっしゃっていましたが、最初このビジネスモデルを聞いた時はどういう印象でしたか?

松本:ファッションの業界ではAIは難しいと言われていて、今も言われているんですが。

瀧口:好みも人によって違ったり、たまには自分の好みから外れたものを買ってみたいということもありますよね。

松本:逆にお薦めしてほしいというのもありますね。

渡辺:アパレルは非常に多様性が高い業界かなと思っておりまして、弊社の分析対象はもともとファッションからスタートしたものが今では食の分野になっていたり、家具、インテリア、日用品など幅広いライフスタイルに渡っているんですけど、その中でもファッションはお客様のニーズや志向性も違いますし、それに合わせるかのように提供される商品もバラエティ豊かですので各企業様、各ブランドごとに提供する商品も違いますし、毎シーズン入れ替わっていく。食品や日用品にないような特徴がファッションの難しさとしてあるのかなと思います。

瀧口:ブランドもシーズンによって特徴を変えてきたりしますしね。このシーズンは好きだけど、このシーズンは好みではなかったり。先ほどアパレル以外もということをおっしゃいましたが、食というのは例えばスーパーなどで活用されているんでしょうか。

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渡辺:そうですね。最近ではスーパーマーケットやドラッグストアの大手企業様とお付き合いが広がってきております。ファッションで培った需要予測の技術を応用して、スーパーの食品廃棄問題などにも活用できるんじゃないかという実証実験が複数スタートしております。

瀧口:正確に需要を予測するということでフードロスを防げると。

渡辺:そうですね。明日牛乳やお豆腐を何個このお店に用意しておけばもっともロスがなく在庫を回せるかという問題については、食品の場合はアパレルとは別の問題として賞味期限が非常に短い。この何日間の中で需要に合わせて入荷を行わないとどうしても廃棄ロスになりがちなので、そこの需要をいかに読んでいくのかというのが非常に重要ですね。