「スタートアップ」が未来を創る――。話題のスタートアップや、イノベーティブな起業家をいち早く取り上げる「ビジネスにスグ効く」経済トークショー『日経STARTUP X』。PlusParaviでもテキストコンテンツとしてお届けする。
金属加工の受発注作業を効率化するプラットフォームを構築するうえでは、パートナーとなる優秀な町工場のネットワーク拡大と、それぞれの実力を示すデータの蓄積が必須だ。そこはまさに「足で稼ぐ」世界。工場の現場に飛び込み、地道に信頼を築き上げていくプロセスが欠かせなかった。加藤勇志郎CEOとネットワークづくりの先頭に立つ幸松大喜本部長が、ITとは対照的な泥臭い業務の苦労を明かす。
瀧口:さて、前回に引き続き金属加工業界に革命をもたらすキャディ株式会社にお邪魔しています。原さん、引き続きよろしくお願いいたします。
原:よろしくお願いいたします。
瀧口:今回は前回の技術責任者の小橋昭文CTOに代わり、同じく創業メンバーの幸松大喜さんをお迎えしています。幸松さんよろしくお願いします
幸松:よろしくお願いします。
瀧口:幸松さんの役職はサプライパートナーサクセス本部長ということなんですが、これはどういったお仕事なんでしょうか。
幸松:キャディの仕事は金属部品をお客さんに届けるということなので、当然それを作っていただく加工会社様のご協力が必要になります。そういった加工会社との関係構築を行ったり、注文していくシステムを作ったりする所です。
サプライパートナーサクセスという複雑な言葉をあえて使っているのは、通常はお客さんを満足させるための仕組みを作ろうという考え方ですが、キャディはそれだけではなくて実際に物を作るパートナーさんにも成功していただきたいと考えているので、加工会社さんの成功がお客さんのためにもなるし、社会全体もよくなるという思いを込めて。サプライパートナーサクセスという名前になっています。
原:カスタマーサクセスという考え方があると思いますが、それのパートナー版だと。
幸松:そうです。
瀧口:サプライパートナーをサクセスさせる本部長ということですね。そして幸松さんは加藤さんとはマッキンゼーの同期ということで・・・今日はお洋服もお揃いですね(笑)。
原:顔も似ているなと思っていました(笑)
瀧口:雰囲気も似ていますよね。
加藤:(笑)。
幸松:それは言われたことないですね(笑)。
瀧口:同期でもともと入社した時から仲が良かったんですか?
幸松:同じプロジェクトをやったことはないですが、内定者研修で同じチームだったり、マッキンゼーの社内のベンチャーコンペティションに一緒に出たりしました。
瀧口:加藤さんが起業される時に幸松さんを誘ったんですか?
幸松:偶然みたいなところもあって。
原:どちらがどちらというわけでもなかったのですね。
瀧口:会社としての成長では2018年末に10億円の調達もされているということで、急成長中ということですよね。
原:すごいですよね。
瀧口:この躍進の背景として先ほどおっしゃっていたパートナーとの関係作りが大変だったんじゃないかと思いますが、そのあたりのご苦労はいかがでしたか?
幸松:最初の関係構築がすごく大変でした。最初は会社のホームページもなかったんです。そうすると「キャディ」という横文字の会社だし、皆さん気になって調べてくれるんですけどホームページも出てこないので「本当に大丈夫なのかな?」と思われるじゃないですか。そういう所からのスタートで。それでもキャディに可能性を感じてくれる会社さんはすごくありがたかったですね。その後徐々にお客さんの実績もついてきて、実績があるならやってみようかなというお客さんも多かったです。
瀧口:それまで実際に工場には行かれたことはあったんですか?
幸松:実はキャディに入ると決めた後、3ヶ月間無償で町工場でタダ働きをさせてもらっていたんです。
瀧口:え! 実際何をしていたんですか?
幸松:本当にものづくりでしたね。例えば加工したばかりの金属製品にはバリっていうんですけど、端の部分にとげみたいなものがついているんです。それをそのまま使うと怪我をしてしまうので、バリをひたすら取る作業もしていました。それが意外と難しいし、工場の方がすごく器用にやっていたりして。でもある意味そういった地味だけれども大事な部分をないがしろにしていると、こういったビジネスをする中で「キャディって加工のこと分かってないよね」と思われてしまう側面もあるので、あえて時間をかけて理解するところからスタートしました。