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瀧口:そういう中で起業しようとしたとき、ご家族の反応はどうでしたか?

土岐:これは本当に大変でした。「気でも触れたか」と言われまして(笑)。保育園でこういう写真の事業をやりたいと言ったら、近くに保育園があるからまずそこで正社員として現場での修行を5年くらい積んでくれと。それがまっとうな形だからそれでもやりたかったらやってみましょうということだったんですけど、私の中ではずっと探していた人生のテーマが見つかったので、「今やりたい!」と無理を言って始めさせてもらいました。

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瀧口:最初は反対を受けていらっしゃったんですね。今はどうですか?

土岐:本当にいろいろな苦労をずっと横で見てくれていて。最近では妻が、自分が起業したいと言い出しました。

瀧口:本当ですか? 今度は奥様が。

土岐:「介護分野で」と言っていましたが、本当に分からないもんだなと思いますね。

瀧口:介護というのもまさに保育と同じように社会課題に向き合う分野なので、旦那様の影響を受けているところもあるかもしれないですね。

土岐:いろんな意味で「家族」をテーマにした場合、最終的には介護の問題に直面する。これもまた家族の問題だと思うんですね。そういうところも誰がどう支援していくのか、政府の問題だけじゃなくてスタートアップができる領域もあるだろうということもあって、根底の部分は妻と近しいところもあると思いますね。

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瀧口:そんな中、大型資金調達もされていますね。今年35億円の資金調達をされて、累計60億円ということですよね。この額は俯瞰で見るとどうなんでしょうか?

神先:かなり大きいと思うんですけど、35億ということで結構ファイナンスは苦労されましたか?

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土岐:今回のファイナンスに関しては一定のプロダクトや顧客基盤があったということもありましたので、既存株主の皆さん含めて応援していただけたかなと思います。ただこれだけの大きな資金調達をさせていただいた上で、何にどう使うのかということは株主としっかり議論させていただいています。特に今までのスタートアップは調達後にテレビCMをやる所もあったり。それも十分に戦略だと思うんですけど、保育園向けのテレビCMをやるということはいろんな業界のいろんな考えがあると思います。

その中で私たちは「キッズリー」というデジタル連絡帳の同業他社を買収させていただきました。スタートアップの中でM&Aを成長戦略としていく会社ってあまり多くなかったと思いますが、我々の資金調達は同時に他社の買収ということを検討しておりまして、それを同時に行ったことが特徴的だったと思います。

瀧口:今後も資金調達した分はM&Aに使われる予定ですか?

土岐:基本的には"スマート保育園"をどう作っていくかというプロダクトの開発、それからエンジニアを中心とした人の採用にしっかりと投資をして、社会インフラ、プラットフォームを作っていきたいと思います。その上で我々ではなく他社がやっていることが早かったりしたらM&Aも選択肢の一つとして検討していきたいと思います。

瀧口:それは国内の企業だけでなく、海外の企業もお考えですか?

土岐:海外もあり得ると思います。実際我々のデバイスのパートナーは海外に散らばっておりますし、体動センサーはシンガポールの保育園で一部使っていただいています。ジャパンスタンダードということでアジア中心に展開していきたいと思っていますので、当然海外のM&Aということも視野に入れていきたいと思っています。

瀧口:これだけ多くのデバイスが利用されてくると、プラットフォーム上にいろんなデータがたまってくると思うんですけど、各エリアや保育園ごと、海外と日本など、データを使った成長戦略などは描かれていますか?

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土岐:今回のファイナンスの中で株主としてエムスリーさんに入っていただきました。子供の命の安全を守っていく中で家庭でもお医者さんに相談したいという時に、エムスリーさんがやっていらっしゃるオンライン医療相談サービスというものを体動センサーと絡めて、ホームドクターという医療サービスをやっていきましょうと。

それから保育士の離職の問題をどうにか解決したいと、リンクアンドモチベーションさんにも株主になっていただいて、リンクアンドモチベーションさんのソリューションを活用して、保育業界に使えないかということも動き始めています。そういった我々しか持っていない子供のバイタルデータや発達情報、保育士の心の天気予報、こういうデータを我々だけではなくそれぞれトップ中のトップのソリューションを持っている会社と組ませていただいて、一つのソリューションにしていくことを、スマート保育園の中でやっていきたいと考えています。

神先:今まで保育園の中だけのデバイスやサービスだったものが、家に帰ったら家庭でもデータを生かして医療相談ができたり、周辺領域のプラットフォームに拡大していくようなイメージですね。

土岐:我々のサービスは保育業界に育てていただいた部分もありますが最終的には家庭に届けていって、パパやママ、おじいちゃんおばあちゃんに子供の情報を送ってみんなで子供を見守っていくというインフラを作っていきたいと思います。バイタルデータについては小児科医が持っている電子カルテや、例えばベビーシッターや専門家の方をつないでいかないと子供のケアはできないと思いますので、社会インフラの基盤のような形で活用していきたいと考えています。