瀧口:ここまで三つのデバイスを見せていただきました。これらの統合的なプラットフォームがあるということですが、どういうものなんでしょうか。
土岐:こちらがデジタル連絡帳です。連絡帳というのは昔から手書きで今日の食事がどうだ、睡眠がどうだと書くわけですが、例えば先ほどの体動センサーで取った睡眠時間や体温データも連絡帳に転記されて、連絡帳というのが情報のハブになっていくわけです。
瀧口:それは保育士さんが書くんですか?
土岐:保育士さんと保護者の皆さんが書きます。今皆さんは家庭での様子はこうだったということを手書きで書いていますね。
瀧口:神先さんも書いていらっしゃるんですか?
神先:書いていますね。毎日連絡帳を持って帰ってきます。
瀧口:それを読まれているんですか?
神先:そうですね。メッセージを書いたり。
瀧口:それがデジタルになると。
土岐:これが実際のアプリで、家庭のお父さんお母さんが使うアプリ画面になります。こちらに子供の様子を入力していただきます。基本的にはここで家庭からの様子を入れていただいて、ボタンを押すだけで保育園に提出されます。保育園側からは管理画面を見ると子供たちの名前がずらり並んでいて、例えば今日の写真を入れたい場合はここから写真を選ぶだけで、子供の写真が見られるようになっています。
瀧口:ということは、さっきのカメラで撮った写真を載せることもできるんですか?
土岐:今システムの統合を行っているところではありますが、今後そういった情報を全て連携するということを実現していこうと思っています。
神先:紙の連絡帳には当然写真なんてないですから、子供の写真がデイリーで見られるのはいいですね。
土岐:最終的に完了したらボタンを押すだけで、保護者に対して一斉に送信ができる。このように子供たちに関する情報を一元管理して、保育園の中だけじゃなく保護者にも伝えて、保育園と家庭をどんどんつなげていくプラットフォームを作ろうとしています。
瀧口:ここまで見てきた三つのデバイスのデータも、全てこの中で見られるようになっていくということですか。
土岐:そうです。
瀧口:体温もわかるし午睡の状態もわかるし、写真も見れる。親御さんにとってもありがたいですよね。
神先:普及してもらいたいですね。
土岐:我々はこれらのサービスを全て導入していただくことによって、「スマート保育園」というものを実現していきたいと考えています。これらのデバイスが先生の業務をサポートすることで、保育士さんに心と時間にゆとりを持っていただいて、結果的に子供の情報を家庭にお伝えして、保育園と家庭をどんどん近づけていくようなプラットフォームができるだろうと思っていまして、スマート保育園を実現していきたいと思っています。
瀧口:実際にどれくらいの保育園がこのシステムを導入しているんですか?
土岐:今我々のサービスを導入いただいている保育施設は、全国で約6200施設ございます。今国内の民間保育園は大体1万5千施設ありますので、4割くらいの保育園が何らかの我々のサービスを使い始めているという状況です。
瀧口:そうなんですね。実際保育士さんの負担が軽くなったことが数字で表れているものはあるんですか?
土岐:保育園の規模にもよりますが、例えばこの体温計1本で考えますと保育園全体で1日何百回も測りますので、体温を測ったり書いたりする時間がこれ1本導入するだけで、月あたり5時間位削減されていきます。午睡チェックも手書きで書いてる時間がなくなりますので、これによって数時間の時間が削減されて、全部足すと1ヶ月あたり少なくても数十時間が削減できるということになります。写真は保護者の方に販売させていただいているので、売上の一部を保育園に還元させていただくことで保育士さんの処遇改善につなげたり、時間だけじゃない後押しもさせていただいております。
子供が保育園にいる状態で四つの主体で皆さんを幸せにしていきたいと思っていて、一つは子供の命の見守りという部分に関してもっと質を上げていく。二つ目はそれを見守る保育士の方々。手書きの書類が多すぎたり、サービス残業が多い。三つ目はそれを運営する園長先生や施設側もあまり高すぎると使えない、難しすぎても使えないという面をもっとこなれたサービスでやっていく。最後は家庭の皆さんです。我が子を預けてどういう様子だったのか、家の中でどういうことを子育てとしてやるべきなのか。
これを保育園とつなげていくことができれば最終的に一番子供が幸せになると思いますし、今特に問題と言われている保育士不足の問題、待機児童の問題も解決できればと思いますし、最終的にはもっと家族が豊かになっていく社会を実現できればと思います。
瀧口:子育て中の友人から話を聞くと、保育士さんに子供の育て方を教えてもらっているということが多いんですよね。そういうコミュニケーションに保育士さんの時間を使えるようになるといいなと思いますよね。
土岐:おっしゃる通りです。保育士さんが持っている子育てに関するプロのノウハウというものがあります。それはやはりしっかり子供と向き合って、しっかり子供の発達を支援していくということにあるんですね。そのことにもっと集中していただきたいと思いますし、そのために保育士さんに心と時間に余裕を持って、子供と向き合う必要があると思っています。それができればそのノウハウを当然親御さんにもお伝えして、それによってお父さんお母さんがもっと育児が楽しくなったり、もっと豊かな子育てが実現できると思っているので、誰かがやるべきだとずっと思っていたことを絶対に実現したいと思っています。
瀧口:保育士さんの余裕が子育てするお父さんお母さんの余裕にもつながって、少子化対策にもなってくるんじゃないかと。
土岐:結果として女性の社会進出といいますか。ママが子供を保育園に預けられないと日中仕事もできないですよね。ママを支えているのが保育士であって、保育士がハッピーになればママもハッピーになっていって、女性の社会進出という世の社会課題の解決に貢献していきたいと思っています。
瀧口:素晴らしいですね。次回は土岐さんのヒストリーについて伺っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
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