瀧口:親御さんはその写真をもらうことはできるんですか?
土岐:例えば連絡帳に写真を使っていただいたり、月末に写真の販売なども行っておりまして、インターネットで写真を閲覧、購入していただくことができるようになっています。
瀧口:神先さんはお子さんいらっしゃいますか?
神先:私は二人おります。
瀧口:おいくつですか?
神先:6歳と4歳です。
瀧口:まだ小さいですね、
土岐:保育園に行かれてますか?
神先:幼稚園に行っています。運動会の写真は買ったりしますが、日々の遊んでいる写真は今の幼稚園では手に入れることができないので、こういうデバイスで日々の写真が買えたら私も買いたいなと思いますね。
土岐:今までプロのカメラマンがハレの舞台の日に、運動会などの写真を撮ったりするのは昔からあったんですが、我々は日常の写真こそ大きな価値があると思っていて。ただ現場の先生方に手間かけちゃいかんなという思いで、手間なくみんなが求めている写真を残すことで新しいきっかけを提供していきたいと思っています。
瀧口:あと一番気になっていたのがこの人形なんですが、これは何でしょうか。
土岐:こちらは保育園の午睡中に使うものになります。
瀧口:午睡というのは何ですか?
土岐:午睡というのはお昼寝のことです。保育園でお昼寝中の間、特に0歳児を中心に子供がうつ伏せで寝ていると息ができなかったり、突然死が起きたりする。誰も望まない保育園での突然死というものを防いで、どうやって子供の命を見守っていくかというのが大きいテーマでした。今は先生が子供たちの体の傾きがどちらになっているか、5分おきにチェックして、手書きで矢印を書いています。
瀧口:5分おきに全員のお子さんの向きをチェックしているんですか?それは大変じゃないですか。
土岐:初めて見た時本当にびっくりしました。これはいわゆる監査資料となっていて、認可保育園は記録するのが義務付けられているんです。そうした時に手書きではなくて、子供の上着にセンサーを付けてもらうんです。
瀧口:おなかの辺りですか?
土岐:そうですね。おへその上あたりに付けてもらいます。実際付けるとどうなるかというと、この人形はひろみちゃんというんですが、「ひろみちゃんがお昼寝開始になりました」とセンサーが起動し始めるんです。そうするとBluetoothでデータがつながっているので、体の傾きの記録が取れるような形になります。実際に見てみましょう。今ひろみちゃんが仰向けで寝ていますという表示なんですが、仮にひろみちゃんがうつ伏せになると。
瀧口:表示が変わりましたね。
土岐:うつ伏せに変わりました。そういった形で体の傾きのデータが取れていくということに加えて、数字は子供の体動の大きさを示しています。
瀧口:体動というのは動きですか?
土岐:基本的には赤ちゃんは腹式呼吸ですので、おなかの動きが基本的には呼吸の動きに近いんです。
瀧口:だからおなかにつけるんですね。
土岐:おっしゃる通りです。実際ひろみちゃんに付けるとうつ伏せになったので、今まで手書きで書いていた矢印が自動でどんどん記録されていきます。例えばうつ伏せの状態や呼吸が苦しい状態が続くとアラートで教えてくれます。
瀧口:今4人分表示されていますが、何人分同時に見られるんですか?
土岐:一つのタブレットで10名まで同時に状態を見守ることができます。
瀧口:これは画期的ですね。
神先:今まで保育士さんが記録を付けていたんですよね。その作業が一切なくなると。
瀧口:想像を絶するほど大変な作業ですよね。
土岐:こちらは医療機器としての届出が完了しておりますので、乳幼児のお子さんも安心してお使いいただけます。特許も申請しておりまして、世界中でも保育園でこういうものを使うということがなかったので、ぜひ広めていきたいですね。
瀧口:なぜこの午睡をチェックするデバイスを開発しようと思ったんですか?
土岐:保育園でいろんな話を聞く中で、保育士さんに一番困っていて一番負担に感じることは何かと聞いたら「子供の突然死」でした。先生方に「今どうしているんですか?」と聞いたら5分ごとの手書きの資料をドサッと見せられて。これも大事な仕事なんですけど、本当はもっと保育士しかできない仕事があるんじゃないかと。
もともと先生方の精神的な負担を下げたいと思って、なんとか先生の目だけじゃなくて医療機器のダブルチェックで。しかも子供を見守ることは大事だけど手書きの部分が大事なのかというとそうじゃないよな、と思いまして。世界中でいろんなデバイスを探して、いろんなことを研究開発して、これを使えば先生の業務負荷や精神的な負荷も下げながら、同時に子供の見守りの質を上げることができると思って開発しました。
瀧口:午睡のチェックって作業としての大変さだけじゃなくて、こんなに多くの命を預かっているという保育士さんの精神的な負担というのも大変なものですよね。
土岐:保育士不足の中でいわゆる保育の免許を持っているのに現場で働かない方、潜在保育士と言われていますが、潜在保育士の方になぜ保育の現場で働かないのかと聞くと、賃金でも長時間労働でもなくて、子供の事故が怖いというのがトップの理由なんです。子供は大好きなんですけど、人様の子供の命を預かる時に何か起きたら誰がどう責任を取るのかということに対し、保育の現場でこういうものを使うことによって、保育士の方も現場に戻ってきやすいという効果もあると思います。ご家庭でも使っていただけるので、子供が生まれたばかりのご家庭でも使っていただけます。そういうことをやっていきたいと思っております。
瀧口:完全にデバイスに頼るということではなくて、助けを借りながら自分の目でも見るという、あくまでも補助の形でしょうか。
土岐:そうですね。あくまでダブルチェックをしていく、サポートをするという位置付けになります。人間ですと5分に1回しか見れないところ、これを使えば1秒間1回データを残すことができる。IoTという技術を使わないと基本的に実現は不可能だと思っていますので、そういった形で今までなかった形の見守りを行っていきたいと思っています。