「スタートアップ」が未来を創る――。話題のスタートアップや、イノベーティブな起業家をいち早く取り上げる「ビジネスにスグ効く」経済トークショー『日経STARTUP X』。PlusParaviでもテキストコンテンツとしてお届けする。
自分のやりたい仕事のテーマが実現できる。楽しく仕事に打ち込める。そんな条件が揃っているなら、最初に働く場がスタートアップであってもかまわない――。ACES代表取締役の田村浩一郎氏、GITAIのエンジニアの古田悠貴氏はこう口を揃える。主にテクノロジー系の学生の間で、こうした進路選択の意識が高まりつつあることを裏付ける証言だ。職場を「選ぶ側」の視点が変わる中で、「選ばれる側」の起業はどう変わるべきなのか。
瀧口:では引き続きGITAIの古田さん、ACESの田村CEOにお話を伺っていきます。よろしくお願いします。
古田・田村:よろしくお願いします。
瀧口:東大卒業してスタートアップに行く方がとても増えているということで、東大院卒IT人材の就職先についてご覧いただきたいと思いますが、スタートアップが今一番多くなっているんですね。
村山:すごいですね。時代は変わったという感じですね。
瀧口:ずっとご覧になっていて感慨深いものがありますか?
村山:昔はこういうことはなかったですよね。東大の人がスタートアップに行くのかと。世のおじさんおばさんも随分意識を変えないと、追いつけないような状況になっているんじゃないでしょうか。
瀧口:そしてまさに起業された田村さん、スタートアップに入られた古田さんということでお話伺っていきたいと思いますが、周りもスタートアップに行くことは普通なんですか? どんな空気感なんでしょうか。
古田:大企業に行くのと同じくらい普通の選択肢だと僕は思います。
田村:うちの研究室に限っては起業することと就職することはほぼ一緒ですし、一旦会社を作っておこうみたいな人たちは僕の周りには多くて。大学入った時からとりあえず会社だけカラで作っておいてビジネスしたり。そういう環境があったのであまり抵抗はなく、どっちにしようかな、くらいの雰囲気でしたね。
瀧口:一旦作ろうと言って作れるものなのですね。
村山:そういう意味ではある種のカジュアルさということなのかもしれないですね。ぜひお二人にお聞きしたいのですが、スタートアップや起業家の方、若いビジネスパーソンの方を取材して感じるのは、変な意味ではなく今勤めている会社や事業が全てではなくて、個人としてやりたいテーマがしっかりしている。例えばロボットがやりたい、人工知能がやりたい、小売りでこういうことをしたいなど。それを実現するフィールドがたまたま大企業であったり役所であったり、もちろんスタートアップであったりする。
誤解を恐れずに言うと3年でも1年でも、自分のキャリアを考えてプラスであれば在籍し、もっと良いフィールドがあればそちらに移っていく。テーマとしては一貫しているんだけど、それを実現する場としてはどんどん変わっている。自分のテーマを実現するためにはまずここをやってみよう、という積み重ねみたいな発想になっている人が多いんじゃないかと感じているんですけど、ご自身や周りの方々はどうですか?
田村:おっしゃる通り、「一つの会社でやらなくちゃ」という感覚はなくなってきていると思います。僕は少しその中でも尖っている方かもしれないけど、トレーダーなどは損したらクビになるので、少し就活のようなことをした時に隣の人がトレーダーの方に「負けたらどうなるんですか? クビになるの怖くないですか?」と質問しているのを聞いて、あ、そういう風に考えるんだ、と逆に思っちゃったんですよね。
トレーダーの方も同じことを考えていて、「損しても死ぬわけじゃない、生きているし次に何かやればいい」という感覚はあって。ちゃんと自分の中で蓄積されているスキルがあれば、次にきちんと価値を生み出していつでもお金に還元できるという自信はあるので、いつでもいいんじゃないかという感覚はあるかもしれないですね。
瀧口:どういうスキルを蓄積するか、今までは大企業の中でこういうテーマでスキルを磨いてね、と言われたりするじゃないですか。今後は自分が主体となってどういうスキルを積み重ねていこうかという、より個人がテーマ設定をしやすい環境になっているとも言えるんですかね。
田村:そうかもしれないですね。
瀧口:古田さんはどうご覧になりますか?
古田:言いたいことは全部言われてしまったので、僕はもう今日は笑顔で帰れるんじゃないかと思いますけど(笑)。基本的には同意見で、今までは入社した会社と運命共同体という感覚がまずあって、その後でそこで何かできることを見つけて、最終的に何か良いことができたらいいなというノリなんじゃないかと僕は思っているんですけど、基本的には周りを見渡してみてもやりたいことは明確にあって、それに対して今一番それを実現できる所はどこかとなった時に、それがたまたま大企業じゃなきゃいけないとか、スタートアップじゃなきゃいけないとか、その時の巡り合わせで偶然決まるものだと思うんです。
その巡り合わせに従っていったらたまたまスタートアップだったという選択が、今は平気でできるくらいの世の中になっているんじゃないかと思いますし、僕もそういう選択をしました。周りも躊躇はないんじゃないかと思います。