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田村:実はちょっとだけエセ就活みたいなことをしていまして。私は研究自体は「金融×ディープラーニング」ということでずっとやっていたんです。松尾研究室に入ったきっかけもそこなんですけど、もともとトレーダーをやっていて、ある日すごく大負けして外に出たら「おお」と思って。自分がポチポチやっていてもあんまり意味が無いなと。その時にディープラーニングというすごいアルゴリズムが来ていてアメリカで話題になっているらしいというのを察知して、じゃあこれを使えばいいじゃないかと思って研究室に入ったんです。

そういうこともあったので、大学1年生くらいまでは就職するならトレーダーかなと思っていて。外資系金融の会社でトレーダーのポジションのオファーもいただいてはいて、IT系のスタートアップの方からもオファーをいただいていたりはしたんですけど、自分で会社も始めているし、メンバーと話し合った結果としてディープラーニングというバットを持っていて、今振るのが一番いいんじゃないかと。じゃあ自分たちでやっていこうというのが意思決定になったと思いますね。

瀧口:なぜ今だと思ったんですか?

田村:いろいろあって、ディープラーニングという技術が大きなインパクトを生んでいて、まだまだポテンシャルを持っているということだったり、マクロ的に見ると低金利なので世の中にお金が余っている。こんなにやりやすいことはないよねと。あと一番大きかったのは漫画を6人でやろうとしていたんです。この6人で集まって5年後スタートアップをやろうと思っても無理だと思って。せっかく今メンバー集まっていてここで今やらないなんて、そんなもったいないことはないということで「じゃあ今一緒にやっていこう」ということになりました。

瀧口:松尾研究室の先輩にも相談したんですか?

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田村:いつも勉強させていただいたりアドバイスいただいたりすることは多いですけど、心理的なきっかけでいうと、PKSHA Technologyの上野山(勝也)さん。僕の研究のメンターだったんです。あまり表に出さない方なので、知らないうちにいつの間にか上場していた感じだったんです。そんなこともあるんだと。すごいことになっているじゃないかということを思って心理的な障壁が減って、自分にもそういう選択肢があるんだなというきっかけになりましたね。

瀧口:ロールモデルとなるような方が身近にいるというのは大事ですね。

村山:今博士課程で学生もやっているわけで大変ですよね。辞めようとは思わなかったんですか?

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田村:正直あまり大変とは思っていなくて。本当にアカデミアでやっている人と比較すると僕の研究の量なんて全然大したことないと思うので。ただ授業をやっていくにあたって、僕らのビジネスモデルがアカデミアとビジネスのギャップを利用したライセンスビジネスなので、アカデミアの最先端をキャッチアップして現場に届けられることは一つ大きな価値で。事業のために博士課程にいるといっても過言ではないです。

村山:では二足のわらじといっても重なり合うところはあるんですね。

田村:相乗効果はありますね。

瀧口:松尾先生もよく「産学連携を進めていくべき」とおっしゃっていましたが、まさにそれを実践されているということですね。研究テーマとしては金融とディープラーニングを引き続きされているんでしょうか。

田村:そうですね。半分趣味の世界なので(笑)。

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瀧口:「金融×ディープラーニング」というのは今の事業とまた違いますけど、そこは今後つながっていくんでしょうか。

田村:おっしゃる通り、技術の話でいうと違うのであまり関係なかったりするんですけど、さすがにディープラーニングの重要な論文は目を通したり、輪読会というお互い読み合ったりする会には参加しているので、そういう所でキャッチアップできたり議論できたりするのは価値ですし、研究は研究でやればやるだけ良いので、勝手に進めている感じですね。

瀧口:ディープラーニングは日進月歩で変わっていく世界なので、アカデミアにいると周りの空気もわかりますし、キャッチアップできるところは大きいですね。

田村:まだまだアカデミアとのギャップが日本では大きいので、そこがダイレクトに価値になって売上になっているという感じです。

瀧口:ありがとうございます。次回も引き続きお二人にお話を伺っていきたいと思います。

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