瀧口:最適化というのは効率化ということですか
田村:そうですね。主にやっていることは効率化です。
瀧口:村山さん、こういった事業はいかがでしょうか。
村山:いろんな業種があってほとんどの場合人が関わるじゃないですか。製造の現場であったり、販売の現場であったり、オフィスワークであったり。やっぱりそこには人が集っているわけで、そういう意味では相当応用範囲が広いビジネスということですよね。
瀧口:デジタルというのがただの画面上だけじゃなくて、リアルな世界をデジタル化するというのは本当に範囲が広いなと思って。宇宙並みに未開の地が広がっていますよね。
田村:ただもちろんビジネス的にどこからデジタル化するべきか、需要がある所からとか、マーケットがどういう構造をしていてどこから入るのがいいのか、というのを考えながら、行動研究とかアルゴリズムをパッケージにしたものをライセンス提供していくようなビジネスモデルをそれぞれ取って広げている状況です。
瀧口:今のところどのエリアがいいなと思っていますか?
田村:いくつかありますが、スポーツと製造業とサービス業が一番お引き合いをいただいていますね。
瀧口:スポーツも結構求められる需要があるんですか。
田村:はい。プロスポーツ選手って一人当たりの価値が非常に高いので、ケガするとその分の価値が棄損してしまうんです。そういったケガの防止ということをデジタル定量化された情報を基にやっていこうという需要が大きかったりします。
瀧口:面白いですね。松尾研究室で取材させていただいた時にACESという会社はもうできていたと思うんですけど、田村さんは事業が全く違う分野のことをされていた気がしましたが。
田村:創業の話になるんですが、元々は漫画の多言語翻訳というのをやっていて、世界の人に日本の漫画を読んでもらったらうれしいねと。話題になっていましたし、翻訳コストが高く自動翻訳も出来てきているので漫画の1ページをパッと出したら機械が吹き出しを検知して自動翻訳で広東語と中国語と英語に翻訳するというのをやっていたんです。ただいろいろ壁がありまして、「これうまく前に進まないね」と言って一緒にやっていたメンバーと話し合う中で、ちゃんと起業しようという形を取って、今の事業をやろうと決めて、やり始めた感じです。
瀧口:まさに松尾研究室だと起業したらどうか、という文化がすごくあると思うんですけど、その辺りはやっぱり起業したというのは影響があったんですか?
田村:そうですね。うちの研究室は大企業に就職する人は一人もいないので、海外に行く人もいるんですけど、博士課程に行って研究者を目指すか、スタートアップを作るか入るか、どちらかしかない感じですね。そういう意味では先輩方が自分で会社を作ってすごい成功しているのを間近で見ると、起業するということが自分とかけ離れた、違うことじゃないんだということが分かったのがハードルを下げた要因の一つだと思いますね。
村山:身近にいるというのは結構大事だと思いますよね。(アメリカの)シリコンバレーはそういう人だらけなのでそういうのが普通という感じですけど、昔の日本では起業する人ってちょっと変わった人というか、道を外れちゃった感じの扱いを受けてきたのが事実としてあって。圧倒的少数派ですから、普通に暮らしていると身近にいないですよね。優秀で立派な先輩たちは大企業や大きな役所に入ったりするでしょうから、なかなかそういう道があることに気付かなかったり、そもそも選択肢に入らない時代がすごく長かったと思うんですけど、ここ数年はすごく変わってきて、身近にそういうケースがあって成功している。じゃあ僕も私もというように相乗効果で広がっている。まさに広がり始めたのがここ数年の日本と言う感じですね。東大は震源地の一つというか、エリアとしては熱い地域になっている気がしますね。
瀧口:同じコミュニティにいると相談できますし、怖いことがあっても聞けるというのは大きいのかなと思いますね。さらに田村さんに伺っていきますが、大企業からもオファーはあったんでしょうか。