「スタートアップ」が未来を創る――。話題のスタートアップや、イノベーティブな起業家をいち早く取り上げる「ビジネスにスグ効く」経済トークショー『日経STARTUP X』。PlusParaviでもテキストコンテンツとしてお届けする。

ACES代表取締役の田村浩一郎氏はAI(人工知能)研究で有名な東大大学院・松尾豊研究室に在籍中に起業した。背景には「まずは起業するか、スタートアップに入社する」のが当たり前と言う同研究室の文化もあった。現在は動画像解析技術で人間の活動をデジタル定量化し、働き方などの最適化につなげるサービスを手掛けている。ここに至るまでの紆余曲折や、研究を続けながらスタートアップを経営することの意義などを語ってもらった。

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瀧口:さて、前回に引き続き宇宙作業ロボットを開発するGITAIの古田悠貴さん、そしてもうお一方、動画像解析AIを開発するACES(エーシーズ)の代表取締役、田村浩一郎さんにお越しいただいています。よろしくお願いします。

田村:よろしくお願いします。

瀧口:ACESはどういう会社か教えていただけますでしょうか。

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田村:我々株式会社ACESは「アルゴリズムで社会をもっとシンプルに」という理念を掲げている会社です。先ほどご紹介いただきましたけど、私も東大の博士課程でAIを研究する松尾研究室に所属しています。6人で創業しましたがその内の3人が松尾研究室所属で、かなりAIの研究に寄せています。

瀧口:実は以前この番組で松尾研究室にお伺いした時に田村さんにインタビューしていたんです。ちょうど研究室にいらっしゃって。

村山:では再会ということですか。

瀧口:そうなんです。田村さん覚えていますか?

田村:すみません、ちょっと記憶になくて(苦笑)。

村山:仕事が忙しいですからね。

田村:記憶力が悪くて有名なので(笑)。

瀧口:松尾(豊)教授が皆さんのプレゼンにアドバイスしていて、真剣な場にお邪魔させていただいたので集中していらっしゃったんだろうなと思いますね。そんな"松尾研"からということで。

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田村:最近AIのベンチャーも増えてきて、いろいろなことをやっている会社さんが多いんですけど、我々は何しているかというと、ヒューマンセンシングという技術でリアル産業の人の活動をデジタル化、最適化を目指している会社です。ヒューマンセンシングって何かというと、人の行動や表情、感情などをディープラーニング、機械の目と言われているんですけど、機械の高い認識力、機械の目を使ってデジタル化する。人をデジタル定量化するという文脈では、WEBとリアルを橋渡しする技術と考えています。IoTというのは「Internet of Things(モノのインターネット)」ですけど、我々は「Internet of Human(ヒトのインターネット)」という感じです。

瀧口:人をデジタル化するというのはどういうことでしょうか?

田村:例えばスポーツの分野では、今までは感覚的に"走れ"と言われていたんですけど、どういう角度でどういう速度でやっているのか、全部定量化されます。行動や感情で言うと、例えば話をしていて「どういうことだ?」という表情をディープラーニングが捉えて「こいつ何言っているか分かってないぞ」と判断して、それをデータ化していくのが人のデジタル化ということですね。

瀧口:本当にいろんな分野で使えるということですね。今、画像ではスポーツや生産の現場、工場の中などが出ていましたが。

田村:小売りやサービス業などからも引き合いをいただいております。

瀧口:広範囲にわたりますね。

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田村:そうですね。今までも結構WEBの世界というのはかなり最適化が進んできていて、それこそGoogleやFacebookがアルゴリズムを用いて最適化してきたんですけど、まだまだリアルの産業って大きくて、かつすごい非効率があるよねと。そういった非効率な部分、日本が人口減少してきている中でそんなことやっている場合じゃないだろう、というところをデジタル定量化することで最適な働き方だったり産業構造を作っていきたいと考えています。

実際に製造業でどういう使われ方をしているかというと、誰が、どこで、何を、どの程度の時間をかけて、どれくらいやっているのか、ということを個人単位でデジタル定量化します。もちろんこの人がどれくらいできているんですかというのも重要なんですが、それを行うと人のライン作業だと全体がデジタル定量化されるので、ここに人が足りていないかとか、ここに人を採用しないといけないとか、この人2日目でパフォーマンスしていないから熟練の人を隣に置かなくてはいけないとか。そういった全体の最適化ということが定量化することで初めて見えてくることがあるんです。我々はそういうところを、リアルな産業、リアルな働き方をデジタル定量化することでどんどん良くしていきましょうという会社です。